課題「bitter&sweet」

 

 校庭の隅のバスケットゴールの下で、空が真っ赤に染まるまで、二人で一緒によく話したね。小学生の頃は、私の方が背が高かったから、いつも目的だったバスケットボール遊びにはすぐ決着が付いて(私が勝って)、君はふてくされて文句を言い出すのがお決まりのパターンだった。私はニコニコしながらそれを聞いて、うんうんと頷く。君は「馬鹿にするな」とまた怒る。よく飽きなかったよね。コントの練習かってぐらいそれを繰り返す日々は、今思えば、私にとってキラキラした宝物の一つだった。


 時が移ろうと、人と人のつながり方が変わることもある。中学生になった私たちは、少しずつ互いに惹かれ始めて、お互いの大切さに気付き始めて、まるで何かの漫画やドラマのように、恋に落ちた。覚えてるかなぁ。「ずっと一緒に居るって約束しよ」。君はそう言ったんだ。学校帰りの神社の境内の裏で、二人で夕焼けを眺めながらアイスを食べている時に、ぼそっと。「うん」。なんて返していいか分からず、私はとりあえず相槌をうった。セミがジージー鳴く中で、沈黙が続いて、「じゃ、じゃあよろしく」と言って、君は急に走り去った。よくわかんないスタートだったけど、そこから、なんと5年半も私たちは付き合ったんだね。ねぇ、信じられる?あ、そうそう。この頃、君の背は少しだけ私に近づいた。


 時が移ろうと、人と人のつながり方が変わることもある。終わりの始まりは、些細な喧嘩だった。高校3年生の夏。花火大会で友達に見られた時にどっちが先に手を離したかでもめて、一週間口をきかなくなった。その間に学校に提出した進路希望調査は、私が地元の専門学校で、君が東京の大学。その後、もちろん仲直りはしたけれど、そこから何となくギクシャクし始めた記憶がある。君の背は私を超えた。


 卒業と同時にお別れをしたね。「ずっと一緒に居るって約束、守れなくてごめん」と君は言った。やっぱり私はなんて返していいか分からず「うん」とだけ言った。君の旅立ちの日に、同級生何人かと電車を見送りに駅に行って、最後に手紙の交換をした。私宛の手紙には、お世辞にも綺麗とはいえない君の字で、「お別れは寂しいし辛いけどさ、出会わなかったよりは、君に逢えなかったよりは、ずっとずっと良かったよ」って、その一文だけ書いてあった。何度も繰り返し読んでは、泣いた。


 今じゃ私も一児の母。掃除中にさ、出てきた卒業アルバムが懐かしすぎて、色々思い出しちゃったよ。写真の君は、笑ってる。大好きだったなぁ、あの悪戯に笑う感じが。大好きだったんだよ、あんまり言えなかったけどさ。今も胸のどこか奥の方に大事に仕舞ってある、大切な思い出。


 Bitter。思い出すと切ない、少しだけ苦い過去のこと。




 時が移ろうと、人と人のつながり方が変わることもある。「おーい、何掃除さぼって卒アルなんか読んでるんだよ。はい、雑巾掛け対決は俺の勝ち」という旦那の声で現実に戻る。


「いやー、でも懐かしいよ。嫌だなぁ、思い出を大切にしない男は。しかも、私が休憩しているのを知ってて終わらしてから声を掛けるなんて、ずるい。今の勝負は無効だ」と私は文句を言う。君は「ま、それでもいいけど。それよりそれ俺にも見せて。この頃は俺の方が背が小さかったもんなー懐かしいなぁ。久しぶりにやる?コント、バスケットボール」と君は笑う。「その余裕がムカつく」と私は軽く足を蹴った。「でも、約束、結局守れたな」と君が私を見て言った。外では、セミが鳴いている。きっと、こんな日々も、いつか大切な宝物になるんだろう。

 

 Sweet。そして、少しだけ甘い今のこと。







【教育・道徳的観点から】


人には歴史があって、

その一人ひとりの歴史には、

ドラマティックな展開や、

小説みたいなストーリーがきっとある。


甘みも苦味も、そんなストーリーを紡ぐ大切なスパイス。

だから、大切にしなくちゃ。

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勉強犬

「第二の家」学習アドバイザー。
世界中に「第二の家」=「子どもたちの生きる力を育てる場所」を作ろうと画策中。過去に3000人以上の生徒の個別指導経験を持つ。元広告営業犬。学生時代は個別指導塾の講師。大手個別指導塾の教室長(神奈川No,1の教室に!)・エリアマネージャーを経て、2015年ネット上で「第二の家」HOME個別指導塾を開設。

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