前回、数学を取り上げたら、
それを見たらしい生徒が「先生。入試の最初って何から始まるかご存知ですよね。やっぱり最初って大事ですよね。ね、先生」という謎のプレッシャーをかけてきたので、やむを得ず英語編も書いてみることとしました。
ただ、勉強が苦手な子にとって、英語は数学よりも点が取りづらい科目であると個人的には考えています。「計算」「数量関係」「図形」と分けられる数学よりも積み重ね量が大きいですからね。
というわけで、ハードルを下げ、50点目標にしようとしたんですが、「いやいや、最初から目標を低くしちゃダメだ!」という内なる声に則って、同じく60点を目指してみることとしました。
正直苦手な子が英語で60点を取るのはきついです。ただ、そのためにやるべきことは伝えるので、あとは努力次第です。早速参りましょう。
今回も念のため伝えておきますが、あくまで僕個人の経験と考えのもと記述しています。個人差もありますし、これじゃなきゃダメというものではありません。オススメの方法の一つとして、参考になれば幸いです。
まずは県入試のことを知っておこう
前回もお伝えしたのですが、改めて。
神奈川県の高校入試は、県が結構情報開示してくれるので、大体ですが「何点取れば合格できそう」みたいなのが事前にわかります。以下、前年度の合格者平均点がわかる表です。各高校の()内の数値がそれにあたります。
入試の仕組みが気になる場合は、下記の『受験の仕組みをシンプルに説明してみた』をご参照ください。
ここで重要なのは、勉強が苦手な子にとって、学力検査で60点が計算できる科目があるということは、だいぶ入試が戦いやすくなるということです。
そこで今回は、英語で60点狙う子用の勉強の仕方について説明していきます。
ちなみに、昨年の入試英語の合格者平均点が47点ですから、60点を獲得すれば余裕の平均点越え。英語はできる人とできない人の差がつきやすい科目ですから、英語が苦手でも平均点近くが取れれば致命傷になりません。
そして、何と言っても英語は一発目の科目です。その日一日を左右するといっても過言ではありません。精神面って大きいでしょ。「うわ、やばい」と最初の科目から焦らないようにするために、しっかり準備をしていきましょう。
公立高校入試英語攻略法〜目標点数60点の場合〜
それでは問題を見ていきましょう。過去問は『学力検査のページ』に載っています。
まずは構成から。毎年多少の変更がありますが、概ねこんな感じです。
問1 リスニング
問2 単語選択
問3 文法選択
問4 並び替え
問5 条件英作文
問6 長文読解
問7 短文読解
問8 対話文読解
詳しい中身は例えば2024年度のこちらの表を参照のこと。正答率と配点も載っています。
ここでまず抑えておきたいポイントは、長文問題の配点が大きいこと(5点)と、正答率が高い問題がどこにあるかということです。
これを意識しながら、ちょっと古めの2018年度の入試の問題で中身を見ていきましょう。
まずは問1のリスニング問題。朝一番の勝負どころです。リスニング問題だけで20点以上の配点がありますから、いきなり重要ポイントです。
ここの(ア)と(イ)は落としたくないところ。(ウ)は難易度が落ちる年もありましたが、リスニングの中では最難問です。取れたらラッキーぐらいに考えておいて、できなくてもへこまないようにしましょう。
リスニングは、耳慣れが大事です。現代はネットでも音声が気軽に聞ける時代ですね。たとえば過去問なら東京学参さんのHPで音声データが公開されていますから、練習材料に使わせていただきましょう。ありがとうございます、東京学参さん。
ただ、リスニング問題の台本を読んでもわからない場合は、耳慣れしていないことが問題ではありません。まだまだ英語が読めていない証拠です。下記の対策を参考にしましょう。
続いての問2は、単語問題。昔は記述でしたが、最近は選択が多いです。基本的には教科書の後ろ側の一覧の太字のものが出てきやすいですが、近年はその法則もあてにならなくなってきています。楽をしようとせず、地道にまんべんなく練習を積みましょう。
もちろん受験生の皆さんは日々日々英単語に触れていますよね。
2点と配点は小さいですが、60点を超えるにはここがキモです。全問正解はきついかもしれませんが、狙うだけ狙ってみましょう。詳しい問2との戦い方に関しては、『大問先生の問2対策』でも触れていますのでご参照を。
それに、英語はやっぱり単語です。この大問の正解ももちろんですが、他の大問でも単語は必要不可欠です。
考えてみてください。日本語ってどうやって覚えてきたか覚えていますか?ママとかパパとかワンワンとか、単語から覚えてきてますよね。その積み重ねが、読んだり書いたり聞いたり話したりにつながってますよね。
そう、どんな言語も、読むにも書くにも聞くにも喋るにも、やっぱりまずは単語なんです。
英語の単語も基本的には日本語の単語と一緒の覚え方でいいです。音とイメージとセットで覚える。間違いは気にせず繰り返す。
例えば犬を指差して「ワンワン」から始めた際に、誰かに「あれはワンワンじゃない!犬だ!」なんて叱られたら喋るの嫌になりますよね。でも、英語はなぜかそれをやりがちです。幼少期に戻ったと思って、間違いを恥ずかしがらず、繰り返し繰り返し練習して覚えていきましょう。
子どもの頃そうだったように、できない、知らないって、本当はワクワクの宝庫なんですよ。受験といういい機会ですから、童心に戻って言葉をいっぱい覚えましょう。
オススメの暗記方法が載った記事を置いておきます。自分に合った暗記方法を見つけておくと、高校に入ってからも便利ですよ。
続いて、問3は単語を選択する問題です。文法の知識も必要になってきます。
ちなみに、上記の話の続きでいえば、日本語で文法を考えながら話したり読んだりしていることってそんなにありますか?英語といえば文法文法って言われるのに、国語では各学年でちょこっとやるぐらいですよね。
日本語なら、文法を意識せずともそれなりに書ける、話せる、読める、聞ける。英語じゃ難しいのになんでだろう。それはね、日本語が母国語だからです。
英語も同じように文法を気にせず読めたり話せたりしたら最高でしょう。たまにそういう子もいますよね。ただ、それをできるようにするには時間と環境が必要です。3ヶ月以上英語だけ読んだり話したりしていればその状態に近づけるかもしれません。
多くの子どもたちにとって、英語はやっぱり読みにくいもの。当然です。日本語とは違う言語なんですから。それは喩えるなら、暗号を読み解いているようなものなのです。
そんな暗号を理解し読みやすくするための武器が、文法です。
文法を知らずに英語の問題に立ち向かうということは、ルールの知らないゲームやスポーツで相手に勝とうとしているようなもの。もう圧倒的に不利です。
中学生の英語の文法なんてそんなに多くないんだから、一つずつ覚えちゃった方が楽ちんです。こうして眺めてみれば、野球のルールよりだいぶ少ないです。
例えば一つの理想としては、「一般動詞にingがついている形はどんな文法があったっけ?→進行形、動名詞、分詞」や「一般動詞の過去分詞形ってどんな時に使うっけ?→受動態、現在完了、分詞」など、それぞれの文法や形や使い方が説明できるような状態になっているとベストですね。問題演習を繰り返しながら、それぞれのルールが「説明できる状態」を目指しましょう。
ただ、それを踏まえても問4は難関です。
「6つの中から5つを選んで並べる」というのは、全国的にみても難易度の高い並び替えです。
ここは一問合っていたら御の字。逆に、複数問合えば、60点オーバーは楽ちんです。配点も4点とそこそこ高めですしね。
次の問5は、条件英作文。ここで悩みすぎて時間を使いすぎないように。その時間を長文読解に使って欲しいですからね。なお、この年の正答率は13.8%です。近年は正答率も高いことがあるので狙ってみるのも良いでしょう。何かしら書くと点数がもらえる可能性も。
先に参ります。ここからが、60点越えの正念場、長文読解ゾーンです。
正答率を見ても分かる通り、各大問の(ア)や(イ)は意外と正答率高いんですよね。配点も大きめで、お得です。僕の作戦では、ここをしっかり取りにいって、60点超えをします。
一気に見てみましょう。問6〜問8です。
と思いましたが、問6が長いのでここでほっと一息。
ご覧になっていただいてお分かりの通り、文章長いんです。大人でも「むむ」っとなりますよね。
それもそのはず。神奈川県入試問題の文字数は、日本一とも言われています。毎年こんな感じです。この圧巻の文字数は覚悟しなければならないんですね。
でも、問題自体はそんなに難しくないんですよ。例えば(ア)なんか全部読まなくても前後の文だけ読めばなんとなく正解がわかっちゃいます。
それに、注釈(✳︎)に結構お助けワードが載っているんです。ここでなんとなーくどんな文章かイメージできませんか?なんとなーくですよ。
立ち向かうことさえできれば、意外と勝てたりするのが長文問題です。ただ、勉強が苦手な子どもたちにとっては、立ち向かうだけの心のエネルギーが足りていないことが多いです。見た目で「もうムリ」となっちゃうんですよね。
今の時期の勉強が苦手な生徒に、この問題を「解いてみて」と見せても、解くどころか読まない子もきっとたくさんいるでしょう。「読んだ?」と聞いたら「読んだ」と言いますが、多くの場合それは「見ているだけ」です。それじゃもちろん解けません。
その「心の力」のつけ方は、後ほど教材などと併せてご紹介します。先へ行きましょう。問7は図表の入った長文(短文)読解です。
英語の文章の量自体は減りますが、読むだけではなくて少し簡単な工夫が必要です。大学入試の問題形式にも近い感がありますよね。
ただ、難易度は高くありません。昨年の正答率は60%超え。ここは落とすわけにはいかないところです。入試対策用の教材などで、こういった形式の問題に慣れるまで演習を繰り返しましょう。いいですか、ここは絶対に負けてはならない勝負どころです。
それでは、最後の問8に参りましょう。やっぱり長いですが、対話文なので慣れたら読みやすいかも。ここも注釈(✳︎)から読んでみるとなんとなく大まかな文意が掴めるかもしれません。
これにて入試問題は終了です。
解いてみた人がいたらきっと気になるであろう答えは、こちら。
お疲れ様でした。
改めて、作戦内容を伝えると、
問1 (ア)(イ)正解 15点
問2 どこか1問正解 2点
問3 全問正解 12点
問4 どこか1問正解 4点
問6 (ア)(イ)正解 10点
問7 (ア)(イ)正解 10点
問8 (ア)(イ)正解 10点
で、計63点というわけです。2018年度の問題を表にするとこんな感じ。ピンクの線が取りたいところです。
そこを狙って勉強していくことが、他の問題を解く上でも必要な力になっていくはずです。
では、その勝負に勝つために必要なやるべきことをまとめましょう。
①リスニング対策(日々日々)
②単語練習(日々日々)
③文法の理解と演習
④長文読解演習
⑤過去問や予想問で時間配分などの練習
前述の通り、英語が苦手な子ってまず心の力を伸ばしてあげないと、もう英語ってだけで拒否反応を起こしてしまいうんですよね。その状態で、神奈川県の入試に立ち向かうのは無謀です。
ですから、スモールステップで成功体験を積ませて、「お、英語意外とできるかも」なんて思わせられたらベストです。並行して、文法CTと単語練習とリスニング練習を毎日。これが英語で60点取るための戦略の一つです。
もっと時間があれば『ビッグファットキャットの世界一簡単な英語の本』とかの楽しい長文で慣れさせたいんですけどね。この本は特に「飛ばし読み」のくだりがとってもわかりやすくていいです。
この本以外にも興味の出る長文に出会えれば、楽しみながら英語に慣れることができますし、単語の勉強にもなるし、一石十鳥ぐらいの価値があります。一応にはなりますが、塾に通っていない子向けに市販の教材たちを一言紹介しておきましょう。
まずは『中学英語長文〜超基礎から始める編〜』。結構売れてますよね。これはね、細かくて好きです。ただ英語が苦手な子にとって少し難易度高めな印象があるので、最初の問いがすんなり解けるようなら使えると思います。
続いて、たくや式。学年別は好き。()が多く読みづらい印象あり。レイアウトが気に入ればありかと思います。
さらに『ゆっくりていねい中学英語長文』。こちらも、最初の問を見てレベルに合うかどうか検討してみましょう。
『くもんの中学基礎がため100% 単語読解編』はオススメ。学年別で単語とセットで長文練習ができます。
最後に『高校入試とってもすっきり英語長文』。簡単めです。3段階のレベルで無理なく読めます。
まだまだ紹介したい教材はあるのですが、一旦以上です。長文に慣れていくことはもちろん、「お、長文できるかも」っていう心を育てるための教材ですね。
ただ、塾用教材の代わりの教材となると難しいです。神奈川入試に特化していてちょうどいいレベルってのがないんですよね。僕も色々と探してみますが、どうしても塾に通えない事情がある場合は、学校の先生に相談するか、お近くの塾で教材だけ買ってしまうのも手かもしれません。
最後に注意点。
英語が苦手な子はやっぱり長文を読むのに時間がかかります。入試の時のポイントは、いかに長文読解に時間を使えるかです。
ですから、あえて端的に強い感じで言いますね。いいですか、
できないところはすぐ飛ばしましょう。
例えば問5や問2で単語がなかなか出てこない時などはすぐ飛ばしましょう。そこで時間を使っている暇はありません。
まずはできるところから確実に解いていき、時間が余ったら勝負を挑めばいいのです。
過去問や予想問で時間配分の練習を忘れずにしておきましょう。
さて、ここからは数学の時と同じ締めです。長々と失礼致しました。
「え、先生、こんなにガチガチに準備していくけど、急に問題傾向が変わったらどうするの?」
ごもっともな質問です。予期せぬことは起こりますからね。
まずその「予期せぬことは起こる」と言う心持ちは持っておくこと。
ただ、多くの教材を見てもらえばわかる通り、大体の受検生がガチガチにこの傾向の対策をしてくるので、傾向が少しでも変わるとみんなが慌てふためいて平均点が下がります。
入試は相対的な評価で争いますから、平均点が下がれば、結局傾向が変わらなかった「正解しなくてはならない問題をどれだけ正解できたか」勝負になります。
だから、できることを当たり前にできるようにしておくこと。それが必勝パターンになるのです。
本日説明してきたこの「60点獲得用問題」たちが、その「当たり前にできてほしい問題」たちです。これは高校入学後も必ず役に立つ知識です。
まずはここから、しっかりと身につけていきましょう。
基本がしっかりすれば、そこから一気に積み上げていって、厳しい受験勉強を経て、英語が得意になるという子もいます。
人生で一番勉強する冬。何が起こるか、楽しみですね。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
こうやってやるべきことを明確にすることで「心の力」が強まり立ち向かっていけるようになる子もいます。
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