提出前に慌ててやる宿題ほど、効果が落ちるものはありません。
そもそも宿題の意味とは、多くの場合、授業でやったことの復習のはずです。授業でやった内容を自分一人でもできるのか、忘れていないのか、確認と定着の意味あいを持つものです。
これを雑にやってしまうと、ほとんど忘れたまま次の授業に臨むことになりますから、次回の授業で苦しむ羽目になります。これがきちっとできていないことから、やった単元の内容が定着せず、なかなか先へ進めない子もいるでしょう。
「先生、宿題忘れました」と平気で言う子や、「宿題面倒臭い」と言う子は、実は勘違いをしています。
そう、子ども達の一つ目の勘違いは「宿題はやらないほうが楽」ということです。怒られるし、目標は達成できないし、成長できないしで、実はいいことありません。
本当は「宿題をやったほうが楽になる」のに、いっときの楽さに目を奪われて、宿題をやらないという選択をしてしまうのです。
宿題をやらずに、あとで苦しむのは自分なのに、自分の内にいる悪魔に負けてしまうんですね。
そして、そのうちに、おかしなことを言い出します。宿題をやらないから定着しないのに、「俺は勉強できないから」「どうせ私は無理」「すぐ忘れちゃう」と言い出すのです。
宿題をやれば、理解が進む。理解が進むから、できるようになる。点数が上がって、選択肢が広がって、目標が達成できる。
宿題をやれば、理解が進む。理解ができているから、先へ進める。世界は広がって、知識欲は刺激されて、楽しくなってくる。
宿題をやれば…と、やったほうがいい理由なんていくらでもあるのに。
まずはこのことをしっかり子ども達に自覚してもらわねばなりません。もちろん、自戒を込めて言えば、宿題の意味を伝えるのは、宿題を出す者の役目の一つでしょう。意味のわからないことをやりたくないのは、大人だって同じですからね。
続けて、二つ目の勘違いを発表しましょう。
それは、「宿題をコツコツやるのは大変」という勘違いです。
僕が見てきた多くの勉強が苦手な子達のほとんどは、宿題をギリギリにやります。
まるで「ギリギリにやりなさい」という呪いをかけられているかのように、それはもうわかりやすくギリギリにやってきます。ノートを見れば一目瞭然です。
まぁ、気持ちはわからなくもないです。大人だって後回しにしちゃうことって多々ありますからね。
でも、実はそれは、コツコツやるよりも、強めに自分に負荷をかけて宿題に取り組んでいるということです。
勉強が苦手な中、宿題という強敵に、さらに負荷をかけてやるなんて偉い!君は悟空か!と言いたいところですが、ほとんどの場合、ギリギリ戦法は長くは続きません。大体が宿題忘れへとつながっていきます。その理由を大きく分けて3つほど挙げておきましょう。
- 予期せぬことが起こり時間が確保できない
- 間が空き、記憶が曖昧で問題が解けない(どこをやるか忘れてしまっているパターンもあり)
- 0からやる気を出すのが大変で、やる気が起こらない
これをひっくり返せば、そっくりそのまま「宿題はコツコツ早めに手をつけておいたほうがいい理由」になり得ます。
①は、お仕事でもありがちなやつですよね。人間生きていれば、予期せぬことだらけです。だから何事もすぐやっておいたほうが安心です。成長の機会が増え、わかりやすいように端的に言えば、怒られる機会(自分の時間を無駄にする機会)が減ります。
まぁ、だから宿題早めにやっておこうぜということです。早めにやることをやっておけば、予期せぬことが起こっても余裕で対応できます。
余談ですが、この「先にやることの大切さ」を知った子は、成績が上がっていきやすいです。ただ、これを理解するのには時間が必要です。経験を繰り返して、自身で何度も何度も失敗を重ねて、理解しなければいけませんからね。小学校低学年のうちから自分で考えさせて身につけたい考え方ですね。
②が最も大切な部分です。
せっかく苦労して覚えた覚えた内容も、時が経てば忘れます。
脳は、自分の人生に無関係と思ったものを容赦なくどんどん捨てていきます。もう断捨離にハマったお母さんのようにガンガンいらないものを捨てます。
ですから、捨てられる前に「いや、それ大切だから!」とわからせてあげる必要があります。そう、それが「使ってみせる」ってことですね。
折角授業でやった内容を断捨離ママに捨てられないように、なるべく早く「これ使うんだぞ」というのを宿題を使って示しておきましょう。
それに、早めに手をつければ、あんまり忘れていないので、後でやるよりスラスラ、楽ちんにできます。
③は、気持ちのお話です。
掃除で例えるとわかりやすいですかね。家中が汚かったら、そもそも掃除する気が失せますが、一回ピカピカになると、「ちゃんと掃除しなくちゃ」という気が湧いてきますよね。でも、しばらく放置するとまたやる気は消えていきます。
まだピカピカのうちに、次の掃除をしてしまいましょう。気持ちいいはずです。
また、基本的にやる気は何かをやると出てきますから、宿題に手をつけてみると、「やってやろう」という気が高まります。
ギリギリのタイミングで目の前に積まれた課題に取り組む心のパワーを出すよりも、早めにチャレンジしてやる気も一緒に高めちゃったほうが、結局楽ちんにできますよ。
以上を踏まえると、宿題はなるべく早く手をつけたほうがいいとなりますが、「え、逆に次の時に忘れちゃいそう」や「頑張った後にすぐまた一気にやるのしんどい」という方もいらっしゃるでしょう。
そんな方に、いや、すべての人にオススメしたい実はもっと楽ちんな方法があります。
それは「分けてやる」ということ。
提出日と分量を踏まえて、まずは中身を分けてしまいます。1ページずつでも、大問1つずつでも、問題数ごとでもいいですね。なるべく区切りのいいところで分けます。
最初の一回はとにかく早くして、脳にその記憶を捨てられるのを防ぎ、同時にやる気も高めます。
2回目、3回目は自分が決めたペースで行います。コツは能動的にやること。やらされると面白くありません。
この「分けてやる」効果は大きく分けて3つ。
- 記憶が定着する
- 物理的にも精神的にも楽
- 習慣ができる
記憶は「思い出す」度に強化されますから、一回で全部やるより分けてやるほうが効果的です。
何より、一回の分量が減るから、物理的にも気持ち的にも楽々取り組めます。やったね。
この方法が身につくと、習慣ができ、取り組む際にかかる心の負担がぐっと少なくなります。習慣の凄さは「冷たいうどんにふっとした話」でも語っています。
この「一番楽な宿題のやり方」を身につければ、だんだん宿題が嫌なことじゃなくなります。
それって、すごいことだよね。
「宿題、大事だよね。いいよ、言われなくても自分で考えてやるからさ。そのやり方や内容が大丈夫かどうかだけチェックしてよ、先生」
そんな子が勉強できないわけがありません。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
「やらない」ってのは、決して楽ってことじゃないんだよ。
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