僕が君と出会ったのは、2年以上前の春だったように思う。
そこからはほぼ毎日一緒にいたね。一緒に、いろんな場所へ行った。
箱根、名古屋、静岡、大阪、ハワイ、バリ、台湾、イタリア…
日本や世界を巡って、色んな人と会って、数多くの思い出を写真やムービーに収めた。
楽しかったなぁ。
でもね、一番君が居てくれてよかったと思ったのは、
そんな風な非日常の真っ只中ってわけじゃないんだ。
何気ない毎日。
朝、夜、出勤の電車の中、駅での人待ち、仕事の休憩中。
いつも君はそばにいてくれて、僕を楽しませてくれた。
お気に入りのカバーと保護シートで飾られて、
大好きな音楽をかき鳴らす。
犬が寄ってきて噛まれたり、舐められたり、
時にはイヤフォンケーブルが巻きついてうわーってなったこともあったけど、
掌にぴったりで、居心地がとっても良かったよ。
ねぇ、
きっと僕のこのメッセージは永遠に既読がつくことはないし、
バックアップもされないし、留守電に残ることもないけど、
それでも、伝えたい言葉があるから、
精一杯の想いを込めて呟くよ。
16GBしかない僕を、ここまで大切に使ってくれてありがとう。
「このボタンの押し心地がいいんだよ」って、ずっと機種を変えずにいてくれてありがとう。
ひどく汚れた僕を、何度も綺麗にしてくれてありがとう。
僕と、出会ってくれてありがとう。
居心地のとってもいい、君の掌が大好きだったよ。
僕が僕の写真を撮ることはなかったから、いつかきっと、君はどこにも残っていない僕を忘れてしまうだろうと思うけど、
初期化されたって、リセットされたって、僕はきっと、君のことずっと忘れないから。
じゃあ、もう行くね。
そういえば昔、君が僕を使って打ったお気に入りの誰かの名言があるんだ。
「本当のお別れの時には、未来へ向けて希望のある言葉を使うのがいい。いつかまた会える日のことを、ずっと楽しみに待てるから」
だから、
ばいばい。
じゃなくて、
またね。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
フィクションですが、僕にはiPadという仲間がいたので、ちゃんと君の写真もいっぱい残ってるよ。
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