「歴史を学ぶ意味は何ですか?」
塾の先生が私に訊いた。私は一瞬ぽかんとして、
「成績を上げるためです」と答えた。
今度は先生がぽかんとした。
私の大嫌いな社会。特に歴史。
その面白さを教えてくれるよ、って教室長が担当に選んだのが、先生だった。
縄文、弥生までしか歴史を順番に言えなかった私に、
先生は物語仕立てで面白おかしく歴史を教えてくれた。
「未来をより良くするためです」
先生は歴史を学ぶ意味を私にそう教えてくれた。
だけどその後に、
「でも、本当は違うんですけどね」とぼそりと呟いた。
その時の私は?を浮かべただけでそれ以上追求はできなかった。
学校の社会のテストの得点が平均点以下から93点まで伸びた。
それをきっかけに私は歴史を好きになった。
「先生!面白いね、幕末!登場人物がみんな素敵!早く先へ行きたい!」
私のその言葉を聞いて先生はニヤリとした。「それですよ」
「歴史を学ぶ意味は、未来を良くするためとか言いましたけど、本当は違うんです」
私は首を傾げて先生を見た。珍しく先生は満面の笑みだった。
「楽しいから学ぶんです。ただ、それだけでいいんです」
ぽかんとした後、私も満面の笑みで頷いた。
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