夜のキャンバスに、
輝く点々をばら撒いて、無造作に並べた。
聞こえるのは、木々の揺らぎと、虫の囁き。
お父さんに連れて来てもらった山の上で、
大の字になって寝そべりながら、
僕はそこへ、まるで月と重ねるように、初めての夢を浮かべた。
あそこへ行きたい。
小学生低学年の時に見つけたその夢は、
中学3年生になった僕にとってもまだ夢で、
ずっと自分だけは信じてたんだ。
「僕は宇宙飛行士になる」
だけど、そう言った僕を誰もが笑った。
人の言葉のエネルギーというのは強烈で、
いつの間にか、「どうせ無理」だなんて自分でも決めつけて、
将来の夢を聞かれても、マイナスな言葉ばかり並べていた。
でも、ある時、それを聞いた塾の先生が僕に言ったんだ。
「人はプラスのこともマイナスのことも口から言う。だから口にプラスマイナスで吐くと書く」
僕は「へぇ」と適当な相槌を打つ。
「そこでマイナスな事を言わないようにすると…」
先生がタメを作るから、少しだけ期待して待つ。
「吐くから-が取れて叶うになる」そう言って先生が笑う。
「夢は、叶うよ」
目から鱗とまではいかなかったけど、少しだけ笑った記憶がある。
先生は、勉強以外のことを相談すると、
本当か嘘かわからない、もっともらしい事をよく言った。
「なんだそれ」とは言いながら、少しだけ僕は元気になる。
そして、次の言葉を楽しみに待つ。
それはまるで、あの輝く夜空がくれる、
意味不明なワクワクと、少しだけ似ている。
でもね、おかげでもう一度、自分を信じてみることにしたよ。
やっぱりあのとびきりのワクワクは忘れられない。
僕は、宇宙へ行きたい。
遥か遠く、途方もない道のりだけど、先生は言ってくれたよね。
苦難、困難、災難。人生には色んな難がある。
でも、それがないと無難な人生になる。
無難な人生はつまらない。難は成長の大チャンス。
だから、有り難うって言うんだよ。
いっぱいの難を乗り越えて、とびきり高い所から、
有り難うって笑ってみせるよ。ありがとう、先生。
そして、これからもよろしくね。
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