先日、ある生徒がこう言いました。
「寝てない自慢って、もう時代遅れですよね」
思わず感心しました。まさにその通りだからです。
「昨日3時間しか寝てない」「徹夜で勉強した」かつては、がんばりの証のように語られていた言葉。
でも今、科学はまったく逆のことを教えてくれています。今日は、最新の研究も交えながら、睡眠と学びの関係について真面目に書いてみます。
一晩寝ないと、脳は「酔っ払い」と同じになる
これは有名な研究の話です。
1997年、科学誌『Nature』に掲載された実験があります。起きている時間が17時間、22時間、24時間と延びるにつれ、作業成績の落ち込みは、血中アルコール濃度0.05%、0.08%、0.10%の状態とそれぞれ同程度になることが示されました。
朝7時に起きた人なら、夜中の0時にはもう「ほろ酔い」レベル。徹夜して翌朝のテストを受けるのは、お酒を飲んで試験会場に行くようなものです。
ちなみに、日本では、呼気中アルコール濃度0.15mg/L(血中でおよそ0.03%程度)で「酒気帯び運転」になります。 徹夜明けの脳は、それを上回る状態だということです。
公平のために補足すると、後の別の研究者による研究では、高いアルコール濃度との比較は過大評価だった可能性も指摘されています。ただし0.05%相当の低下については支持されています。
いずれにしても、「寝ないでがんばる」は、がんばっているつもりで脳の性能を落としている。これは揺るがない事実です。
大事なのは「前の晩」ではなく「毎晩」
「じゃあ、テスト前日だけしっかり寝ればいいの?」
そう思った人もいるでしょう。答えは、NOです。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究では、学生にウェアラブル端末を配り、睡眠と小テストや中間試験の成績を比較しました。質が良く、長く、規則正しい睡眠ほど、成績が良い傾向がありました。
注目すべきはここです。テスト前夜の睡眠と成績には関係が見られず、テスト前の1か月間や1週間の睡眠の長さと質が、良い成績と結びついていました。睡眠の指標で、成績のばらつきのおよそ25%を説明できたそうです。
さらに、ある時刻(この学生たちの場合はおおむね深夜2時)より後に寝る人は、合計の睡眠時間に関係なく成績が振るわない傾向がありました。つまり、睡眠は「一夜漬け」できない。毎日の積み重ねがものを言うのは、勉強と同じなんです。
寝不足は、記憶を「間違える」
睡眠不足の怖さは、覚えられないことだけではありません。
シンガポールの研究では、16歳前後の高校生も含む若者を対象に、5時間睡眠を7晩続ける実験を行いました。すると睡眠不足のグループは、よく眠ったグループに比べて、後から与えられた誤った情報を自分の記憶に取り込みやすくなっていました。
勉強に置きかえてみてください。「覚えたつもり」が、実は間違って覚えている。テストで一番怖いパターンです。
また、動物実験の段階ではありますが、思春期にあたる時期のマウスを2週間睡眠不足にすると、長期記憶の障害が大人になっても続いたという報告もあります。成長期の睡眠は、今だけでなく未来の脳もつくっているのかもしれません。
大谷翔平も、睡眠を「練習」している
世界最高の野球選手、大谷翔平選手。
彼の睡眠へのこだわりは有名です。最低でも1日10時間眠り、寝具メーカーと契約してマットレスや枕をカスタマイズしているといいます。
試合後に眠れないときはどうするのか。その質問に大谷選手は、寝る時間や時差をある程度計算して、そこから逆算して就寝時刻を決めると答え、飲み物やマットレスなど環境を一定に保つことも挙げていました。
あれほどの努力家が、睡眠を削るのではなく、睡眠を設計している。
一流の人ほど、眠ることを「サボり」ではなく「準備」と考えているのです。
HOMEからの提案:今日からできる3つのこと
① 寝る時刻を「逆算」で決める
大谷選手と同じです。起きる時刻から8時間さかのぼった時刻を、自分の「締め切り」にしましょう。
② 平日と休日の差を小さくする
MITの研究が示したのは「規則正しさ」の大切さ。休日の寝だめより、毎日同じリズムが効きます。
③ テスト前こそ、いつも通り寝る
前夜の一夜漬けで取り戻せるものは、ほとんどありません。勝負は、その前の1週間、1か月です。
ここまでくどくど説明してきましたが、「寝てない自慢は時代遅れ」なんてこと、もうみんな、わかっていますよね。 睡眠は、勉強の敵ではありません。 勉強の、いちばんの味方です。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
よく寝よう。 そして、よく学ぼう。
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