「なんでこのやり方だとできないの…」
自習中の彼の目は真っ赤。今にも泣きそうです。お母様からは「家でも学校でも言う事聞かなくて、自分の考えたやり方でやって、間違えて泣いてるんですよね」とのこと。
彼が苦しんでいるのは、小数の割り算。小数点のずらし方がオリジナルで、どうしても答えが合わずに、学校でもテストの点が散々だったそう。
「どれどれ、ちょっとやり方教えて」と、まずは彼のお話を聞いてみます。
そこから、時間をかけてひとしきりお話を聞きました。紙に書いて説明してくれた方法はたしかに独特。筆算を極力使わないというストロングスタイル。それに、ちょこっとだけ考え方を間違えていました。
そこを指摘すると、「じゃあこんなのは?」と代案を出してくる辺り、彼は結構賢いのです。それは絵を使ったものだったので、きりのいい数字にしか使えないのが難点でしたが。
「これは例えば2.3÷1.2とかのときは使いにくいよね。どうする?」
「うーん」と唸る彼に、頃合いを見て僕は「それでは知の巨人たちの必殺技を授けよう」と、小数点移動の考え方や筆算の方法を伝えます。
例えば、6÷1.5の答えがなんで60÷15と一緒になるのか。小数点が移動するとはどういうことか。なぜ筆算を使うと楽なのか。
それを突き詰めていくと、色んな偉人たちのエピソードにぶつかるんですよね。アルキメデスさんやニュートンさんや関孝和さんといった偉人たちの物語が、ただの説明に楽しみや面白みと言ったカラフルな飾りをつけてくれて、彼も目をキラキラ輝かせて説明を聞いてくれます。
「すごい。こっちのが楽ちんだね」
筆算の説明を受けた彼の口から、そんな言葉が飛び出した時、周りには教科書やら手書きのノートやらPCで出した偉人たちのエピソードやらが所狭しと散らばっていました。ちょっと汚くなった机の上で、だけど、彼はそこからまるで宝物を見つけたかのように、満面の笑みを浮かべていました。
「僕らはね、偉大なる先人たちの、肩の上に乗って学ぶことができる」
最近お気に入りのニュートンが手紙にも書いたという有名な名言をもじって、ちょっぴりドヤ顔で僕は言いました。
「その先人たちが残した素晴らしい技や、すごいね!や楽だな!の集大成が載っているのが、この教科書というやつだ。どう?ちょっとは信じてもいいって思えたでしょ」
彼は僕と目を合わせて、快く頷いてくれました。
「あなた(生徒名)だったら、もしかしたら一つずつ自分でその技を編み出すこともできるかもしれないけれど、それだったらもっと新しいことを発見してほしいなぁ。タイムマシンとか、掃除しなくても綺麗になる仕組みとか」
軽い冗談も入れてみたのですが、それは見事に滑りました。でも、言いたいことは伝わった模様です。
「だからさ、先人たちが残したすごい技、使えるもんは使ったほうが良いよね」
「うん」
かくして、教科書を食い入るように読み込む、夏の成長株筆頭候補の学びBOYが誕生したのです。
帰り際、「勉強って楽しい!」って笑う彼の姿を見て、このお仕事の楽しみや醍醐味ややりがいを改めて思い出した、勉強犬なのでした。
あまりにもいい体験だったので、思わずツイッターでもつぶやいてしまいました。一連のツイートのラストがこちら。
少し遠回りしたけれど、「勉強楽しい!」と帰っていったから、すごくよかった。
— 勉強犬 (@homekobetsu) July 19, 2018
なんで?を大切にしたら、思いもよらぬ学びが生まれる。学ばせながら、こちらが大いに学んだので、ここにも記しておきました。あー、面白かった。
そして、やってきた次の授業。
あれだけ会心の内容だったから、忘れてないよな?と恐る恐る確認すると、宿題はパーフェクト!授業中も完璧にこなし、見事他の単元へ進むことができました。
嬉しくてお母様にお電話すると、「なんか宿題をニヤニヤ笑いながら解いてました」とのこと。いつもと違うその姿に最初はちょっと怖かったそうですが、よく見てみればとっても楽しそうで、まるでゲームをしているときみたいだったとのこと。机の片隅には、教科書。開かないけどずっと置いてありました、とお母様も笑っておりました。
よーし、次はゲームを越えるように頑張りたいと思います。
そして、これは何も勉強に限った話ではないんですよね。僕らは、長い年月をかけて、色んなことを知ってきた生き物。だから、こういうのが得意分野なはずです。
過去から学び、未来に活かしていく。
それは、とっても大事なこと。大人から子どもたちへ、そしてそのまた子どもたちへ、僕らの思いや考えや素敵な技はつながって伝わって広がって、きっと世界をより良くしていく。
楽しみだなぁ。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
やらされる勉強よりも、自らやる勉強のほうが、ずっと楽しいしね。
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