探偵vs怪盗!危なくない刑事?の事件簿【理科&美術編】


さぁ、今宵は極上の勉強ミステリーをお楽しみいただければと思います。

今回のテーマは待望の「理科」。どの単元かは読んでみてのお楽しみ。

過去最高傑作(当社比)の呼び声も高い勉強犬男シリーズ第五弾ですが、

もちろん、過去のお話を読んでいなかったとしても大丈夫!

さぁ、(おそらく)誰も死なないミステリー、開幕です!!









「これが現場に置いてあったものの実物ですか?」
勉強犬男が事件現場に置かれていたというカードを覗き込む。
そこには大きな赤い文字でたった一言「殺人」と書かれていた。
「ただ現場では誰一人として死んでいない…」
勉強犬男が首をかしげる。


最近巷で話題になっている盗難事件。
謎の怪盗によって各地で有名な絵画が次々に盗まれているという。
そして、怪盗は必ず現場に一枚のカードを残す。
カードの中身を公表されていない世間は、
その怪盗を「和製ルパン!」「本物の怪盗キッド!」といった義賊扱いをし、
面白みも込めて「怪盗アートマン」と呼んだ。
ただ、実際のカードに残されているメッセージはおぞましい意味をもつ言葉ばかりであった。


怪盗は三ヶ月ほど前に突然現れ、今までに4件もの犯行をいとも簡単に実行した。
奇しくも翌月に海外から数名の新進気鋭の画家たちを招いて、
「芸術フェス」なるものを行おうとしていた都内の美術館連盟が戦々恐々としたのは言うまでもない。
美術館連盟の長である国際現代美術館の館長、芸術フェスの責任者でもある大山田権助は、
警察に至急の解決を要請した。またその新進気鋭の画家に混じって、今や世界で最も人気と言っても過言ではない、
現代美術の巨匠、ピスタゴラス氏が来日することも大きな話題となっていた。
もしもピスタゴラス氏の絵が盗まれれば、日本警察は全世界に失態を晒すことになる。
そのため警察は自身の威信を賭けて次の犯行を阻止せねばと躍起になっていた。


そこで白羽の矢が立ったのが、検挙率100%を誇る元天才刑事で、
現在はフリーの探偵をしている勉強犬男であった。
警視庁の一室に呼ばれた彼は、早くも今までの現場に置かれた証拠品を確認していた。
そう、カードに赤い文字で記された異様な響きの言葉たちである。


最初の犯行現場、ゴッホの有名絵画「洋梨のある静物」のレプリカが盗まれた現場に残されたカードには、「殺人」の文字。
次の「花咲くアーモンドの枝」の絵が盗まれた大和美術館には、「死」。
そしてマグリットの「男の息子」が盗まれた藤沢美術館には、「地獄」。
最後の「莫高窟第220窟 舞楽図・唐」が盗まれた歴史美術館には、「嘘」というカードが残されていた。


怪盗はなぜわざわざ現場にリスクとなるカードを残していくのか。
そして、そこに書かれているメッセージは一体何を意味するのか。
「犯行現場になった美術館につながりはありますか?」勉強犬男がそう訊くと、
「もちろん調べましたが、それぞれにつながりはないと思われます」と刑事の一人が言った。
さすがの勉強犬男もこの情報だけでは情報不足だとかぶりを振った。


その時、部屋に一人の刑事が駆け込んできた。
「大変です!また怪盗の犯行です!」
「場所と盗まれたものは?」勉強犬男がすかさず確認をする。
「国際現代美術館から、新進気鋭の画家アプリコットさんの新作が盗まれたそうです!」
「カードにはなんと?」「現在確認中です!」
バタバタとそこに居た刑事たちが外へと出ていき、部屋には勉強犬男と、
かつての部下である田中だけが残った。


そこで、「なるほど」と勉強犬男が小さく頷いた。
そして「それにしても洋梨とアプリコットとは…」とつぶやくと、静かな部屋の中で突然クククと笑い出した。
田中がすかさず突っ込む。「いやいや急にどうしたっす?おかしくなったっすか?」
笑うのを押し殺しながら、勉強犬男が反応をする。
「おや、私におかしくなったとは偉くなったものだな、田中くん」「す、すみませんっす」
「まぁいい。なんとも愉快な犯人でね。ついつい笑ってしまった」「愉快…っすか?」
「この犯人はもうすぐ犯行を終える。今まで盗まれた方々には気の毒だが、しばらくすれば事件は自然に解決するだろう」
「え?」「しかし、そうなる前に止めなければならないな」
勉強犬男はそう言って、田中に一言二言耳打ちをしたあと、部屋を出ていってしまった。





「最後のカードのメッセージは、そうだなぁ、うーん、爆弾魔、とかですかね」
真夜中のしんとした空港に、勉強犬男の声が響いた。話しかけている相手はフードを被ったままうつむいている。
勉強犬男はかまわず続ける。
「えぇと、私芸術はよくわからないのですが、あなたの腕前は見事なものです。あ、盗みのですよ」
「なんのことだ」フードの男が口を開いた。しばしの沈黙が広がった。





その頃、田中は勉強犬男の指示に従い、
国際現代美術館へとやってきていた。
田中の目の前には、館長である大山田権助。
自分が招聘した画家の絵が盗まれてショックを隠せずにいるようだ。
「新進気鋭の画家さんたちの中でも、アプリコットさんの絵は今回がほぼ初お披露目だったんすよね。今回はとっても残念っす」
田中のお悔やみの言葉代わりの質問に、大山田権助はゆっくりと頷いてから、重い口を開いた。
「…アプリコットとは昔からの友人でな。たまたま出会った当初から、彼の絵は素晴らしかった」
遠い目をしたまま大山田権助は続ける。
「それをやっと…やっと世間へ発表ができる場ができたというのに…」
本当に残念そうにしている大山田権助へ、田中は本当のことを伝えようかどうか迷っていた。





「あなたはなぜ絵を描いているのですか」
所変わってこちらは再び空港。勉強犬男がフードの男を見据えて言った。
フードの男はしばらく黙っていたが、やがて観念したようにフードを取った。
勉強犬男はわざとらしく大袈裟に驚いたポーズをしながら、
最近テレビでよくその名を見かける新進気鋭の若手有望画家に向けて言葉を放った。
「ハロー、ミスターアプリコット。そして、怪盗アートマンさん」





「犯人は…アプリコットさんっす」
田中がその名前を告げた時、大山田権助は一瞬驚いた顔を見せたあと、
「やはりそうだったか…」とうつむいた。
「彼が乗り気でないことには気付いていた。それでも、私は彼を祖国から無理やり連れてきてしまった。彼は、私を恨んでいるかもな…」
大山田権助は彼の才能に目をつけ、半ば無理やり今回の発表を進めたという。
それが本人の為になると信じていたから。





「僕はね、大好きな人のために絵を描いていたんだ」
おそらく謎を解き明かした勉強犬男へ、アプリコットはご褒美と言わんばかりに流暢な日本語で話し始めた。
胸の内を誰かに話したかったということもあるのだろう。話は止まらなかった。


僕はね、故郷に残してきた大好きな恋人の為に絵を書いているんだ。
有名になりたいとか、お金を稼ぎたいなんて、これっぽっちも思ったことはない。
むしろ、こんな風に世界中を転々としなくちゃいけなかったり、
急かされて絵を仕上げるぐらいなら、名声やお金なんてない方がいいんだ。
僕はただ、彼女がそばで笑ってくれるだけで、とっても幸せになれるんだから。
友人の権助には本当に申し訳ないけれど、やっぱり僕の絵は公表されるべきではない。


「それで、今回の怪盗事件を起こした…と」
勉強犬男のそのつぶやきに、ビクッとしたアプリコットは頭を抱えてうずくまった。
「ごめんなさい。本当に申し訳ないことをしたと思っている。色んな人に迷惑をかけたのはわかってる。でも…」
「決して責めてるわけではありませんよ。私個人としては仕事が増えてよかったですしね」
勉強犬男は渾身の冗談を放ったが、スルーされたのでそのままスルーして続けた。
「それに、とっても粋なメッセージでした。あえて少し強い言葉を使ったのも、目くらましにはバッチシでしたよ」





「暗号…?」
大山田権助はきょとんとした顔で田中を見た。
「そうっす。盗まれたものとカードは暗号になっていて、そこにはメッセージが込められていたっす」
意気消沈していた大山田権助の目に、微かにだが光が灯った。
「まず盗まれたものっす」そう言いながら田中は盗まれた絵画の写真を並べた。


「洋梨のある静物」「花咲くアーモンドの枝」「男の息子」「莫高窟第220窟 舞楽図・唐」「アプリコット・ファースト」



「共通しているものがなんだかわかるっすか?」
大山田権助からは言葉は出てこない。
「ヒントは、植物っす。さぁ、シンキングタイムっす!」


そこで田中はしばし時間をあげたが、
まだ疑問形の顔をしている大山田権助を見かねて、一つずつ順番に指を指しながら説明を始めた。
「洋梨。アーモンド。そして…」
そこで大山田権助が「あ!」と声を上げた。
「男の息子にはリンゴが、莫高窟第220窟舞楽図・唐には楽器ではあるがビワが描かれている…。アプリコットは…日本語であんず…か」
「そうっす。全部バラ科の植物っす」結局いいところは言ってしまう田中であった。





「バラで伝えるメッセージ、とは随分オシャレでしたね」
頭を抱えたままのアプリコットへ、勉強犬男は穏やかな口調で感想を述べた。
「いつか彼へ伝える日が来ると思ってね。バラは彼の好きな植物でもあったから、僕の本当の気持ちを隠しておいたんだ。きっともうしばらくは会えないだろうから、多くの時間が経って、もしもまたいつか僕らが友人に戻れる日が来たら伝えようと思って。まさか、そのメッセージが解かれるのがこんなに早いとは思わなかったけど」
アプリコットは空中を見つめた。友人が自分のためを思って動いてくれていたことはわかっていた。
でも、故郷に残った最愛の人の人生の時間に、もうあんまり余裕がないと知った時、彼はこの犯行を決心したのだった。
「でも」勉強犬男がそっと同じ方向を見た。そして、心からの言葉を発した。「きっと、わかってくれると思いますよ」
「そうかなぁ」そこからほんの少しだけ続いた沈黙と、こぼれた一粒の涙。「そうだといいなぁ」
空港に、アプリコットの嗚咽が響いた。





大山田権助は頭を整理しながら、カードの言葉を改めて見直した。
「殺人はさつじんで4文字、死は1文字、地獄は3文字、嘘は2文字、そして今回の罪と罰は5文字」
「足してみて下さいっす」大山田権助は手を使って数え始める。
「15…?」
「そうっす」正解!というように田中がリアクションをとる。
「これに何の意味が?」と訝しがる大山田権助に田中が問う。
「大山田さんが好きなバラには色んな花言葉があるっすよね」「え?」
「15本のバラの花言葉、わかるっすか?」
「15本のバラの花言葉…」少しの間が空き、大山田権助は目を見開いた。
「ごめんなさい…か」
大山田権助はそこでハッとした。これは自分宛てのメッセージだと自覚したのだ。
最愛の彼女との仲を引き裂き、半ば無理やりこの国に連れてきて、犯罪に手を染めるような嫌な思いまでさせたそんな自分に、
彼はある意味命がけでメッセージを残したのだ。
「ごめんなさい…か」それを言うのは俺の方だよ、と言わんばかりに大山田権助は肩を落とした。


そんな大山田権助を見据えながら、
田中は、いつになく慎重に、続きの言葉を浮かべた。
「15本のバラにはもう一つ意味があるっす」
大山田権助が顔を上げる。
「もう一つの、意味?」
田中が大山田権助の目を見て言う。


「永遠の友情」





「結局全ての絵は戻ってきたけれど、犯人は捕まらず終いでしたね」
探偵事務所の助手として働く海田が、TVのニュースを見ながら勉強犬男に声をかける。
一連の怪盗事件からすでに3日がたっていた。
「そうだな。まぁいい好敵手が現れたと思っておくよ」勉強犬男はそう言いながらコーヒーをすする。
「怪盗アートマンかぁ…イケメンかなぁ…」海田がわざと明るいとぼけた口調でそう言うと、
「それはもう」誰にも聞こえない声で勉強犬男がつぶやいた。





「私の働いている塾は、ネットを使って世界中の生徒たちに個別指導をするシステムだ。それもなるべく良心的な価格でね。教育を受けたいというニーズは世界中に溢れている。そのニーズに応えるためには優秀な教育者の人手が必要なんだ。そう、君のようなね」
「私、美術と英語しか教えられないけれど大丈夫ですか?」
「もちろん。君のコミュニケーション能力と私どもの研修にかかればすぐに大丈夫になる。美術や英語のニーズも溢れているしね。それに、ネットさえつながれば世界中どこにいてもこれまた大丈夫だから」
画面上の窓に映る怪盗アートマン、改めアプリコットは満面の笑みを浮かべた。
「彼女も喜んでくれています。体調も回復に向かっているって」アプリコットのテンションはマックスだ。
「あなたも、大丈夫?」パソコン上のもう一つの画面にはもう一人の男の顔。
「私は5科目全部いけるぞ」大山田権助も会心の笑みを浮かべた。
「友人同士の応募は大歓迎です。ようこそ、HOME個別指導塾へ」


事件がある限り、そして勉強に謎がある限り、
勉強犬男の物語は続いていく。
これは誰も死なないミステリー、危なくない刑事(探偵?)の事件簿。


さぁ、次回も乞うご期待!






本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。

興味が湧いたら第四話も読んでね。





「第二の家」ブログ|藤沢市の個別指導塾のお話

塾という場所が好きです。生徒の成長する姿を見るのが好きです。生徒や保護者と未来の話をするのが好きです。合格や目標を達成して一緒に喜ぶのが好きです。講師と語り合うのが好きです。教材とにらめっこするのも好きです。新しい人と出会うのも好きです。藤沢の街が好きです。ブログも、好きです。

勉強犬

「第二の家」学習アドバイザー。
世界中に「第二の家」=「子どもたちの居場所であり未来を生きる力を育てる場所」を作ろうと画策中。元広告営業犬。学生時代は個別指導塾の講師。大手個別指導塾の教室長(神奈川No,1の教室に!)・エリアマネージャーを経て、2015年ネット上で「第二の家」HOME個別指導塾を開設。2019年藤沢にHOME個別指導塾リアル教室を開校。

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