時は20☓☓年、地球上にはびこる邪悪な勉強モンスター達を一掃するために、
世界政府は、TEST(大切な エネルギーの 最適な 使い方 機関:通称テスト)を発足。
子どもたちのよりよい人生のために、TESTによる教育のレベルアップ、学力向上を目指した。
これは、そんな勉強部隊「テスト」たちの激動の日々の記録の物語である。
mission001 睡眠時間を確保せよ
ピコン、と音を立てた連絡装置。
計画「ボス、本部から緊急要請サインが出ています。至急、現場に向かってくれとのことです」
チャレンジ「え?また…?今帰ってきたところなのに、人使い荒すぎるんじゃないかな、本部」
早寝早起「まぁ、そう言うな。困っている人を一秒でも速く救うのが我々の使命だ。呼ばれたら行かないわけには行かんな。みんな、我々の仕事は確かに大変だが、その向こうには必ず子どもたちの笑顔がある。よろしく頼むぞ」
チャレンジ「ま、一番働いてるボスに言われたらやらざるを得ないっしょ。わかりましたよ。計画さん、今回のクライアントは?」
計画「本部からの情報によると、神奈川県藤沢地域からのSOS信号です。えーと、発信源特定できました。村岡地区の一軒家ですね。今回の依頼者はお母様です。息子の生活習慣がありえないレベルで崩れているということです」
チャレンジ「なんか最近そういうのばっかだな」
国語力「世が夏の陽気に包まれて、夕闇迫るもなかなか暗くならないから、ですかねぇ」
早寝早起「わかっていると思うがあえて小言を言うぞ。経験はたしかに大事だが、決めつけはいかん。徹底したリサーチの向こうに、最高の解決策がある。個別に正しい勉強力の使い方を見つけ伝えるのが我らの仕事だ。憶測でものは言わないようにな」
チャレンジ「はーい」 国語力「承知」
早寝早起「良い返事だ」
計画「現場へのルートと装備、出しておきましたー」
早寝早起「さぁ、今回も最高の仕事をしよう。チャレンジと国語力の二人は私と現場へ。計画はここで後方支援を頼む。それでは各々、ぬかりなく」
計画・国語力・チャレンジ「イエッサー」
今日も彼らの調査が始まる。
TESTの仕事は単純明快だ。上手に勉強力を使えていない子どもたちに正しい使い方を指導する。依頼があればどんな僻地へも赴き、実態を調査し、適切な解決策の提案をする。いわば勉強のお悩み救急隊である。TESTの構成員はすべて勉強の精たち。そして、物語として大事なことは、彼らは目には見えないということだ。察してほしい。ちなみに、移動は飛んでいる設定である。
チャレンジ「依頼者の家が見えてきました。ちょうど2階、右上の部屋がお子様の誠くんの部屋ですかね。窓が開いているので、そこから潜入します」
国語力「相変わらず猪突猛進ですが、こういう時は助かりますね」
早寝早起「侵入は慎重にな。新しい現場には注意が必要だ」
チャレンジ「わかってますって。ん?早速大本命のお出ましだ」
チャレンジは、子供部屋でパソコンを見つけた。
チャレンジ「これでめっちゃマイクラとかやってるんだろうなぁ。他にも勉強の邪魔になり得る危険な痕跡がありそうです!詳しく調査すれば…」
ビービービーと急に鳴り出す警報装置。
計画「気を付けて!近くに巨大なモンスター反応あり!」
チャレンジ「おおおお、ボス!今気づいたけど、この部屋、勉強モンスターめっちゃ多いです!どうやら巣窟にお邪魔しちゃったみたい」
早寝早起「とりあえず避難だ!逃げ切れるか?」 チャレンジ「余裕っすよ。ん?」
部屋の片隅で震える勉強の精に気付いたチャレンジ。
チャレンジ「あそこに誰かいる!」 早寝早起「おい、チャレンジ!勝手な行動は許さんぞ!」 チャレンジ「大丈夫です、ボス。俺を信じてください」
チャレンジは避難命令を無視して、モンスター達をかいくぐり、部屋の隅の勉強の精に手を差し伸べる。
スマホ「あ、ありがとう」 チャレンジ「礼はあとでいいぜ。二人共喰われるかもしれないからな」
緊急転回してモンスターを避ける二人。
早寝早起「状況は?」
チャレンジ「もう少しで窓から出られそうです!ただ、奴ら数が多くて…」
【モンスター】子供部屋の誘惑「このまま逃がすと思うなよ…この部屋は我らにとって最高に居心地のいい場所、ユートピアである。漫画もある。テレビもある。ベッドもクッションもパソコンもある。最近調子に乗ってる貴様らなんかにこの場所が侵されてたまる…」
国語力「うるさい」
国語力の繰り出した「辛辣な言葉のシャワー」でモンスターがひるんだ隙を見て、二人はなんとか逃げ出すことに成功した。
チャレンジ「サンクス、国語力さん!」 スマホ「あ、ありがとうございます」
早寝早起「まったく。命令違反はほどほどにな。だが、仲間を助けたということは悪いことではない」
早寝早起は一つ息を吐き、助け出した勉強の精の方を向いた。
早寝早起「こんにちは、部隊長の早寝早起と申します」
スマホ「こ、こんにちは。勉強の精のスマホと申します。あ、あなたが伝説の勉強の精、早寝早起隊長…よく武勇伝を検索しています」
チャレンジ「スマホの精なんか居るんだな。ついに勉強の精界にもデジタルネイティブ世代の登場か」
早寝早起「私を知っているなら話は早い。自己紹介は飛ばしますね。お疲れのところ申し訳ないが、もし良かったらあの家の現状を教えていただけますか?」
スマホ「も、もちろんです」
三人はスマホから家の現状を聞き出した。親と子では、ほとんどコミュニケーションがないこと。親は口を開けば注意ばかりしていること。子は、夜はゲームをしていたりスマホで動画を見ていたりしてなかなか寝ないこと。朝は起きれず遅刻ばかりだということ。
チャレンジ「想像通りの環境だったなー」
スマホ「わ、私も、かつて話題になった【スマホについての18の約束】のお手紙を、机にさり気なく置いたりと尽力してみたのですが、力及ばず…」
国語力「ルールも大事だけれど、なんだかそれ以前に課題がありそうなご家庭ですよね」
早寝早起「そうだな。ただ、ここまで情報があれば手はある」
チャレンジ「早速、次の手といきますか。子どもの方は俺にお任せください」
早寝早起「わかった。では、スマホと一緒に動いてくれ。私と国語力で親の方をあたろう。では、双方、ぬかりなく」
チャレンジ「ラジャ」 国語力「かしこまりました」 スマホ「は、はい!」
〜3週間後〜
誠くんの友人A「なんかさー、まこっちゃん最近元気じゃん。イキイキしてるというか」
誠くんの友人B「だよなー。ちょっと前まで学校じゃずっと死にそうな顔してたのに」
誠くん「え?そうかなぁ?ま、でもこれが普通だろ。授業で寝ちゃ駄目だな、さすがに。勉強がやばくなる」
友人A「今更か」 友人B「え?一体どうしたの?別人みたいじゃん」
誠くん「いや、特に変わってないって。まぁ、強いて言えば睡眠不足がなくなったことかな」
友人A「何したの?」
誠くん「夜にスマホやめた。なんか一ヶ月ぐらい前、めっちゃ広告とか張り紙とかで【夜にスマホを見るな。ブルーライトで睡眠の質が下がる】的なの見たんだよね。で、ちょうどそのタイミングで親がしっかり話そうとか言ってきてさ。話して、ルール決めたの。夜はリビングにスマホ。その代わり読書用の本は買ってくれるってさ」
友人A「おばさん、めっちゃやさしくなってるじゃん」
誠くん「なんかね、変わった。うざいけど、悪くない」
その様子をふわふわ浮きながら見ている4人。
チャレンジ「こりゃあいつも通り少しずつ変わってくかな。とにかく繰り返し戦法、効くんだよな。やったな、スマホ」
ハイタッチをするチャレンジとスマホ。
チャレンジ「スマホやパソコンやチラシ使って【ブルーライトやばい】と【世界一大変なお仕事はお母さん】をめっちゃ見させたかいがあったぜ」
スマホ「心の中ではきっと本人もこのままじゃやばいって思ってたんですよね。良かったです」
スマホはやさしいほほ笑みを浮かべた後、気付いたように口を開いた。
スマホ「そ、それにしても、お母様には一体どんな魔法を使ったんですか?もう全然話なんて聞かずに頭ごなしに注意するみたいな感じだったのに」
国語力「あー、こっちも繰り返しですよ。自分で気付かないとさ、人って変わらないからね。何度も何度も何度も何度も伝え続ける。結局こちらができるのはさ、きっかけをあげることだけってことですよね、ボス」
ボス「そうだなぁ。でも、それで変わる何かがあるなら、私達の仕事に価値はあるってことだな。伝え続けよう。何度も何度も何度も」
チャレンジ「繰り返しって大事っすよね。ちなみに、一体何を何度も見させたんですか?」
国語力「必殺【耳の痛い話】の繰り返し。簡単に言うと、やってほしくない行動のときばかりかまう(注意する)と、本人は無意識に悪いことするとかまってもらえた!と思って、そんな行動を繰り返すようになるよってこととか、存在承認が大事だよってこととか」
国語力「こんな感じのを、あの手この手で毎日一回は見させたかな。けっこう神様と運命とか信じるタイプの人で、3〜4回見たら「これは神の思し召しかも」なんて言ってたよ」
早寝早起「でも、それで変わったというのは、紛れもなくあのお母様の頑張り。素晴らしいことだ」
国語力「ですね。さ、もうしばらくは大丈夫そうだし、帰りますか」
スマホ「あ、あの、みなさん、今回は本当にありがとうございました」
チャレンジ「ん?何を急に改まって?」
スマホ「も、もうこれでお別れかと思ってちゃんと御礼を伝えておこうかと…」
チャレンジ「お別れ?何を言ってんの?」 スマホ「え?」
早寝早起「スマホくんはどこか行くところはあるのかい?もしも良かったら、一緒に働かないか」
スマホ「え?」
国語力「割といい職場ですよ。それなりにやりがいも感じられるし」
計画「自分の強みも活かせるし」
チャレンジ「ボスは怖ぇけど、いい人だし」
早寝早起「もちろん、君が良かったら、になるんだが」
スマホ「え、あ、そ、その…」
チャレンジ「さっさと答えちまえよ。俺ら、もう仲間だろ」
スマホ「…は、はい!こ、こちらこそよろしくお願いします!」
スマホが仲間に加わった。
早寝早起「さ、帰って寝ようではないか」
〜3週間前ぐらいのとある日〜
誠くんのお母さん「ねぇ、誠。ちょっといい?」
誠くん「よくない。うざい」
お母さん「お願い。ちゃんと話したいの。ほんのちょっとでいいから」
(世界一大変なお仕事は母親を見た後の)誠くん「…まぁ、ちょっとだけなら…」
お母さん「ありがとう。ここ、座って」
誠くん「なんだよ話って」
お母さん「あのね、今まで、ごめんなさい」
沈黙。
お母さん「私ね、誠のことが心配でね。ついついうるさく言っちゃったりして、本当ごめん。それを謝りたくて」
誠くん「…別に」
お母さん「これからはさ、いいお母さんになるね。ちゃんと味方って、思ってもらえるようにさ」
誠くん「別に」
お母さん「誠が生まれてきてくれたときにね、私、人生で一番泣いたんだ。これでもかってぐらい号泣したの。お父さんに笑われながらね、神様にありがとうって何度も何度も感謝したんだ。あなたに会えて、それぐらい嬉しかった。それぐらい幸せだったの。世界で一番に大切なものができたって、大事にしようって決めた。でも、大切にする方法をちょっと間違えてたみたい」
誠くん「…別に」
お母さん「ただただあなたが元気で、そこに居てくれるだけでいいって、それだけでよかったって、思い出したんだ。もちろん私だって人間だから、腹の立つことは注意するし、良くないと思ったことはよくないって伝える。でも、あなたの意見もちゃんと聞くし、ずっとずっとちゃんと味方だから」
誠くん「わかったよ。わかってるよ、そんなこと」
お母さん「誠…」
誠くん「…俺もなるべく心配かけないようにするよ」
お母さん「…ありがとう」
かくして、ミッションクリアである。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
続くかはわかりませんが、新しい物語のはじまりです。
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