3月のある土曜日の最後の授業が終わったタイミングで、
いつも通り出入り口にて生徒たちを見送っていると、
一人、ものすごく不安な顔と不安オーラをまとっている子を見つけました。
あまりにもわかりやすくて少し笑ってしまいました。
新中学三年生のAくんです。
「今、時間平気?」
私が聞くと、彼は弱々しくうなずきました。
いつも元気なA君ですから、これは重症です。何があったのでしょう。
面談席に通します。
席に座っても、
引き続きどんよりした空気を身にまとう彼がぼそりと言いました。
「受験への危機感が半端ない」
おっと、これはむしろいい病か?
しかし、よくよく話を聞くと、
焦ってばかりで色々手についていない様子。
これは折角の危機感を上手く使えていない、
通称「気持ちだけで行動が伴わない病」ですね。
人は、「希望」と「危機感」で動く。
しかし、その「危機感」が大きすぎると、この病が発症します。
対処法は、話を聞いて、必要であれば適切なアドバイスをして、
危機感をいい感じに調整してあげること。
今回のA君の場合、話を聞きながら整理すると、
「志望校に内申が足りていないこと」が一番の不安だということが判明しました。
まずはその不安を和らげてあげる必要があります。
そうです、奴の出番です。
二次選考!!!!!
(神奈川県公立高校入試の仕組みは以下の記事でどうぞ)
「別に内申が0でもその高校に行けないわけじゃないよ」
「実際に過去に内申が殆ど無い状態からその高校に受かった先輩が居るよ」
そんな情報を与えると、
A君の目に光が灯ってきました。勝負はここからです。
A君の口数が増えます。まだまだ不安があるようです。
「やることが多すぎて何をすればいいのかわからなくなる」
「へ?それさ、前からずっと言ってるじゃん」
伝えているつもりでしたが、どうやら私の説明不足だったようです。
まだ時間が大丈夫ということで、改めて細かく詳しく説明します。
今年度の勉強の進め方。
入試問題の傾向と対策。
入試から逆算して、各々の時期に何が必要か。
科目別の勉強の仕方。
そして、今やるべきこと。
個別指導は、目的や目標達成までの近道を通れることが強みです。
その子の得意不得意に合わせて、オリジナルの道が創れるからです。
A君用の近道を、最近ビジネスに興味があるという、
A君用に少し格好良いビジネス用語を使って説明します。
名付けて「選択と集中」大作戦。
選択と集中とは、ジャック・ウェルチさんという有名な経営者の考えたビジネス戦略です。
それを一・二年生の復習や次のテストに向けた各科目の勉強にてんてこ舞いになっている
A君が活用するとすると、
「今やるべき勉強単元を選択し、そこにエネルギーを集中する」
ということになります。図で言うとこんな感じ。
では、今選択し集中すべき勉強とは一体何でしょうか。
内申点はまだ目標とする高校に足りていないA君ですが、
最近の模試では偏差値を大きく上げ、
目標校まであと僅かという状態にまで成長しています。
きっと、目標にちょっと届きそうだと思ったところで、
二年生までの間もっと頑張っておけばよかったという大きな後悔と、
この先の俺は大丈夫なのか?という不安が彼を襲ったんですね。
神奈川県の入試の仕組みでは、三年生の内申が二倍されますから、
A君を落ち着かせるために二次選考の説明はしましたが、
まだまだ一次選考を諦めるには早すぎる時期です。
色々な状況を踏まえて、
私がA君にオススメした「選択と集中ゾーン」は、
「数学と英語の中間テスト範囲」です。
この3月と4月は積み重ね科目である英語と数学に力を注ぎ、
理科と社会と国語は少し後回しにしようという話です。
それらのテスト対策は、今のA君の状態であれば、
学校の授業が始まって少ししてからのスタートでも遅くはありません。
今は、英語と数学の次のテスト範囲を完璧にすること。
それが私がA君に授けた「選択と集中」大作戦です。
いや、本当は前回の期末テストが終わってからすぐ伝えてたつもりだったんですけどね。。
A君が通う公立の◯中学校の次の中間テストは、例年通りでいけば、
数学は確率と計算単元、英語は過去分詞形を使う文法がメインの範囲です。
正直、テストの点が上げやすい範囲です。
そこでテストの点数を爆上げすれば、A君の自信にもなり、
一・二年生の復習にもより一層身が入ることでしょう。
中間テストの得点で、やれば出来るを実感してもらい、
心身ともに最高の状態で、夏の講習へ。
それが私の思い描くA君の受験必勝法です。
この「自信」や「達成感」、「納得感」というやつが、
受験には大きく関わってきます。時には結果をも左右します。
受験までの道のりのどこかでそれらをしっかりと得ること。
今回の中間テストはその大きなチャンスとなります。
話がここまで来ると、
A君は身を乗り出し、具体的な勉強法や中身についての質問が多くなりました。
どうやら危機感がちょうどいいバランスで落ち着いたようです。
ここまでくれば一安心ですね。
「お前なら大丈夫だよ。一緒に頑張ろう」
しっかりと鼓舞して、原監督ばりのグーパンチで面談席での話を終えました。
最後には、「これって部活でも活かせそうですね」
なんてのんきな言葉を残して彼は去って行きました。
忘れなければな。しかし、悲しいかな人は忘れる生き物。
今でも毎回A君が来る度に確認していますが、
この面談の次の授業日には、
「選択と集中は順調?」といった私の質問に一瞬きょとんとした顔を見せました。
繰り返しが大切です。
しかし、今回の件で改めて私も反省です。
伝えたと思っていても、相手に伝わっていなければ、意味はない。
教訓にしようと思います。
もしも今、
「気持ちだけで行動が伴わない病」にかかってしまった受験生は、
信頼できる先生に相談に行きましょう。なるべく早く。
あなた専用のスペシャルな「選択と集中」大作戦が、
今か今かとあなたを待っているかもしれません。
本日もお越し頂き、ありがとうございます。
こんな面談が教室長の楽しみややりがいだったりするのです。
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