レトロな文化が好きだ。
「シネマ」よりもなんだか懐古的な、
「キネマ」という響きに惹かれて、
僕は本屋でこの本を手に取った。
壊れかけた家族を、映画の神様が救う!?
レトロなタイトルと、そんな摩訶不思議なキャッチコピーに魅力を感じて読み始めると、
「映画」「ブログ」「感想文」「家族モノ」「ほんのちょっぴりの謎」
考えてみたらレトロどころじゃなくて大好きなものだらけのこの物語にすぐにはまった。
作者はこれまた大好きな原田マハさん。
『本日はお日柄もよく』で度々泣かされたものだから、
薄々勘付いてはいたのだけれど、やっぱり泣かされた。
それも家族愛ではなくて、まさかの男の友情というやつに(主人公は女性です、念のため)。
ぜひそれは本編で確認してもらいたい。
『ニュー・シネマ・パラダイス』『ライフ・イズ・ビューティフル』
『フィールド・オブ・ドリームス』『シャイニング』『七人の侍』
主人公とその父親、そして仲間たちが繰り広げる奇跡の物語を、
数々の名画たちの名前が彩る。
どれも一度は見た映画たちだったが、また観たくなった。
もちろん、映画館で。
名画は、大輪の花火である。
それを仕掛ける川辺がいま、失われつつあることを私は惜しむ。
主人公は「ニュー・シネマ・パラダイス」の感想ノートにそう付け加える。
秀逸な表現は真似できないが、言われてみれば同感である。
違う人が、同じ場所で、同じものを見る。
それってなんだか素晴らしいことじゃないか。
暗闇の中の光に、みんなして注目して、
日常にはない大音量に、みんなして興奮して、
泣いたり笑ったり、拍手を贈ったり、
それはまるで涼しくて快適な花火大会のように、
僕らの脳裏に、心に、思い出に、深く刻み込まれる。
映画はもちろん、
一人で見るのもいい。
でも、みんなで見ると、なんだかもっといい。
それも大好きな人たちと一緒に見れたりしたら、最高だ。
そうだ、映画館とはいわば、
大切な人と、一緒に、大切な思い出を、創る場所。
目には見えないけれど、大切なものがそこにないわけがない。
愛や友情や恋やなんだか言葉にするのが難しい想いのようなもの。
人と人の間にあって、だけど決して目に映ることのない、
暗闇の中にあって、だけど確かに誰かと誰かを結んでいるもの。
映画を、何倍も心に残らせるようにする粋な伏線。
つながり。
それが、それこそが、神様の正体かも。
片桐はいりさんのあとがきも素敵でした。
つられて飛んだ原田マハさんのプロフィールも、
ある意味物語以上に劇的で、
他の作品も次々読み進めようと心に誓った夏の日の午後でした。
そうか、こういう様々な物語を経て物書きになった原田さんだからこそ、
物書き(ブロガーやコピーライター)を客観的に見て、
その上で心に響く言葉を紡ぐことができるのかもな。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
映画観に行こう。
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