【vol,001 三単現のsの謎】危なくない刑事の事件簿



生徒の中には元ネタがわかる方がいらっしゃるでしょうか。

写真から「あぶない刑事」感が感じ取ってもらえるとありがたいのですが。

まぁ、感じ取れなくても構いません!

日頃勉強していて「?」となるようなことを解決していく物語風シリーズですので、

謎解きとともに「理解」して「長期記憶」にして、今後の勉強に活かしていただければ幸いです。

以下、二転三転のなんとも珍妙な物語ですがどうぞお付き合いください!






vol,001 三単現のsの謎



「先輩!これで容疑者が全員揃いました!」

後輩の田中が勢いよく事件現場である被害者の部屋へ入ってくる。

「わかった。皆をここへ呼んでくれ。この事件の真相を明らかにする」

先輩と呼ばれた男、この道10年以上のベテラン刑事である勉強犬男は、

そう言いながらも、まだ悩んでいた。



被害者が残したダイイング・メッセージは【s】。

その一文字が毒を飲まされた被害者の脇に書かれていた。

その【s】が指し示す意味とは?



田中に連れられて、容疑者の三人が部屋へと入ってくる。

■コンビニ店員 山本一人

■インド・ヨーロッパ諸語言語学者 風間郁夫

■土木作業員 大泉今弥

状況やアリバイ、被害者との関係性を元に集められた三人だ。

犯人はこの中にいると勉強犬男は読んでいた。



「お集まりいただきありがとうございます。さて、早速ですが…」

そう言いながら勉強犬男はおもむろに1枚の写真を取り出す。

「これが被害者が遺したダイイング・メッセージです」

皆の視線がそこへ集まる。そこには例の「s」の文字が描かれている。

「私はこれが犯人への重要な手がかりだと考えています」



全員がごくり、と息を呑んだ。勉強犬男は続ける。

「このsは何なのか。皆さんも薄々気付いているのではないですか?そうです。これは、英語教師である被害者の伊貝さんが遺した、犯人を指し示すヒント。私はこの謎を解き明かしました」

しばしの沈黙。勉強犬男は顔色を伺うように各々を見回す。

沈黙を破った「ちーす」という声とともに、外から田中がホワイトボードを持ってきた。



そこに書き込みながら、勉強犬男が話を続ける。

「私はこれが【三単現のs】ではないかという仮設を立てました」

そう言いながら勉強犬男は、ホワイトボードに、

「s」、そしてその横に「三」「単」「現」と書き込んだ。



「【三単現のs】とは、主語が【三人称】・【単数】で、かつ【現在】の文の時に動詞につく【s】のことです」

勉強犬男は「ご存知ですよね?」という感じでまた全員を見回した。

【三単現のs】は、多くの場合中学一年生で習う、英語界きっての凡ミスを生む文法である。

条件が満たされるとき、like⇒likes make⇒makes play⇒playsなど動詞の形が変わるのが厄介だ。



「この【三単現】とは【三人称】・【単数】・【現在】の頭文字のことです」

核心に触れますよ、という感じで勉強犬男は声のトーンを抑えた。

「条件を一つずつ見ていきましょう。田中くん、例のものを」



「まずは【三人称】っすね。少しわかりづらいので図を用意したっす」

田中がみんなの前にもう一枚のホワイトボードを出す。



「田中くんありがとう。これが【三人称】を表した図です。まぁ、端的に申し上げれば私(一人称)、あなた(二人称)以外は【三人称】になりますね。そう、今回の事件の被害者の名前は伊貝さん。これが一人称・二人称以外(伊貝)ということで伊貝さん自身を表しています」

一瞬皆の頭の上に「?」が浮かんだが、次の言葉で、部屋内の空気が凍りついた。

「つまり、次からが犯人を表すヒントになっています」



三人の容疑者達が目線を合わせる。俺達の中に犯人が?とても信じられないというような顔で。

「ふざけるな!俺達はな、小学校の同級生で、ずーっと仲が良かった。親友同士だ。伊貝の子どもだって知ってる。この中に犯人がいるなんて嘘に決まってる!」

大泉今弥が声を荒げる。田中は「あ、この人嘘は言ってないな」と感じた。

勉強犬男は構わずに続ける。



「では、二つ目の条件に参りましょう。二つ目の条件は【単】ですね。これは【単数】を表している。田中くん、図を」

「はいっす!」と返事をし、田中は図に赤でバツを書き込んだ。

「theyやtheseは複数。ですから【単数】ではない。そう、三単現の【単】は一つや一人を表す。つまりね、あなたのことを指しているんですよ。一人さん」



名指しされた山本一人は狼狽を隠せないが、間髪入れずに勉強犬男は言葉を並べていく。

「まだ終わりではありません。最後の条件の【現】。これは時制の話で現在形、つまり「今」を表しています。そうです、大泉今弥さん、あなたのことです」

「な、何言ってやがる!」と大泉今弥は怒鳴るが、もちろんまだ終わらない。



「そして、この【三単現のs】のルーツは、英語の元となったインド・ヨーロッパ諸語(ラテン語やゲルマン語etc)にあります。元々こういった言語には主語がないものもあり、動詞の形(活用形)で誰の話かを判別していたといいます。その名残が、英語にも【三単現のs】という形で残っているのですね。現代のヨーロッパの言語にも、人称で動詞の形が変わるものが多いです。ね、風間郁夫さん。このことは、そういった古語を調べている言語学者のあなたを指しているのではないですか?」

ぎくり、という感じで風間郁夫が肩をすぼめた。

「つまり、この事件はあなた方三人による共謀ということです」

「おおー」と田中がわざとらしく驚いた。



「もしかして、今回のダイイングメッセージって三単現のsじゃなくて複数のsじゃないっすかね」

謎解きが終わった現場からの帰り際に田中がつぶやいたのを勉強犬男は聞き逃さなかった。

「田中くん、心外だな。私が間違えることはありえない。あのダイイングメッセージは三単現のsだ」

多分、と勉強犬男は心の中で付け加えた。

そこで鳴った田中の電話。ふむふむと何度か頷いた後、田中は電話を切り言った。

「あ、犬男さん。被害者の伊貝さん、意識を取り戻したらしいっす。ダイイングメッセージじゃなくなりましたね」

「うるさい」



事件を解決した後の勉強犬男は、

当初の予定通り、地元の個別指導塾に向かった。

子どもと教えることが大好きな勉強犬男は、週に三回、

知り合いがやっている塾で働かせてもらっているのだ。

本人の希望もあって、上も特別に刑事と塾講師のWワークを認めている。

子どもの笑顔は格別だ。それに、彼らの成長はとっても嬉しい。

今日の授業もしっかりとできた、と満足しながらの塾からの帰り道、

ふと勉強犬男の脳内に一つの仮説が浮かんだ。

まさか、もしそうだとしたら。いや、それならば動機にも説明がつく。



「あなたが本当の犯人だったんですね、伊貝さん」

病室には伊貝と勉強犬男の姿があった。伊貝はうつむいている。

「少し調べさせていただきました。伊貝さん、あなたにはとっても可愛い子どもが居る。しかし、どうやら重い病気らしい。治すにはとてつもない額のお金がいる。親友である三人にそのことを相談したとき、あなた達は今回の計画を思いついた。誰かに毒を飲まされたと見せかける今回の事件をね。目的はあなたにかけられた保険金ですね」

伊貝は以前うつむいたままだ。

「三単現のsは主語が複数では使えない。犯人は本当は複数ではなく、一人。そう、今回の【s】にはそういった意味も込められていたんですね。もしも計画が失敗したとき、これが自作自演だと証明するための隠れメッセージ。お見事です」

褒めてみたが伊貝の姿勢は変わらず。

「計画が成功すれば、ダイイングメッセージは犯人が他にいる証拠になる。自作自演では保険金は出ませんからね。それでも、やっぱり親友たちを犯人にするのは忍びないという気持ちが何処かにあった。だから、あなたは生き残ったのです」

伊貝はやっと声を出した。

「生き残ってしまった…」

「違います。生き残ったのです。あなたは死ぬべきではない。もちろん、子どもも」

そこでようやく伊貝は顔を上げた。

「私の元生徒に医師がいます。それも、とびきり腕のいい。あなたの子どもが抱えている病気の手術の経験も豊富です。来週スケジュールを空けてくれるそうですから早速手配しましょう」

「え?でも、お金が…」

「伊貝さん、あなた、とっても優秀な英語の先生なんですってね?」



三ヶ月後。

伊貝の息子の手術は無事に成功し、

今では自由に野原を走り回れるまでに回復した。

伊貝は、勉強犬男と同じ個別指導塾で働き出した。



「私の働いている塾は、ネットを使って世界中の生徒たちに個別指導をするシステムです。それもなるべく良心的な価格でね。教育を受けたいというニーズは世界中に溢れている。そのニーズに応えるためには優秀な教育者の人手が必要なのです。そう、あなたのようなね」



事件がある限り、そして勉強に謎がある限り、

勉強犬男の物語は続いていく。

これは誰も死なないミステリー、危なくない刑事の事件簿。

次回も乞うご期待!







この企画を生徒に話した時に、

「ミステリーって怖いイメージ」とその子が話していたので、

ミステリーにありがちな怖いイメージの漢字などは極力省いたつもりですが、

いかがでしたでしょうか。



本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。

え?写真は物語とは関係ありません。あくまでイメージです。

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塾という場所が好きです。生徒の成長する姿を見るのが好きです。生徒や保護者と未来の話をするのが好きです。合格や目標を達成して一緒に喜ぶのが好きです。講師と語り合うのが好きです。教材とにらめっこするのも好きです。新しい人と出会うのも好きです。藤沢の街が好きです。ブログも、好きです。

勉強犬

「第二の家」学習アドバイザー。
世界中に「第二の家」=「子どもたちの生きる力を育てる場所」を作ろうと画策中。過去に3000人以上の生徒の個別指導経験を持つ。元広告営業犬。学生時代は個別指導塾の講師。大手個別指導塾の教室長(神奈川No,1の教室に!)・エリアマネージャーを経て、2015年ネット上で「第二の家」HOME個別指導塾を開設。

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