本の背表紙にはこんな文章が。
AI(人工知能)の開発が進み、家事や仕事に就くアンドロイドが日々モデルチェンジする近未来のイギリス南部の村。弁護士として活躍する妻エイミーとは対照的に、親から譲り受けた家で漫然と過ごす三四歳のベン。そんな夫に妻は苛立ち夫婦は崩壊寸前。ある朝、ベンは自宅の庭で壊れかけた旧型ロボットのタングを発見。他のアンドロイドにはない「何か」をタングに感じたベンは、作り主を探そうと、アメリカへ。中年ダメ男とぽんこつ男の子ロボットの珍道中が始まった...。タングの愛らしさに世界中が虜になった、抱きしめたいほどかわいくて切ない物語。
主人公が三十四歳!モラトリアムだ!と思いながら、
ゆっくり読み進めていく内に、どんどんと物語の中に引き込まれて、
本当に最後には「読み終えたくない」気持ちでいっぱいになりました。
いわゆるジャケ買いをした本作ですが、
中身もとっても愛らしい、素敵な本に巡り会えたこと、
平積みしてくれた本屋さんに感謝ですね。
さぁ、では早速感想に参りましょう。
大人の感想文、ネタバレ多少ありですが、
一応、感想読後に本書を手にとって欲しい気持ちを込めて、書きますね。
それはつながりの物語。
人は、人によって変えられる。
いや、今回主人公を変えるのは厳密には「人」ではないのだけれど、その彼が、
立派で、確かで、素敵な「一人」であることに文句を言う者は居ないだろう。
その名はタング。読み進める内に、僕らにとってその名が、
とっても愛おしい名前になることを約束しよう。
物語の半分以上、
主人公とタングは旅をしている。
ダメダメだった二人が、抱えた謎を解くために、
苦難に遭い、奮闘し、傷つき、立ち上がって強くなっていく様は、
二人の成長譚としてワクワクしながら、また納得しながら読み進めることができて、
「旅」って教育にもとってもいいんじゃないかと思えるほどだった。
目的地がある(それを探すところからだけど)。
そこに辿り着くために考え、準備して、行動する。
いいことも悪いこともあるけれど、向かい続ければやがて辿り着く。
道中で成功体験や達成感を得た者は、更なる旅路への次の一歩も踏み出しやすくなる。
それはもちろん、人生のほとんどのことと同じだ。
恋や、家族愛や、ミステリーや、事件的なものも、
二人の旅路やその後の物語を彩る。
でもその中のどこにでも、いつでも、中心には二人のだんだんと強まっていく絆があって、
彼らのつながりは、他の何にも代えがたいものだと、彼ら以外の者も、そしてもちろん僕らも、
気付いていく。その気付きが、また新しいつながりを生んで、新しい幸福が生まれていく。
僕らは二人の奇想天外な旅路を、
時に自身の身に重ねながら、時に他人事として気楽に、
笑いながら感動しながら落胆しながらそして時には泣きながら、
もしかしたらちょっとずつ感化されて、
物語の人物たちと同様、成長していくのかもしれない。強くなっていくのかもしれない。
そして、それも一つの「つながり」だと僕は思う。
タングが主人公同様、僕らにも魔法をかけてくれたのだ。
そう、これは「つながり」の物語。
ささやかな、だけど幸福な、それは僅かな時間であったかもしれないけれど、
タング達とつながれたこと、タングたちとの時間に巡り会えたことを、とっても幸せに思います。
そうそう、
旅の道中、二人は日本へもやってくる。
この国に対して好意的な表現が多かったことも、
僕らがこの本を愛する理由の一つだと思う。
でも、それがなかったとしても、この本に出会ったらきっと、
誰もが「まだ読み終わりたくない!」を体感するんじゃないかな。
さぁ、君も「つながり」にいこう。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
途中何度も「うるうる」場面あり、涙注意報出しておきますね。
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