神奈川県公立高校入試学力検査問題の攻略シリーズです。
今回のテーマは「理科の植物」。
大問先生と三人の生徒(偏差値60以上のAくん、偏差値50のBさん、偏差値40以下のCくん)の掛け合い形式で、入試問題の分析と対策を行います。大問先生、よろしくお願いします。
今回の相手は理科の植物!傾向と位置付け
大問先生「はい、こんにちは。今回対策する大問は理科の生物でーす。多くの公立中学校では1年生や2年生で習った分野ね。覚えているかしら」
C「あ、そんなの決まってるんだ。すっかり忘れた」
A「理科は大きく分けると、三年間で【物理】【化学】【生物】【地学】の4分野を一つずつやるので、12単元(+環境)あるんですよね」
先生「そう、詳しくは学習系統図を見てちょうだい。まぁ、とにかく今回は植物を完璧にします。過去の出題としては…」
B「あ、それは私が調べてきました。例えば、2015年度は問3の小問、2016年度は問7の大問、2017年度は問3の小問という形で出題されています。人気単元ですよね」
先生「あらま、手際が良いわね。それじゃあさっそく対策しようかしら。今回は術式カンファレンスで方法論から先に伝えて、その後実際にあなた達に入試問題を解いてもらおうと思うわ」
C「え〜、聞いてないよ〜」
先生「今言ったからね。大丈夫、私失敗しないので」
大問先生による理科植物対策勉強術式カンファレンス
先生「理科の植物対策のポイントは何と言っても知識を増やすことです」
A「暗記ですか?」
先生「暗記は暗記だけど、使える知識になっていないと意味がないわ。説明できるかどうかがポイントね。例えば、光合成って言葉だけ覚えていても、それには何が必要でどんな働きをしてどんな実験をするのかまで知識として入れておかないと駄目ってこと」
C「暗記苦手だ…絶望だ…」
先生「大丈夫。暗記は能力じゃなくて、やるかやらないかよ。方法のポイントは色々あるけど、植物分野に関しては、絵やイメージを使って覚えるのが効果的ね。一応、暗記の方法のプリントを載せておくわ」
B「あと、視覚や聴覚や触覚といった5感は使えば使うほど覚えやすいって聞いたことあります!」
C「ふふふ…絵ですか。一時期漫画家を目指したので絵は得意なんです」
先生「あらそう。それじゃあ後で活躍してもらうわね。理科の植物の知識は大きく分けて【分類】【つくり】【はたらき】の3つに分かれるわ。一つずつ戦略を伝えます」
A「楽しみです」
先生「まずは、【分類】からね。下のプリントを見てちょうだい」
先生「では、この表を左から見ていきましょう。植物は、種子植物と胞子で増える植物に分かれていて、種子植物の方は被子植物と裸子植物に、胞子で増える植物はシダ植物とコケ植物に分かれているわね」
A「被子植物は、子葉の数や花びらの付き方で更に分かれていますね。でも、こうやって実際の草花の画があると覚えやすいです」
先生「身近なものが題材だから、外へ出て実際に草花を触って確かめてみるのもオススメよ。そうやって活きた知識を取り入れていけば忘れにくいし、活かすのも楽チンね」
C「ひげ根の響きが好き」
先生「上の表を数回テストしてもらって何となく頭に入れたら、次に行きましょう。【分類】の次は【つくり】です。Cくん出番よ」
C「へ?」 先生「これは被子植物と裸子植物の花のつくりです。絵で書いてみてください」
C「えー、無理だよー」 先生「返事は??」
C「御意!」
C「書いてみました」
先生「あら、そこそこやるじゃない。よく書けました。書くと何となくでも覚えたでしょう」
C「おしべとめしべはわかった。雄と雌の漢字が難しいのもわかった」
B「雄はムロで覚えるといいって聞いたことあります。雄にはムがありますもんね」
C「なるほど!俺は胚珠が種子になるのを【はいしゅ→しゅし】でしりとりみたいにして覚えた!」
A「被子植物は胚珠が守られていて、裸子植物は胚珠が外に出てるんですね。たしか花粉はやくで作られて、被子植物は基本虫が運んできた花粉が柱頭について受粉して、裸子植物は風で運ばれてきた花粉が雌花について受粉するんですよね。そして、胚珠が種子になっていく。物語みたいです」
B「私は花粉症だからあんまり花粉が飛ばされるのは嫌なんですけど、花粉が飛ばなきゃ受粉ができないから、植物は増えていかないんですね。そうすると結局私達も困りますもんね」
先生「そうね。植物たちは生き残ろうと必死。この花のつくりは、その想いからつくられたとっても合理的なシステムよ。ちなみに、元々1億4000万年以上前に裸子植物から分化したのが被子植物と言われているわ。私たちの大先輩ね。化石のプリントでも植物の進化の過程がわかるわね(胞子で増える植物→裸子植物→被子植物と進化してきた)」
C「すげーな植物!」
先生「ちなみに、花によって雄しべや雌しべの数は変わってきます。教材などでいくつか絵を見ておくとイメージが掴みやすいと思うわ。あとは実際に外で出会った時に触ってみてちょうだい」
ABC「御意!」
先生「さぁ、最後は【はたらき】よ。【はたらき】とは植物の働きのこと。光合成と蒸散についてです。早速質問。光合成はどこで行われて、何が必要で、何がつくられるかわかるかしら」
C「えーとね、光合成をするのは葉緑体!光が当たるとスタート!」
B「二酸化炭素と水と光のエネルギーが必要で、デンプンなどの養分と酸素がつくられます」
A「加えて、二酸化炭素と酸素は葉の裏側に多い気孔っていう穴から出入りし、水は根から吸収し道管で運ばれる。養分は師管で運ばれる。ですよね」
先生「素晴らしい。それと、植物は光合成と同時に、私達と同じように呼吸も行っているから忘れないようにね。光合成のメイン時間である昼間は光合成量が呼吸量を上回っていて、朝や夕方は同じくらい、夜は呼吸量の方が多くなるわよ」
B「光が強ければ強いほど光合成の量は増えるんですか?」
先生「いい質問ね。途中まではそうだけど、ある一定の強さを超えるといくら光が強くなっても光合成量は変わらなくなるわ。光合成についてはこんなところかしら」
C「俺も光合成したいなぁ…」
先生「謎の願望は置いておいて、次は蒸散よ。仕組みはわかる?」
C「わからん!」 先生「自信満々に言わない!」
B「なんとなくかもしれないけど…気孔から水が水蒸気になって放出される現象のことですか?」
先生「その通り。蒸散によって根からの水の吸い上げが盛んになって、水や水に解けた肥料などが全身に行き渡るわけね。ちなみに、夜はほとんど行われないわ」
A「光合成も蒸散もよく実験形式で出題されますよね」
先生「そうなの。その問題がきっと後で出てくるけど、そこで必要な知識だけ先に言っておくわ。葉の白い所、つまり葉緑体がない部分を【ふ】と言います。もちろんそこはいくら光が当たっても光合成しません。あと、実験で使う色んな液が出てくるので要注意よ」
B「ヨウ素液とかBTB溶液とかありましたよね」
先生「そうです。ヨウ素液はデンプンがあれば青紫色になります。BTB溶液は、中性だと緑色、酸性だと黄色、アルカリ性だと青色になります」
C「よーし、覚えたぞ!かかってこい、植物!」
先生「その意気よ。それじゃあ闘っていただきましょう」
C「全問正解したら、なんかくれますか?」
先生「致しません!あ、宿題ならたっぷりあげるわ。それじゃあ始めましょう。読者のみんなは問題がわからなければ上に戻って資料を見ながら解いてみてね」
vs2015年度(平成27年度)の過去問 問3小問
先生「2015年度の小問3(ア)の正答率は57.0%。XとYとZを当てる問題です。配点は3点」
C「これってあの表を覚えてたら楽勝なんじゃないか。ちなみにまだ僕は覚えてません」
B「えーと、花をつけないのは胞子で増える植物で、そのうち維管束があるのはシダ植物だから、Xはイヌワラビかな」
A「Yは裸子植物だから、マツかな。肝心のZは、被子植物だからイネかアブラナのどちらかで…」
C「お!ひげ根!だったらイネだ!ってことは、6が正解か!?」
先生「………正解!」 ABC「イェーイ!」 C「イイネ!イイネ!イネだけに」
先生「やるじゃない。どんどんいきましょう。2016年度の大問は最後に取っておいて、先に2017年度の小問を退治しちゃいましょう」
vs2017年度(平成29年度)の過去問 問3小問
先生「2017年度の小問3(ア)の正答率は37.7%。そこそこ難しいわね。配点は3点よ」
C「ランの花のつくりか…上から見るとよくわからんな」
B「たしか…ランは単子葉類。アブラナは双子葉類の離弁花類。どっちも被子植物だった気がする」
A「説明を読むとアは外側にあって花全体を支えているから、がくかな。イは花の中心を囲むようについてるから花弁。ウも同じっぽいな。エはぐちゃぐちゃしてるけど、柱頭はめしべ、やくはおしべにあるから、どっちにも相当する、が正解かな。答えは、1か」
先生「………正解!」 C「昆虫って花弁の上に乗って花粉運んでくのか!」
先生「やるじゃん。この調子でラストバトルにいきましょう!最後は2016年度の大問が相手よ!」
vs2016年度(平成28年度)の過去問 問7大問
先生「2016年度の大問7(ア)の正答率は73.7%。(イ)(ⅰ)の正答率は23.5%。(イ)(ⅱ)の正答率は45.1%。(ウ)の正答率は29.8%。やりがいあるわね。配点は全て4点で合計16点です」
C「文字が多いんじゃ!」
B「確かに、最初の方読むのだけでも、うわっとなるね」
A「こういう問題は、(ア)の問題文や図にさっと目を通してから頭に戻って読んだ方が把握しやすいかも。人によるけど」
C「実験1の①は光合成してないってことだから、青紫色にはならないな。②では光の当たってた方だけ光合成してデンプンができるからaだけ青紫色になるな!」
B「それがわかれば光が必要ってわかるものね。(ア)の答えは2ってことね」
先生「………正解」
A「(イ)も一気にいこう。光合成には【植物自体】【光】【二酸化炭素】が必要って証明したくて、それぞれの有無で光合成をできたかどうか比べるものがあればオッケーってことだから…【植物自体】の必要性はAとCを比べればわかる。【光】の必要性はAとBを比べればわかる。【二酸化炭素】の必要性がわかるものがないから、(ⅰ)は『二酸化炭素が不足すると反応が進まない』が入ると思う」
B「あとは、二酸化炭素がないと光合成ができないっていうことを、Aと何かを比べて証明すればいいのね。そっか、残ったDのアルミニウムはくを外して、Aと比べればいいんだ」
C「おお、(ⅱ)の答えは1ってことか!炭酸なんたら水溶液がないと二酸化炭素ほぼないってことね」
先生「…正解」
B「最後の(ウ)は落ち着いて図に書いて考えていけば簡単かも。EとIでは光合成は行われないから✕(ばつ)を書く。FとGの二酸化炭素濃度が何にもしてないEよりも低いってことは、呼吸で出た二酸化炭素よりも多い量が光合成に使われたってことだからこれにも✕を書く」
A「光源から遠いHでは光合成は一応行われたけど、光のエネルギーが弱いから光合成量が少なくて、呼吸で出る二酸化炭素のほうが多くなっちゃったんだね」
C「ということは、呼吸によって放出された二酸化炭素の量より少ない量の二酸化炭素を使って光合成をしたのは、Hってことか。答えは、3だ!!君に決めた!!」
先生「……………正解!あらま、やるじゃない。全問撃破。術式完了です」
術後の振り返り
先生「お疲れ様でした。どうだった、実際の入試問題は?」
A「大問先生がただ覚えているだけじゃわからないって言ってた意味がわかりました。一つひとつの知識を使って、考えて解くんですね」
B「同じように訊かれたら答えられるけど、少しでも問われ方が変わるとまた迷うかも。復習します」
先生「そうね。Aくんが言ってくれた通り知識を活用する力が重要ね。今度の教育改革でも問われる力よ。Bさんの不安もよく分かるわ。だからこそ過去問や予想問で色んな形式の問題に触れましょう。理科は毎年平均点がそこまで高くない科目だから、その中で点数の取れる分野をしっかり持っておくと安心よ」
C「維管束とかひげ根とかも図に書くといいですか?」
先生「そうね。繰り返しになるけど、植物は実際自分で絵を書いてみると頭に残りやすいわ。図やイラストや実物を見るのもいいわね。今回あまり触れなかった維管束や葉の脈(網状脈・平行脈)なども確認しておきましょう。逆に、そういった知識がないと歯がたたないかもね」
C「分類の問題もっとやりたいなー」 先生「全問正解だったのでこれもあげましょう」 C「おお」
先生「これは平成21年度の過去問ね。東京新聞さんのサイトからの抜粋なので、解いたら答えもここで確認できるわ。ぜひやってみて」
先生「最後に大切なことを。私たちも植物もみんな同じ生物。同じ世界に生きる仲間として、みんなで一緒に世の中をより良くしていきたいわね」
目の前の生徒を救うというポリシーのもと、圧倒的な腕で数多くの受検生を救いながら、難問良問はびこる入試界に鋭いメスを入れてきたフリーランスの天才講師・大問未知子。群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、HOME個別指導塾公認講師のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器…
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大問先生の他の入試問題との戦いが見たいという方はこちら(随時リメイクして更新予定)。
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