実は、表紙はそれほど刺さらなかったんです。
藤沢のジュンク堂、「なんか面白そうな本ないかな〜」と探していたら、あの超絶無敵のヒットメイカー東野圭吾さんの新作が目に入りました。作家生活35周年。ずっと売れているモンスター作家さんです。
上記の通り、表紙にはあんまり惹かれませんでした。ただ、帯の「『ナミヤ雑貨店の奇蹟』、そして…」に目が行ったんですよね。
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は、こちらの記事でも紹介している通り、滅茶苦茶面白い本の一つです。
「ええ!その系譜ならこれは名作の予感…!!」と手に取りレジへ直行していました。何がきっかけになるかなんてわからないものですね。
そうして手に入れた本が『クスノキの番人』です。世界同時期発売もされた「新たな代表作」の呼び声も高い期待値高まる本。
そこから一気に読破。さすが東野圭吾。読ませます。
さて、これから感想を綴っていこうと思うのですが、新刊でこれから読む人も多いと思うので、基本ネタバレなしで進めていきます。ここからちょいネタバレあるかも!という部分は注意喚起しますので、安心して読んでみてください。
まずは簡単なあらすじからご紹介していきたいと思います。
あらすじ
タイトルにもある通り、物語の中心に在るのは、あるクスノキです。あるっていっぱい言っちゃった。
その木に祈れば願いが叶うと言われています。これは、その木の番人を任されることになった青年と、そこへ祈念に訪れる人々の織りなす心温まる物語です。
もう少しだけ具体的に。不当な理由で職場を解雇され、その腹いせに罪を犯し逮捕されてしまった主人公の青年。同情を買おうと取調官に訴えますが、その甲斐もなく送検、起訴を待つ身となってしまいます。そこへ突然弁護士が現れ、依頼人の命令を聞くなら釈放してくれるといいます。
依頼人に心当たりはなかったのですが、このままでは間違いなく刑務所行き。そこで賭けに出た青年は、その申し出に従うことに。依頼人の待つ場所へ向かうと、そこには年配の女性が待っていました。彼女は言います。「あなたにしてもらいたいこと。それはクスノキの番人です」と。
ネタバレなしの読書感想文
このなんともミステリアスな入り出し、そこにちゃんと事件を絡めてくる辺りも東野圭吾さんっぽいですね。キャッチーな情報の出し方を熟知されている感があります。
その流れに身を任せるようにして、どんどん読み進めていけちゃいます。帯でわかることが本文中でもさっさとわかって物語がどんどん展開されていく感じが心地よし。売れるのも納得です。
読んでいてふと、人にとっての祈りって何なんだろうって考えました。これ本編とは関係ない話で恐縮ですが、ただただ祈ったところで現実の多くがほとんどそうならないことを僕らは知っています。では、なぜ祈るのでしょう。
それはきっと、気持ちの行方なんですよね。完全なる個人的解釈ですが、祈ることって、自分の想いをさらに強める行為なんだと思います。その想いは、誰かに伝わったり自身の原動力になったりすることで、目に見える行動に変わっていく。そしてそれが自分や現実を変えていく。
人を動かすのって、いつも人の想いですからね。
僕も自分を含めた色んな人の想いによって突き動かされているなぁと、改めて感じました。本編途中ぐらいで、そんなことをしみじみと考えながら、「お、この本読んでよかったな」と思えました。繰り返しますが、まだ本編途中です。
さて、ここからネタバレありの感想文です。全部読んだ後、思ったことについて書いてあります。これから読むという方は、どうか引き返してくださいね。
ネタバレありの読書感想文
間違えてスクロールしちゃった方はまだ引き返せます。
ここから先もなるべく具体的なことは書かないつもりですが、勘の良い方は断片的な情報だけでも読み取ってしまうものですからね。
大丈夫ですか。それでは最後の感想を記していきましょう。
最後にお伝えしたいことは、この本を読んで僕が勝手に感じたメッセージについてです。
物語の途中で、クスノキの力を知った主人公は言います。
「念とは魂であり、生き様です」
クスノキが伝えるのは、人の魂。人の生き様。時に誰かの人生をも大きく変える強いメッセージ。それは、面と向かっていたとしても、言葉だけでは伝えられない想いでもあります。
でもね、思ったんです。それは難しいし、無理かもしれない。だけど、もしも死んでからじゃなくて、そうなる前に伝えられたならどんなに良いか。生きている間に真っ直ぐに伝えられたならどんなにいいか。
だって僕らは折角、同じ時代を生きているのですから。
クスノキを通さずとも、何も媒介はなくとも、誰かの思いが誰かに伝わるって、どんなに素敵なことか。
だから、僕らはさ、生きているうちに、色んな話をしよう。忘れないうちに、色んなことを伝えよう。依頼人である年配の女性も最後にはこんな事をおっしゃいますね。
「でもクスノキの力なんて不要です。今、初めて知りました。こうして向き合っているだけで伝わってくるものもあるのですね」
話そう。届けよう。言葉は大切なアイテムだけど、対話は何も言葉だけでするものじゃない。目を見て、使えるものは使って、精一杯で伝えよう。大切なことを、大切な誰かに。
僕らは同じ時代を生きている。
あなたの念は、クスノキがなかったとしても、今目の前の人に伝えられるのだから。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
「何とかして正面の壁に穴を開け、真ん中に道を切り拓けないか、それを考えるんだ」
個人的には『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の方がワクワクしたかなー
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