面白い×面白いはやっぱり面白い!「映画ドラえもんのび太の月面探査機」読書感想文!後半はネタバレ有


どちらも美味しいからといって、コーラにカレーを入れてはいけない。


どちらも楽しいからといって、ディズニーランドにUSJのグッズを持って行くのはいけない。


でも、ごく稀に、そんな「すごい!」と「すごい!」がくっついて、「さらにすごい!」が生まれることがある。


今回は、まさに超弩級のそれについてのお話だ。


なんたって、あの「ドラえもん」と、『かがみの弧城』などで知られるファンタジーの名手辻村深月さんがコラボしたんだから。


ここから、その本についての熱い想いを語っていこうと思うのだが、まずはネタバレにならない程度の当たり障りない感想を述べたい。


間違いはない。


両者のどちらかが好きという方であれば、必ず楽しめるはずだ。


あんまりこういうことを言うと怒られるかもしれないが、まずは立ち読みでもいいから、「プロローグ」を読んで欲しい。ハマる人はそこでハマる。


そのままワクワクを引き連れて、一気に最後まで読んでしまえる。


オススメである。ポスターもいい。


どうか、ドラえもん達の初の月上陸の物語を楽しんで欲しい。



【ここからネタバレ有】「映画ドラえもんのび太の月面探査機」読書感想文




『道が違っても、同じ光を見上げている』



昔住んでいた家には、何冊か、漫画『ドラえもん』があった。


巻も飛び飛びに並んだその単行本たちの中に、たしか「異説クラブメンバーズバッジ」についてのお話があったように思う。今回、記憶の片隅にあったそのひみつ道具が、大役を務めると知って、胸が踊った。同時に、驚いた。どちらかといえば地味な道具だと感じていたから。


今回の著者の辻村深月さんは、もともとドラえもんの大ファンだと言う。『著者インタビュー』を読めば一目瞭然だろう。なるほど、たしかに、と思えるような箇所を、にわかドラえもんファンの僕も本書の中でいくつか見つけることができた。前述のバッジだけでなく、場面やひみつ道具の数々に、原作や過去の作品へのオマージュみたいなものが散りばめられていた。


そんな往年のドラえもんファンも楽しめる仕掛けとは別に、大切にされているテーマはすごくシンプルで、とってもわかりやすいものであった。


つながりの大切さ。


それはときに「友情」と呼ばれたり、「愛」っていわれたりする。


つながりの名前は様々でも、原理は一緒だ。人は、「誰かのために」という想いがあるとき、強くなれる。


普段はダメダメなのび太も、暴力的なジャイアンも、嫌味ったらしいスネ夫も、お風呂大好きしずかちゃんも、時折間抜けなドラえもんだってそう、僕らだって、誰もがそうだ。


家族のために、友達のために、大切な人のために、強くなれる。


だってさ、人は、人と人の間で生きている。つながって、暮らしている。だから、「人間」って言うんだもんね。そんな人間である僕らは、やっぱり「人のために」エネルギーを発揮できる生き物なんだろう。まぁ、ドラえもんはロボットだけど。


一番好きなシーンは、ポスターにもなっている、各々が友達を助けに行くかどうか地球で考えるシーンだ。


闇の向こうに待ち受ける、強大な敵。恐怖。残していく大切な人たちのこと。葛藤を抱えながら、各々が自らで答えを出す。


友達を助けに行こう。


そんな想いに震える。決意に胸が熱くなる。それはきっとどこかで「そうしたい」「そう在りたい」と、僕らが思っているからではないか。そんな想いを、彼らが体現してくれるから。


そこからは怒涛である。というか、冒頭からラストまで一気読みである。


著者インタビューの中で、辻村さんがこんな話をしていた。

子どもも大人もみんな、『ドラえもん』が好きなんですよね。だから普段の小説を書くときと同じよう、年齢に関係なく読んでくれる人が読んでくれたらいいなと思って書きました。


そう、子ども向けだからといって手加減なし、遠慮なしの圧倒的な表現で、僕らを素敵な世界へと引き込んでくれる。


もしも子どもが読んだとき、わからない言葉が出てきたら、その言葉の意味を前後の文章から想像してもらいたいですね。そうやって言葉を覚えてくれたらうれしいです。私自身、子どものときにそういう読み方をしてきたように思いますし、漢字もそうやってだいぶ覚えた。


楽しく学べる教材にもなり得るってことだ。さすが「ドラえもん&辻村深月」の最強タッグである。


改めてだが、これはまるで夢の世界だ。ファンタジーの名手辻村さんが彩る世界の中で、ドラえもん達が駆け巡る。登場シーンにも注目して欲しい。それぞれのキャラクターの絵が頭に入っていることもあって、イメージが自然に膨らんでくる。思わず微笑んでしまう。


僕だけじゃないよね。きっとあなたも、読み始めたらすぐにわかる。昔からよく知っている、懐かしい友に出会うような感覚。


そう、生きている世界が違ったとしても、僕らはいつだってつながっているんだ。ずっとずっと前から。


心の中にはいつも彼らがいて、本当に大切なことを教えてくれる。


誰かのために人は強くなれること。


大切なものを大切にする大切さ。


たとえ、遥か遠く離れていても、


僕らが、つながって生きているということ。



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勉強犬

「第二の家」学習アドバイザー。
世界中に「第二の家」=「子どもたちの居場所であり未来を生きる力を育てる場所」を作ろうと画策中。元広告営業犬。学生時代は個別指導塾の講師。大手個別指導塾の教室長(神奈川No,1の教室に!)・エリアマネージャーを経て、2015年ネット上で「第二の家」HOME個別指導塾を開設。2019年藤沢にHOME個別指導塾リアル教室を開校。