ニュースの台風情報を見ながら「これもうずまきだよな」とぼんやり思いました。
いきなりなんでそんなことを思ったのかというと、きっとこの本を読んだからでしょう。
『鎌倉うずまき案内所』
本屋さんで文庫本を見つけて、表紙とタイトル買いでした。ちょうど藤沢と大船の境にある塾の塾長は、「鎌倉」という言葉に敏感なのです。
ただ、実はこの本、一章を読んだところで読むのを止めていました。そこまで読んで「ああ、こんな感じで短編が続いていくのか」と少しつまらなく感じてしまったんですよね。
それから少し間をあけて、ある温泉宿に行く際に、「のんびり読める本を持っていこう」と持ち出したのがこの本でした。
そしたら、宿にて一気読みです。人生わからないもんですよね。各章に隠されたカラクリに気付いてからは、行ったり来たりで、気付けば何周も読んでいました。一章で手を止めていた私は阿呆でした。
物語は時を遡って進んでいきます。昭和平成令和を生きる私にとってはタイムリーなお話ばかりで、当時を懐かしく思いながら読みました。途中、登場人物達のつながりを把握しきれなくなりますが、最後に年表もついているのでご安心ください。
人と人とのつながりって面白いな。この物語はもちろんフィクションなんですけど、現実世界でも似たようなことはきっと起こっているのだと思います。誰もに物語がある。そこに想いを馳せるだけでも、休日が潰れそうです。実際この本も私の時間を良い意味でだいぶ奪ってくれました。頭から後ろから何回読んだことか。
実際、塾というお仕事をしていると、子ども達一人一人に素敵な物語があることを実感できます。
そういえば先日、教材を運んできてくれた大手運送会社の配達員さんから声をかけられました。
「…塾長ですよね?」
なんと昔の職場の教え子でした。全然気が付かなかった。勇気を出して声をかけてくれた彼に感謝です。
声をかけられて、ブワッと甦る記憶。当時の幼さの残る顔が浮かんできましたが、時を経て、彼は立派な大人になっていました。
配達中でしたので、簡単に近況を報告しあっただけだったのですが、それだけでもなんだか嬉しい気持ちになりました。きっとまだまだ成長していく彼の今後も楽しみです。また、彼の物語の脇役の端の脇役で在る私などのことを、覚えていてくれたことにも感謝です。
この仕事をしている私にとって、大人になった生徒達と出会えるのはボーナスみたいなものです。ほんの僅かな時間でも彼らに関わる身として、なるべく名脇役になれるように、これからも励みたいと思います。
「時代は巡る」と言います。でも、ただ巡るのではなくて、実は少しずつ前や上に進んでいるのだと思います。そう、うずまきのように。
そんな時の中で、私もこの本の登場人物たちのように、まずは一生懸命生きてみようと思います。少しでもやさしく強くなれるように。楽しみな未来に沢山出会えるように。次の時代に、何かを手渡せるように。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
何度も読み直したくなる、オススメの一冊です。
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