神奈川県公立高校入試問題の攻略シリーズです。
大問先生と三人の生徒(偏差値60以上のAくん、偏差値50のBさん、偏差値40以下のCくん)の掛け合い形式で、入試問題の分析と対策を行います。
今回攻略する大問は、国語の古文!
早速参りましょう。大問先生、よろしくお願いします。その他の入試大問解説シリーズは下記のリンクからどうぞ。
今回の相手は国語の古文!大問の傾向と位置付け
先生「はい、早速始めまーす。今回対策する大問は、国語の古文。古文の大問は、昔は最後の大問として出題されることが多かったけど、最近は問2に定着したね。高校生の授業で扱う古典とは違って、中学生レベルの古文は文法についてはあまり触れません。だから、難易度もそこまで高くなく、対策はしやすい大問になりまーす。4点✕4問で配点も大きいので全問正解を狙いましょう」
C「えー、でも古文って学校じゃ全然やったことないよー」
先生「だからこそ、対策がしやすいの。中学校で深くは触れていない分、入試に深い問題は出てこないってことだからね。高校の古典で触れる(覚えるのが大変な)動詞の活用や文法は気にせず対策ができるわ。それに、やってみるとわかるけど、古文は基本的に話にオチがついているから慣れてくると面白く読めるはずよ。とりあえずは過去の3年分の入試問題を見てみましょう。まずは正解不正解を気にしなくていいから、ざっと見ていくわね」
B「不安も大きいけれど、なんだか楽しみ」
先生「全問正解できるかどうかはもちろんあなた達次第だけど、一つだけ言っておく。私、対策も失敗しないので」
国語古文の歴史を振り返る
先生「まずは2015年度(27年度)の問題からみていくよ」
2015年度(27年度)の問2古文問題
「27年度の問題の答えと正答率は以下の通り。配点はすべて4点です」
(ア) 1(正答率66.6%) 内容把握問題(語句説明)
(イ) 4(正答率73.0%) 内容把握問題(理由)
(ウ) 2(正答率72.8%) 内容把握問題(意味)
(エ) 3(正答率75.2%) 本文内容一致問題
先生「夫がズルをして儲けていたが、妻がそれをたしなめて、改心したら家は余計に繁盛したというお話ね。基本的な登場人物は、(夫)周茂才さんと(妻)張氏。(ア)や(イ)や(ウ)は語句の説明や意味を問われている問題だけれど、内容が把握できていないと正解は難しい。逆に内容が理解できていれば正解できるから、古文の練習は、単語の暗記よりも内容の把握に重きをおくべきよ」
A「注釈で大体前半の話が掴めたからラッキーでした」
B「完璧を求めて読むと止まるけど、なんとなくでいいと思うと読めるのが不思議」
先生「お、二人ともいいこと言いました。もちろん古文の文法や単語を知っておけば知っておいただけ損はないけれど、実は入試レベルの古文であっても、注釈や日本語訳を参考にしたり、慣れたりすればなんとなく読めちゃうものなの。詳しい【慣れ方】は後ほど解説するわ。次に28年度の問題もみてみましょう」
2016年度(28年度)の問2古文問題
「28年度の問題の答えと正答率は以下の通り。配点はすべて4点」
(ア) 2(正答率88.3%) 内容把握問題(理由)
(イ) 1(正答率78.0%) 内容把握問題(語句説明)
(ウ) 4(正答率65.6%) 内容把握問題(人物説明)
(エ) 3(正答率78.3%) 本文内容一致問題
先生「撰集抄という鎌倉時代後期の説話集からの出題ね。僧がある女に着るものを何度かねだられて、さすがに三度目で怒って、そしたら逆ギレされて、僧が「ああ、これは仏が私を試したんだ。私の心はなんて狭いんだ」と反省するというお話。最後には語り手の感想が書かれています。注釈は少なめだけど、どう?読めた?」
C「めっちゃ良い奴だな、聖人!」
先生「お、呼び方は置いといて、読めてるじゃん。その調子。どんどんいくよ、次は29年度!」
2017年度(29年度)の問2古文問題
「29年度の問題の答えと正答率は以下の通り。配点はすべて…」 ABC「4点!」
(ア) 1(正答率84.9%) 内容把握問題(意味)
(イ) 3(正答率76.1%) 内容把握問題(語句説明)
(ウ) 4(正答率79.0%) 内容把握問題(意味)
(エ) 2(正答率65.9%) 本文内容一致問題
先生「今回は江戸時代にベストセラーなった北越雪譜からの出題。北越雪譜とは、その名の通り雪国の話がメインの書籍です。ここでも、注釈と所々の日本語訳を使って読んでいけばどんな文章かは読み取りやすいんじゃないかな」
C「鶴の恩返しかと思ったら違ったぜ。農家の主人、良い奴だな」
A「毎年(ア)〜(ウ)は質問が違いますが、(エ)は必ず本文内容一致の問題なんですね」
先生「出題の感じが掴めてきたら、早速対策法について説明しましょう」
大問先生による国語古文対策勉強術式
先生「端的に言うわね。古文読解は【主語判定】と【注釈使い】、【古文問題を繰り返し解くこと】が対策のポイントよ。これを意識していればそのうちに【慣れ】が身につくわ」
C「主語?」
先生「主語とは、文の主人公のこと。動作や話をしているのは【誰】ってことね。古文の文中ではこの主語が省かれていることが多いから、一つひとつの動作や言葉が【誰】のものなのか注意しながら読んでいくことが大切よ。出てくる登場人物には丸をつけて登場人物を把握して、誰の動作や言葉か把握しながら読み進めていきましょう。また、文中で同じ人の呼び名がコロコロ変わったりするけれど…」
A「大体は注釈に書いてあるから最初にみておけばいいんですね。例えば28年度の問題も注釈に『この上人=「瞻西上人」のこと。「上人」「聖」も同じ人物』とありますもんね」
先生「その通り。だからまずは注釈に目を通して、全体がどんな話なのかという情報を持って読み始めましょう」
B「普段の練習はどんな風にすればいいですか?」
先生「古文にたくさん触れることね。今のところ古文はきちんと対策すれば満点が狙える大問。注釈や日本語訳も多い高校入試レベルの古文は、読めるようになるまでそんなに時間がかからないわ。全問正解を狙う上での練習も他の科目や勉強を圧迫するほどの時間はかからないと思うから、読めるようになるまで古文に触れ続けましょう」
C「でも最初、見た瞬間にうわってなるんだよな」
先生「慣れるまでは音読をするのがオススメよ。いくら間違ってもぎこちなくてもかまわないから、とりあえず読んでみましょう」
B「とりあえず、でいいんですか」
先生「とりあえずでいいの。これはスポーツとも似てるわね。ルールブックをガッチリ読んでからバスケをするより、なんとなくでもバスケをしてからルールを学んだほうが上達は早いでしょ?」
ABC「確かに!」
先生「独特の雰囲気やルールがとっつきにくくさせるけど、リズムがつくと古文って気持ちよく読めるものなの。その中で意味が不明な言葉や言い回しは印をつけておいて、現代語訳で確認しましょう。最初はわからないことだらけだと思うけど、ここが成長期よ。名付けて【音読レベルアップ法】」
C「そのままやん」
B「教材はどんなものを使えばいいですか?」
先生「この最初の【音読レベルアップ法】に使うのは教科書の古文でいいかもね。問題集なんかを使ってもいいけど、高校受験に対応する古文の問題は一つの教材でそんなに多くはないから、いざ本番の練習で使う教材はとっておきましょう」
A「本番に向けた読解の練習はどんな教材でやるのがいいですか?」
先生「今は市販の教材のレベルも上がっているけど、やっぱり塾教材がオススメね。県トレや極める神奈川などの入試問題レベルが載っている教材で繰り返し解くと感じが掴めるわ。【問題を解く】(主語判定や注釈に気をつけて!)→【丸付け】→【直し(答えを見ずに考える)】(その中でわからない言葉や読み取れない箇所には印をつける)→【日本語訳確認】(印をつけた部分の確認が君のレベルを上げる!)→【説明】(なぜその答えになるのか自分や他人に説明できたら終了)の流れを繰り返しましょう。それがまだ難しければ解けなかった問題で【音読レベルアップ法】を実践」
C「古文の大盛り丼や〜」
B「そうやって【慣れ】が生まれていくんですか?」
先生「そう、古文を繰り返し解くことで生まれる【主語判定と注釈使いの上達】と【古文リズム感&古文語彙力UP】。それが入試古文を攻略する【慣れ】の正体よ」
ABC「御意!」
先生「それでもまだ不安って人は以下に文法のテクニックと有名単語をまとめておいたので読んでおいてね。ま、中学生の時点でこれらの勉強にガッツリ時間を使うのはあんまりオススメしないけど」
A「うわ!古文のルールって奥が深いんだなぁ」
先生「そう、とっても深いのよ。だから時間がかかるの。高校に行ったらのお楽しみね。ちなみに、高校の【古典】には古文と漢文が含まれているわ。高校の古典は英語や数学と同じ積み重ね科目の要素が強いから、コツコツと勉強することをオススメします。中学の古文がいかにシンプルかわかってくれたかしら」
ABC「はーい!ありがとうございました!」
C「先生!古文頑張るから僕に子分をください」
先生「致しません!ちょっと、上手いこと言ってやったみたいなドヤ顔しない!」
〜大問先生が教える中学古文テクニック〜
①簡単な文法を把握する
先生「シンプルに書き記しておくから参考程度にね」
・文に「や」「か」がつくと訳が疑問文っぽくなる。
(例)かへすがへすゆかしく覚えてはべるぞや(かえすがえすも心が惹かれるのではないでしょうか)
・文に「いか」がついていたら訳が「どう…?」って文になる。
(例)あやし、いかにするにかあらむ(変だ、どうするのであろうか)
・助動詞の把握
(例)「ず」を見つけたら訳が「〜ではない」、「む」は訳が主語で変わる「(主語が一人称)~しよう」、「(主語が三人称)~だろう」、「(主語が二人称)~がよい」、「~というような」
・かなづかい
単語の頭文字以外の「はひふへほ」は読み方が「わいうえお」になる。「ゐ」は「い」、「ゑ」は「え」。「くわ」「ぐわ」は「か」「が」と読む。「あう」の音は「おー」となる。例えば「かふ」は「こー」、「せうと」は「しょーと」。「む」は「ん」と読むものがある。
・係り結び
文中に「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」がある場合、文末が終止形でなくなる。例えば「花見す」が、「ぞ」が入ると「花見ぞする」というふうに連体形になる。
また、「こそ」は、「花見こそすれ」と已然形になる。
②有名単語を覚える
先生「現代と同じ音でも意味が違う言葉に注意よ」
あく…満足する。
あわれ…しみじみとした感動。
いかに…なぜ。どのように。
いたづら…むなしい。
いと…とても。
おどろく…目を覚ます。
おぼしめす…お思いになる
かかる…このような。
かたはらいたし…恥ずかしい。
くちをし…残念だ。
げに…なるほど。
たまふ…お与えになる。お〜になる。
なかなか…かえって。むしろ。
ふみ…手紙。
まほし…〜したい。
やがて…すぐに。そのまま。
よしなし…仕方がない。
をかし…趣がある。
③古文の価値観を知る
古文の中で価値があるとされるもの…「をかし(趣がある)」、「あはれなり(しみじみとした感動)」、「粋であること」、「風流」、「機転・機知」、「気配り・人情」、「無常観(世の中はすべて移り変わる)」「神や仏」
先生「繰り返しになるけど、これらの知識は持っておくにこしたことはないけど時間をかけすぎないことね。高校入試の古典は日本語訳も多いから、ひたすら入試古典レベルの問題を解くほうが効率的かもしれないわ。前述の通り、面白い話が多いしね」
C「ちょっと面白いと思ったら嫌じゃなくなってきたかも」
先生「そう。興味と目的をもつことが勉強の第一歩よ。そうすれば脳が勝手に知識を吸収していってくれるわ。さぁ、全員満点を目指しましょう!」
ABC「御意!」
先生「あ、一つだけ注意点。近年、国語の平均点はずーっと高いから、今年以降で何らかのテコ入れがある可能性もあるわ。【予期せぬ事は起こる】と肝に銘じて練習に取り組みましょう」
ABC「御意!」
先生「それ流行ってるの?」
目の前の生徒を救うというポリシーのもと、圧倒的な腕で数多くの受検生を救いながら、難問良問はびこる入試界に鋭いメスを入れてきたフリーランスの天才講師・大問未知子。群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、HOME個別指導塾公認講師のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器…
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
古典は全問正解狙いたいところ。急に記述になることはないよね、教育委員会の皆さん。
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