「深い学びを得るには、いったい何が必要なのか?」
『Learn Better〜頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ』には、教育に携わる者なら是非とも知りたいその問いの答えが、各種エピソードを交えながらわかりやすく丁寧に描かれています。丁寧だから、ちょっとボリューミー。
著者は、米国先端政策研究所シニアフェローのアーリック・ボーザー氏。学びについての研究と発信を各メディアで発表しており、ビルゲイツ財団のアドバイザーも務めている方だそう。溢れ出す知的な感じと、謙虚な姿勢が文章からも伝わってきて素敵でした。
その彼が冒頭でこんな事を言っています。
学習の方法を学ぶことは、専門家が言うところの「究極のサバイバルツール」、つまり、現代において最も重要な能力の一つであり、あらゆるスキルの前提となるスキルである。
なるほど、確かに。これは僕も同感です。ここから俄然興味が湧いてきて、一気読みをしてしまいました。本書内で語られる個別のエピソードについては本日は割愛しますが、興味深い話の連続で面白かったです。内容の整理がてら、本日は内容をまとめていきたいと思います。
それでは早速、米Amazon2017年ベスト・サイエンス賞も獲得したこの本の紹介を始めましょう。「本質的な学び」についての6つのステップを、個人的な感想とともにご紹介していきます。
ネタバレ嫌という方は、ここで引き返し、読んでから舞い戻ってきていただけると幸いです。
「Learn Better」が提唱する学びの6ステップ
まず本書が提唱する学びの6つのステップをお伝えしましょう。
- 価値を見出す
- 目標を決める
- 能力を伸ばす
- 発展させる
- 関係づける
- 再考する
これだけ見ても「ナンノコッチャ?」だと思いますので、ひとつずつ見ていきましょう。
1 価値を見出す
学びと向き合う時、まずしなければならないこととして、本書ではこれを挙げています。
学びたいと思わなければ学ぶことはできない。知識を習得するには、そのスキルや知識に価値があるとみなさなければならない。さらに、意味づけを行わなければならない。学習とはすなわち対象の意味を知るということである。
そりゃそうですね。覚えようとしない子にいくら説明しても、のれんに腕押し。その場合は、学習を始める前に、その学習内容に興味を引かせるとか意義を持たせるとか一手間必要ですもんね。
最近ご紹介した勉強法「STAR」でも、まずは「なぜ勉強するのか」つまり「目的」が重要だとしています。なんか被って嬉しい。
2 目標を設定する
次も同様にこのブログでも常々述べていることですね。やっぱり現場でも理論でも「目的」と「目標」は重要なのでしょう。本書では「目標」の重要性をこう記しています。
知識を習得する初期の段階においては、集中が重要だ。何を学びたいのかを厳密に見極めて、目的と目標を設定しなければならない。
また、「目標」を立てるコツとして、2つのことを挙げています。
1つは、小さな目標に細分化すること。例えば「ダンスを覚える」ではなくて、「週に一回ダンス教室に通う」など、成長感や達成感を味わいやすいように目標をコントロールしましょうということです。
もう1つは、ちょっとだけ背伸びした目標にすること。学びは、今できていないことをできるようになる瞬間にこそ生まれます。できることを目標にせず、常に背伸びした状態を目指しましょうということです。
3 能力を伸ばす
多くの場合、ここが「学習」と呼ばれがちなパートでしょう。
学習のこの段階では、スキルを磨き、パフォーマンスを向上させるためにそのことに特化した手段を講じる必要がある。時間を取って練習が必要。
このパートでは、練習方法や手段の大事さについて触れています。それによって、成果は大きく変わると。塾の人として、とっても興味深く読ませていただきました。
その中で、僕が「なるほど!」とか「やっぱり!」と思ったポイントは3つ。
1つ目は、「能動性」。テキストを読み直したり蛍光ペンで線を引くような受け身の学習法じゃなくて、自分で自分に問題を出したり説明をするといった能動的な学習法を使いましょうとのこと。
2つ目は「アウトプット」。自分の知識を記憶から取り出す練習こそが大事だといいます。
3つ目は「反復」。手に入れた知識を、自分の言葉で言い換えて自分自身に説明するということです。一つの概念を何通りにも説明できるようになったら再考です。一手間かけることで知識の創造が起こり、記憶しやすくなるわけですね。
同じ時間を使っているのに、学び方一つで成果は変わります。そして、あえて強い言葉を使うとすれば、あんまり意味のないダメダメ勉強法で時間を無駄にしている人があまりにも多いです。
どうせやるのだから、成長できる学び方を身に付けたいものです。中身をもっと詳しく知りたい方は、僕が説明するかこの本貸しますね。あ、一家に一冊もアリですが、子ども達が読んでくれるかどうか。
4 発展させる
この段階では、基本から踏み出して知識を応用したい。スキルと知識に肉付けして、より意味のある形の理解を形成したい。
上記とも重なりますが、ここでオススメされている方法は、僕もオススメです。
それは、「学んだことについて、自分で自分に概念を説明した後、他人にも説明する」ということ。
この本でも、「誰かに教えると、教える本人にとっても得るものが大きい」とされています。こりゃもうその通り。
僕もよく授業終わりに、生徒に「先生、ちょっとこれがわからないんですけど教えてください」とかやりますけど、しっかり学んでいる子の説明には唸るものがあります。引き続きやろう。
5 関係づける
すべてがどう噛み合うかがわかる段階である。私達は結局、個別の事実や手段を知りたいのではなく、その事実や手順が他の事実や手順とどう関わり合うかを知りたいのだ。
ここでは、スキルや知識はつながって、さらに広がっていくものだと説明されています。
面白かったのは、関係づける練習として提案されていた「仮説立て」のくだり。本書ではシェイクスピアが例として出されていましたが、ここでは大ヒットアニメ映画『君の名は』を使ってみましょう。
より『君の名は』を理解するには、「もしも入れ替わりが起こらなかったらこの物語はどうなっていたか」を考えてみるのがいいといいます。『桃太郎』で「鬼ヶ島に辿り着かなかったら」、『竹取物語』で「月に帰らなかったら」を想像すると、関係性やつながりの理解が深まるそうです。
あんまりやったことのない想像だったので、まずは一人で試してみます。片隅でふふふって笑ってても、変な人じゃないよ。
6 再考する
学習には間違いや過信がつきものだから、自分の知識を見直し、自分の理解を振り返って、自分の学習したことから学ぶ必要がある。
ラストです。学習に関して、人は他のことよりも「できている」と過信してしまう傾向があるといいます。
だから、「自分がわかっていると思っていることを本当にわかっているのか?」と自問自答することが大切だと。
そして、自問自答の内省はもちろん重要ですが、ここでもやはり他者の存在が役に立つとされています。上記のように親しい人に得た知識を教えるだけではなくて、普段接することのない多様な経験を持つ人々に対してコンタクトすることで、多様なものの考え方に触れられて学びの質は上がるそうです。
確かに。小学生に教えるつもりで、とか、文化が違う人に日本のことを伝えたりするのって、より深い理解が必要ですもんね。
実はこのパート、語られたエピソードが結構衝撃的で読み応えがあるものだったので、熟読してしまいました。ぜひ興味が出たら本書でご確認ください。
まとめ
さぁ、6つのステップの説明はこれで終わりです。
各ステップの説明をした後、筆者は言います。
「学びは、必ずしもこの順番通りの段階を踏むわけではない」
状況やタイミングによっては、いきなり「3 能力を伸ばす」をしなければいけない時もあるし、テスト前なんかは「6 再考する」の時間を多めに取るのが効果的だったりするし、その時々で方法は変わると述べられています。ただ、このステップが重要なのは変わらないと。
そして、学ぶ際にありがちな課題についてはこう述べます。
大事なのは先を急ぎすぎないこと。多くの学校で実地学習がうまくいかないのは先を急ぎすぎるから。目的や目標を見定めず、自分が何の能力を伸ばそうとしているかをあまり自覚しないままスキルの向上に励もうとする人が多い。
大事なのは、頭を働かせ、戦略を立て、熟考し、練習して発展させ、関係づけと再考を行うこと。それをすれば、深い学びを得ることができます。
さぁ、僕を含め、学びを深めたいすべての大人や子どもたちよ、
ぜひとも今日からこの本で得た知識を役立ててみましょう。
自分のために。ひいては、世界のために。
あ、ちなみにこの本には、学ぶ側だけでなく、それをサポートする保護者や先生たちに向けた「ツール」の説明も載っております。僕も大変勉強になりました。
今回はここまででだいぶ長くなってしまったので、それについてはまたいつかじっくりご紹介したいと思います。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
ブログ書くことも良い学びだね。
0コメント