さぁ、始まりました。
2022年度の高校入試問題を勝手に分析して感想を言うコーナー、最初の科目は「国語」です。
入試当日は、2番目に行われた科目ですね。所々に変化がありました。
それでは早速その中身を見ていきましょう。
塾生たちの声
「評論と古文が読みづらかった」
「パンの話の選択肢が難しいところがあった」
「漢字は意外な感じだったけどやれた(駄洒落)」
「古典が問2じゃなくて個人的にはラッキーだった」
全体的な傾向
まずは昨年との比較です。
昨年に比べて、国語の難易度は上がっていると思います。問題の出され方などが変化しているということはあるのですが、そこが難易度に影響を与えているというよりも、文章自体の読みにくさが上がっていると感じました。
5教科の難易度については以下の記事でも説明しています。
大問と配点
問1 漢字と短歌 (ア)(イ)各2点 (ウ)4点 計20点
問2 文学的文章 各4点 計24点
問3 説明的文章 (ア)(イ)(ウ)各2点 (エ)〜(ケ)各4点 計30点
問4 古文 各4点 計16点
問5 資料読解記述 (ア)4点 (イ)6点 計10点
俳句・短歌の配点が4点になりました。ただ、難易度はそこまで高くありませんでした。それでは一文ずつ中身を見ていきましょう。
大問チェック!
まず問1。(ア)の漢字の読みは記述ではなく、選択になりました。ここはスムーズに解いていきたいところですね。「煩雑(はんざつ)」「罷免(ひめん)」「寸暇(すんか)」「爽やか(さわやか)」が正解となります。
(イ)は意外と難易度高かったですよね。「即席」は「議席」、「採択」は「伐採」、「架空」は「担架」、「研ぐ」は「研究」です。選択肢があることで悩まされた子も多いでしょう。
(ウ)は奈良県吉野に住みながら詩作や短歌を詠み続けた前登志夫さんの作品鑑賞。これは選びやすかったんじゃないでしょうか。答えは2です。それにしてもいい歌です。
続いて、神奈川らしい長文の問2です。
問2は文学的文章。長いですが、神奈川県がお好きな「ちょい古現代文(ちょいワル親父的な感じで)」ではなく、読みやすい文章でした。
入試問題の小説というのは「主人公がマイナスの状態からあるきっかけを経てプラスになる」物語が多いので、それを念頭に置いて読めるといいですね。
今回の題材は青谷真未さんの『水野瀬高校放送部の四つの声』。あらすじはこんな感じです。
校庭に響いたマイクの音に心奪われ、衝動的に放送同好会を設立した高校三年生の巌泰司。一人気ままに活動するはずが、NHK杯全国高校放送コンテスト出場を目指す一年生の赤羽涼音と白瀬達彦が入部してくる。さらに競馬実況女子の二年生・南条梓も加わり放送"部"として歩み始めることに。だが四人はそれぞれ言葉にできない悩みを抱えていた。友達、家族、将来――ままならない思いを声に託した高校生たちの青春群像四篇。
ハヤカワ文庫から出版されています。よかったら読んでみましょう。
(ア)は僕の心情を当てる問題。葛藤や矛盾然り、登場人物が2つの感情を抱えている場合というのは問題になりやすいですね。「不安」でも「喜んだ」でも「不審に思っている」わけでもなく、2が答えになります。
(イ)は登場人物の心情読み取り。ここも読み取りやすかったのではないでしょうか。4が答えです。
(ウ)は主人公の心情読み取り。前提の読み取りが少し難しかったですね。答えは3になります。
(エ)は「どうやって朗読」問題。登場人物各々の行動と照らしあわせて考えられるとスムーズだったかもしれません。答えは4です。
(オ)は、全体の流れが把握できていれば、選択肢を読んだだけでもなんとなく答えが分かりそうな問題でしたね。1になります。
(カ)は全体把握です。「対比」はなく、「比喩」が多いわけでもなく、「菫さん」の視点でもないので、3が正解になります。
今回の国語の得点源はここですね。なるべく間違わず、正答を重ねていきたいです。
問3はえげつない説明文です。テーマは「言葉」。内容自体は面白そうではありますよね。
著者の小浜逸郎さんは横浜生まれの評論家。昔塾講師もやられていたんですね。『日本語は哲学する言語である』の中身は以下の通り。
日本語を日本語で哲学すれば、デカルトやハイデガーが、何を間違えたのかがよくわかる。西洋哲学がそのロゴス至上主義ゆえに逢着してしまったアポリアを超えて日本語の文法構造から新しい日本語の哲学を切り拓く画期的な試み。
ちなみに、アポリアとは「解決のつかない難問のこと」らしいです。
なんだか堅そうな文章の大問ですが、各問いはそれとはうってかわってバラエティ豊かなものとなりました。
(ア)は、接続詞の問題。苦手な子は、まずは選択肢を見ずに前後の文を読んで、自分で当てはまる接続詞を考えてから、選択肢を見るというのも一つの手です。Bの方がわかりやすいですかね。答えは4です。
(イ)は「あなたここにいたのか!」と思わず言いたくなる文法問題。昨年までは問1での登場でした。否定の助動詞を選ぶので1ですね。
(ウ)は珍しい四字熟語問題。「千差万別」は「物事の種類や様子に、さまざまな差異があること」ですから、当てはまるのは3ですね。
(エ)は、「道具」の説明。傍線部の次の段落で道具の説明がされており、「生活にとって有用性という観点から編み出された」と言っていますから、答えはそれを言い換えている4になりますね。
(オ)は筆者の考えを読み解く問題。傍線部の後に「すると」があり、そこから説明がありますね。最後のどんでん返しも含めて説明している2が正解です。同じことを言っているのがどれか探すのが難しかったですよね。
(カ)は文の説明です。傍線部前後から、時枝さんが「何を認めることで何かが起こることを心配していた」の何と何かを読み解く問題です。「表現行為の以前に存在する社会的実態としての言語」が「言語活動がなくても存在する言語」とつながりますから1ですね。「警戒」の言葉に騙された子も多かったのでは。
(キ)は、言語というのは、聞き手だけで構成されるものではなく、音としての表出や繰り返しが必須というわけではないので、1が正解になるのでしょう。
(ク)は「多義性」と「流動性(本文中ではつねに変容していくもの)」がキーワードですね。3が正解です。
(ケ)は「宅配便の喩え」と「国語学者の論理」の使い方で消去をして、2が残りますね。
言葉が小難しくて、しかもそれを言い換えねばならなくて、苦戦した子も多かったと思います。これまでの人生の中でこういう文を読む機会というのは多くないと思うので、「なるほど、こういう伝え方もあるのか」と、自分の頭の中の引き出しにしまっておきましょう。
続いては古文です。
いやー、これは読みにくいですね。出典は『十訓抄』。鎌倉時代中期の教訓説話集です。それにしても、これって1252年ごろの文章ですから、それを今2022年に生きる我々が目にしているっていうのは凄いことですよね。
まず訳を載せておきましょうか。
仁和寺の大御室の御時世に、成就院僧正・寛助様がまだ阿闍梨(弟子をとる僧)と申し上げていた頃、白河の法勝寺の九重の御塔の供養が執行された。
御室は、「この度の褒賞があれば、必ずそなたに譲ろうと思う」と(寛助様に)御約束されたので、恐縮して承ったのだが、思い通りに供養を成し遂げられ、褒賞が行われる時になり、京極大殿・藤原師実公の御子息が阿闍梨で、(御室の)御弟子でいらっしゃったのだが、大殿は御面会の際に、「この度の褒賞は,小僧の愚息に頂きましたぞ」と、前もって御礼を申し上げなさったので、(御室は)何ともおっしゃりようが無く、師実公の御子息が法眼(僧の位の中位)になられてしまったのだった。
御室は、「あの約束してあった阿闍梨の寛助はどんなに残念だと思っているだろう」と、心痛で胸がつまる様に思し召しになったが、その褒賞の日、(寛助様の姿が)ぷっつり見え無かったので、「そうであろう。(寛助は)修行の旅に出てしまったか、あるいは恨めしさのあまりに(出て行った)か」と御心の内をかき乱されていらっしゃったのだが、日が高くなってから、(寛助様が)法親王様の御前に姿を現したので、(御室は)不思議に思し召しになり、「何処へ行かれていたのか」とおっしゃったところ、「新しく法眼になられた御祝いに参りました」と、軽く御答えし、少しも恨めしく思った気配も無かった。
御室は、喜ばしいとも、感心な事だとも思し召されたので、今回の人事こそ、他人に先を越されてしまったけれども、次々の御褒賞を沢山譲られ、勘助様は僧正(僧官の最高位)にまでなり、鳥羽院の御代には『生き仏』と思し召されたので、世の中の事を思い通りにし、『法師関白(僧侶でありながら、関白のように実権が有る事)』とまで呼ばれなさった。
実に素晴らしかった方である.
うーん、改めて読みづらい。ただ、すごく偉そうに言えば、すごく良いこと言ってますよね。
(ア)は、文意をとる問題。上記の通り、3が正解ですね。
(イ)は登場人物の説明。朝にはいなかった主人公が昼に戻ってきたので1が正解です。
(ウ)は文章を意味を掴むとともに、「あはれ(しみじみと心を動かされる)」の意味を捉えられると良いですね。正解は4になります。
(エ)は上記の本文通り。答えは2になります。
読みづらい古文でしたが、選択肢に助けられて読めたという子も多かったのではないでしょうか。入試古文対策には以下の記事もオススメです。
さて、最後の大問です。
テーマは「サスティナブルファッション」。サスティナブルは今流行りの言葉で「持続的な」という意味です。会話文ですが、文字も多く、まだまだ気を抜けませんね。
(ア)は資料の読み取りです。資料からヒントをもらえれば正解はしやすかったかな。4が正解です。
(イ)は記述ですね。言われた通り、グラフと資料から読み取りましょう。「不要なものは買わない」ということと、「簡単に捨てない」ということが書かれていると良いですね。
回答と記述の別解はこちら。
まとめ
さぁ、一気に見てきました。いかがでしたでしょうか。
最後に今回の問題を振り返って、まとめてみたいと思います。
今年の国語の問題の特徴は、そのバラエティ豊かさですね。
漢字の選択、短歌の配点、古文の移動、ちょい古現代文からの脱却、文法問題の移動、四字熟語、光と影、パン、言語、十訓抄、サスティナブルファッションなど、非常に多彩な問題たちが「国語」という教科を彩りました。まさしく「十人十色」の問題たちと言えるのではないでしょうか。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
別にうまくない。
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