先日のアジア大会で、17歳の大橋信選手が男子200m平泳ぎの世界新記録を出しました。
それまでの世界記録を0秒65も縮めたというのですから、競泳の世界では「とんでもない更新」と言っていい出来事です。
ただ、私が注目したいのは記録そのものよりも、彼のその歩みです。
大橋選手の身長は169cmで、世界のトップスイマーの中ではかなり小柄な部類に入ります。平泳ぎは一般に、腕や脚が長い選手が一回のストロークで大きく進み、少ないストローク数で記録を伸ばしていくのが有利だと言われてきた種目です。つまり「背が高いほうが得をする」というのが、半ば常識のように語られてきたわけです。
では、大橋選手はどうしたのか。
彼は大きな選手の真似をするのではなく、ストロークの回数を増やし、速いテンポで泳ぎ続けるという、自分の体に合ったやり方を磨き上げてきました。50mあたりのストローク数は他のトップ選手より多いのですが、そのぶん一回一回を素早く、無駄なく回すことで、スピードを落とさずにゴールまで泳ぎ切っています。
ここで考えてほしいのは、このやり方を貫くことがどれだけ難しいかということです。周りのトップ選手が「大きく、ゆったり」泳いでいる中で、自分だけが違う泳ぎ方をしていれば、「本当にこれで勝てるのか」「やっぱりみんなと同じにしたほうがいいのではないか」と迷う場面は何度もあったはずです。それでも自分の強みを信じて練習を積み重ねた結果が、世界記録という形で証明されたのだと私は思います。
勉強にも、まったく同じことが言えます。
塾で生徒を見ていると、「あの子は頭がいいから」「自分は覚えるのが遅いから」と、最初から自分に向いていない理由を探してしまう人が少なくありません。たしかに、一回聞いただけで理解できる人もいますし、それは平泳ぎでいう「一回のストロークで大きく進める人」に近いかもしれません。
でも、一回で進める距離が短いのなら、回数を増やせばいいのです。一度で覚えられないなら三回、五回と繰り返せばいいし、応用問題でつまずくなら基本問題をテンポよく何周も回して土台を固めればいい。
進み方が人と違っても、ゴールに早く着いたほうが勝ちなのは勉強も水泳も同じです。
そして、大事なのは、その「自分のやり方」を途中で疑いすぎないことです。成績がすぐに上がらない時期は必ずありますし、友達の勉強法がよく見えてしまうこともあるでしょう。もちろん、うまくいかないやり方を見直すことは必要ですが、自分に合った方法を見つけたなら、結果が出るまで信じてやり抜くことが、最後に大きな差になります。
大橋選手の世界記録は、「条件が不利だから無理」という考え方が、必ずしも正しくないことを教えてくれました。自分の弱点を嘆く前に、自分にしかできない進み方を探してみてください。そして見つけたら、それを信じ抜いてみてください。
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自分の答えを見つけて正解にするのは自分自身。
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