「見せてみろよ」
そう言って僕から奪った星を、じっくり観察してからゼウスは言った。
「青と緑とで綺麗な星だけどよ、本当に生き物なんて生まれるのかね」
怪訝な顔でゼウスが言うと、ヤハウェが口を挟んできた。
「まぁまぁ。折角シヴァがやる気になったんだからいいじゃないか。珍しく壊すんじゃなくて創りたいって言ってるんだし」
ヤハウェはいつも僕に優しい。ゼウスは仕方ねぇな、という顔をしている。
「そうですね。私も楽しみですよ、その星がどうなるのか」
仏陀はいつも同じ悟ったような顔をしているから、本当に楽しみかどうかはわからない。アフラ・マズダはいつも通り、微笑みを浮かべて僕らのやりとりを眺めている。僕は自分が創ったその星を、太陽系に浮かべる。近くには、ラーの創った赤い星と輪っかのついた星を。これでだいぶ見た目が良くなった。後は待つだけ。たまに水をやるのを忘れちゃいけない。
いけない、いけない。はしゃぎ過ぎて疲れて、ついウトウトしてしまった。急いで、我が星を観察する。ほうほう、順調順調。この前ゼウスの創った星みたいに、小さなトカゲみたいな生き物がそこら中を歩き出した。無事に生き物が生まれた。ゼウスに自慢したら、「そこからが難しいんだよ」と言われた。ヤハウェが「おめでとう」と言ってくれた。
僕はよく破壊神と呼ばれる。確かにすぐイライラして、ブラフマーおじさんの創ったものをガンガン壊していた時期もあった。周りの冷たい目なんて気にせずに、すごくワガママに生きていた。でもね、反省したんだ。仏陀は言った。「神だって、変われるんですよ」って。僕は変わりたい。破壊神なんて、響きだけは格好良いけど、中二病みたいだ。僕は、変わりたい。
次の日になって、その青と緑の星には、新しい命が宿っていた。僕は彼らに人間という名前を与えた。でも、彼らは彼ら同士で争いを始めて、自然にその数を減らしていった。「どうしたらいいんだろう」って、僕はヤハウェに聞いた。ゼウスが横で「罰を与えろ、罰を」とうるさい。ヤハウェは「テストをしてみましょうか」と笑った。「彼らが本当に生きる気があるのかどうか」と続けて、虚空から何かを取り出した。
「これは約束です」
ヤハウェが仏陀を見た。「使うのは久しぶりですよね」と仏陀が懐かしそうに言った。「なんだ、それ?」とゼウスが聞くと、仏陀が説明をしてくれた。
「昔、私が星を創った時にもこれを使ったんです。その星の住人の一部が、ちゃんと約束を守れるかどうかで、その星をどうするか決めようと、結論を彼ら自身に委ねたのです。結果、その約束は破られ、その星は消滅してしまいましたけど」
ゼウスがまたも怪訝な顔で言う。
「なんで小さな奴らは愚かかね」
ヤハウェが「愚かだから、小さいんですよ」なんて格言じみたことを言いながら、約束とやらを青と緑の星に一粒落とす。「この星の名は何というんでしたっけ?」とヤハウェが僕に聞くから、僕は思いついた名前を口にした。
「地球」
ヤハウェがすぐさま呪文みたいに唱える。
「地球という名のこの星の、ある地域に、約束を落としました。その約束とは、武器を持たぬことです。きっとその約束は、彼ら自身が法を作り、平和主義という名前を付け大切にするでしょう。それを守っている間は、地球は安泰。でも、その約束を破った際には…」
「破壊神様の出番だな」
ゼウスが皮肉っぽく言う。大丈夫、大丈夫。僕の創ったこの星が、そんな約束一つ守りきれないわけがない。頑張れ、頑張れ。僕だって頑張るから。ヤハウェが「1000年ぐらいしたら、一安心です」と一応のゴールを作ってくれた。
正座しながら真剣に地球を眺めている僕に、仏陀が「飲み物ぐらい飲めばどうですか?」って気を使ってくれる。でも、ここで僕が楽をする訳にはいかない。一緒に頑張ろうね。まだ100年もたってない。地球は、只今絶賛テスト中。
【教育・道徳的観点から】
色々な神話に出てくる神様って、
意外と勝手だったり、
ワガママだったり、
人間臭くて、面白いんですよね。
ギリシャ神話の神様は浮気もするし、
古事記の神様は傍若無人だったりするし、
インドの神様は姿形も異様です。
神様とは、祈りの行方なのかもしれません。
目には見えないし、勿論会うことは出来ないのだけれど、
近くに居るような気がしたり、メッセージをくれたりもする。
すべて、僕らが幸福でいられるように。
ちなみに、
仏像に顔が彫られるようになったのは、
ギリシャ神話の影響なのだとか。
それまでは恐れ多くて神様の顔なんて彫れないということだったそう。
文化とともに、神も変わる。
日本でも政治に宗教が使われたりで、色々な歴史があるけれど、
今多くの人が無宗教なのは、なんだか面白いですね。
だからこそ、僕らは色んなイベントを楽しむことが出来る。
神様も、コロコロ自分の番が来たりするから、
むしろ喜んでくれているんじゃないかなぁ。
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