これは偏差値が40にも満たない僕が、
塾に入って偏差値70以上の志望校に合格するまでの物語。
「彼が君の相棒のロイドくんです」
入塾の時、塾の先生がそう言って、一人?のロボットを僕に紹介した。
そうそう、これが最初の出会いだったね。あの時の君の間抜け面は忘れられない。
人工知能が搭載されたそのロボットーロイドくんーは、
この塾での僕の相棒。というか、生徒。
毎授業の終わりに、僕はその日塾で教わったことをロイドくんに説明する。
なるべく丁寧に、わかりやすく、じっくりと。それこそ個別指導だ。
そして、その知識を基に、毎回の実力テストをロイドくんが受験する。
そのテストの得点で塾内の他の者と争うのだ。
しんぶんを親分と書いたり、
Doesをドエスと読んだり、
ロボットのくせにちょいちょい珍回答をするロイドくんに苦戦する時もあったけれど、
教えるのは楽しかった。ロイドくんとなんでもない話をするのも好きだった。
テストが奮わなかった時、
「ごめんなさい」と謝るロイドくんのために、
次はもっといい教え方をせねば!と気合も入った。
「人に教える時が一番伸びるんですよ、勉強ってね」
先生はいつも笑ってそう言う。
確かに、人に教えるのってより深い理解が必要だ。
僕がロイドくんに何かを教える度に、知識が自分の血肉になっていることを実感する。
そうやっていつの間にか自分の実力が伸びていくのか、と納得している。
あるテストでー不定詞と動名詞だったかなー順位が塾内の10本指に入った時、
ロイドくんが言ったんだ。「勉強って楽しいですね」。
親の喜び、ってわけじゃないけど、嬉しかった。更にやる気が出た。
指導法や勉強術なんて本もたくさん読んだ。いつの間にか、
僕の偏差値は20も上がっていた。親も学校の先生も超驚いていた。
「人の為に、って時が一番パワーを発揮するんです」
ある時、いつも笑顔の塾の先生は、僕をすごく褒めた後にそう言った。
「だから、人と人の間に生きるもの、【人間】って言うんですよ。あなた達のこと」
ロボットのくせに少し寂しそうな顔をして先生は続けた。
「私にはそれがすごく羨ましいです」そういうものかなぁ。
でも、ロイドくんと先生のために、また明日も頑張ろうと思えたのは確かだ。
ねぇ、ロイドくん。
まるで生まれたてのような君にはさ、
時々困らされるときだってあるけれど、でもね、
とっても楽しそうに知識を吸収していく君に、いろんなことを教えてあげたい。
この素敵な世界のことを、もっともっと伝えてあげたい。
だから僕だって負けないぐらい学ぶからね。
いろんなことを見て知って、いろんな話を君としよう。
そうやって僕らが知識を積み上げていったからこそ、
こうして、
僕は君に出会えたんだから。
「さぁ、今日も授業を始めますよー」
教室長の篠崎さん(これは人間)が声を張りあげた。
本日も、HOME個別指導塾の授業が始まる。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
ロイドくんは居ないけどさ、今だって同じようなことはきっとできるよね。
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