先日こんなツイートをしました。
成績に1や2が多い子は、逃げ癖や負け癖がついていることが多い。だから僕らは、学力だけじゃなくて、心を育てるサポートをしてあげなくちゃならない。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。でも、その何度目かに、確かに、静かに、でも劇的に、その瞬間は訪れる。ちゃんと、変わる。
— 勉強犬 (@homekobetsu) May 18, 2018
それを見たという静岡在住の保護者の方から、「うちの子もその成績に1や2が多い子なのですが、どうやったら変わることができますか?」という内容のご質問をいただきました。
その時は状況を伺った上で自分がベストだと思う方法をアドバイスさせていただいたのですが、「よーし、折角だからブログに【成績に1や2が多い子どもについて悩んでいる保護者の方に向けたアドバイス】をまとめてみよう」と考えてみたら、これが結構難しかったんですよね。
それはきっと、学力うんぬんの話ではなくて、本人の姿勢が重要だからでしょう。その本人の姿勢が変わるきっかけは、人それぞれだったりしますからね。なかなかまとめられないなと思った次第です。
逆に、本人の姿勢さえ変わってしまえば、成績を上げることはそんなに難しいことではありません。
というわけで、本日は【成績に1や2が多い子】の姿勢が変わった事例を集めてみました。以前にまとめた『勉強モンスター図鑑』を更に細かくしたようなものですね。
まずは大前提の説明から参りましょう。
成績に1や2が多い子どもの直さなきゃならないポイント
『成績上昇大作戦』や『通知表はメッセージ』でも詳しく説明していますが、内申に1や2がつくということは、テストの点はもちろん、授業態度や提出物、先生とのコミュニケーションに問題があるケースが多いです。
通知表の「関心・意欲・態度」を見たり、直接学校の先生に訊いてみると話は早いですね。内申が低い原因を掴むのはそんなに難しくないはずです。
「提出物がまったく出ていません」
「授業中、喋るか寝るかしています」
「態度が反抗的です」
「スピーチのテスト、これを話せばいいんだよと伝えても、前にも出てきませんでした」
それを直す方法論は、「メモを取る」ですとか「ファイルを作る」とか「ひじをつかない」とか色々あってどれもそんなに難しくはないんですけど、いくら方法がわかっても、本人がやらなければ意味が無いんですよね。
その「本人がやる」というのが最大の難関です。
特にそんなときは、家族がいくら注意しても効果的でないことが多いです。距離が近すぎて甘えてしまったり、思春期特有の超絶反抗期だったりするんですよね。かりゆし58さんも「アンマー」でその頃のことを歌ってたりします。
こんないい歌を歌う方でも、そんな頃があったんですよね。では、その姿勢をどうやって変えてあげればいいのでしょう。
『人を動かす5つの要素』によれば、人は希望・危機感・正しさ・気持ちよさ・人の想いの5つの要素で動くと言われます。具体的にどんなときにきっかけになりやすいか見てみましょうか。
- 希望…もう少しで行きたい高校に行けるとわかった、自分にもやればできると体感した
- 危機感…このままだとやばいと自覚した、高校に行けないとデータで知らされた
- 正しさ…勉強する意味を見つけた、目的ができた、将来やりたいことができた
- 気持ちよさ…勉強したほうが楽だとわかった、好きなものと結びついた、わかる!できる!
- 人の想い…誰かのために頑張ろうと思った
個人的にそういった生徒が塾で変わっていく流れとしては、
「このままじゃやばいと少しでも思ったから親に連れられて来塾(危機感)」→「塾の指導で(希望)や(気持ちよさ)を少しずつ感じる」→「指導してくれた先生のために頑張る(人の想い)」→「(希望)や(気持ちよさ)をさらに感じる」→「大きな勉強をする目的を持つ(正しさ)」
というのが多い気がします。本日はそんな例を、物語形式でお伝えしていきましょう。そういえば過去にも、ちょっと長いけどこんな記事があります。
生徒の成長事例001 喋らない女の子
「うちの子、大人とは喋りたがらないんです」
中学3年生の夏、お母さんと一緒に面談にやってきたその子は、確かに一言も僕と喋ろうとはしませんでした。
ですから、コミュニケーションは首を振るなどノンバーバルなものばかり。授業などで細かい話をする際は筆談でしたが、返答するのにすごく時間がかかる子でもありました。
学校でも同様の感じということで、「関心・意欲・態度」は安定のC。授業態度は静かに座っているだけなので悪くないのですが、提出物はまったく出しておらず、テストの点も平均点を大きく下回っている現状でした。
僕は面談の途中に、本人に一番気になったことを訊いてみました。
「どうして塾へ来ようと思ったの?大人もいっぱいいるし、嫌だとは思わなかった?」
少し目を見開きましたが、なかなか答えようとはしません。代わりにお母様が答えようとしましたが、この答えだけは本人に聞きたくて、僕は紙とペンを差し出しました。
そこに書かれたのは「行きたい高校があるから」の一行。ゆくゆく話を聞いていくと農業をやりたいそうで、先日説明会に参加した農業高校に興味を持ったのだとか。
やりたいことがあるというのは、変わる大きなチャンスです。僕は満面の笑みで「それはすごくいい理由だね」と返し、早速授業の日程を組みました。
人あたりのいい優しい女性講師で授業をしていくと、少しずつ少しずつ彼女がその講師に心を開いていく様子が見て取れました。「話してくれた」という報告を受けたときには一緒にちょっと泣きそうになりましたね。相変わらず僕とは一言も喋りませんでしたが、会釈だけはしてくれていたので安心していました。
課題は国語。特に語彙が少なく、小学生の内容からオリジナル教材で練習を積んでいきました。あとはスピード。自分の答えを出すことにかなりの躊躇があって、その精神的な壁を取り除くのに時間がかかりました。講師が粘り強くやってくれました。
いつも自信がなさそうにしていたので、スモールステップを心掛けて、成功体験を積ませていきました。ちょっとずつちょっとずつ。できないところよりはできるところに目を向けて、劇的にテストの点数が変わることはありませんでしたが、「やったじゃん!前回やったところできてるじゃん」と前向きな言葉をかけていきました。
成績は最後の最後で2と3の混合編成になり(提出物全部出しました)、受験は無事に合格。後日談ですが、学校で話せなくなった理由として「先生が何を言っているかわからなくなってどんどん話せなくなった」とのことでした。前述の国語とスピードのことも関係してるかな。
「ありがとうございました」と筆談ではなく、自分の声で、言葉で、伝えて卒業していった彼女のお話でした。
POINT:学校見学で志望校を見つけた。相性のいい先生と出会えた。成功体験を積んだ。
学校の説明会や文化祭・体育祭に参加して勉強のモチベーションが上がる生徒もいます。そういう機会を意図して作ってあげることも保護者の役目かもしれません。
生徒の成長事例002 双子のやんちゃ坊主
それは神奈川県公立高校入試ギリギリの出来事。一ヶ月前ぐらいだった気がします。
突如双子の兄弟から入塾したいと問い合わせがありました。中3です。髪は染まってます。成績は見事1や2ばかり。この土壇場でやっと危機感を感じたのか、保護者の方に連れられて塾へやってきました。
「どうしても公立高校に行きたいっす」二人とも口ではそんなことを言っていましたがちょっとあやしかったんですよね。覚悟を試すためにもこんな風に伝えました。
「正直この時期からの入塾はお断りしています。それはこちらとしても満足いくサポートができないからです」
「そうですよね…」みたいに保護者の方はなっていましたが、二人はちょっとだけ嬉しそうな顔をしたのでそこで喝を入れました。
「いつまで親に助けてもらってるんだ!」今までニコニコしていた人が急に怒ったのだからそりゃビックリますよね。僕も若かったのです。
「自分の進路は自分で決めなさい!別に高校に行きたくないなら無理して塾に来るな。お金の無駄だ。それに塾に行ったからって高校に入れるってわけでもない。結局あなた達が頑張らなきゃどうにもならないよ。どうするか決めさせてあげるから、好きにしなさい」
説教タイムです。実際はおそらくもうちょっと長めに説教をしていて、ちょっと言い過ぎたな感もありましたが、弟の方が「こ、高校行くために勉強したいです」と言ったのにつられて兄貴も「お、俺も」みたいに言葉を並べました。まぁ、この時点ではこう言うしかないでしょう。
お母さんには「タイミングがタイミングなんで成果をお約束できるかどうかわかりません。どうしましょうか?」と確認の上、入塾が決まりました。後にも先にも、こんなギリギリの入塾はこれが最初で最後ですね。
当時の各科目のベテラン講師たちの空き時間を使って、徹底的に指導をしました。さすがベテラン講師たち。入試のポイントは抑えつつも、楽しい授業で知識欲を刺激し、さり気なく褒め、「わかる!」や「できる!」を積み重ねていきます。
ただ、途中でお兄ちゃんの方は挫折してしまいました。塾へ来なくなったのです。何度か話もしましたが、「そこまでして高校に行きたいわけでもない」ということでした。苦い思い出ですね。
最後まで頑張って塾に来た弟くんの方は二次選考で高校に合格。根性見せました。今までサボってたのが悪いんですが、圧倒的な量の課題も頑張ってやってきてましたからね。
「ここまできたら合格するしかない…」と最後の方はなんだか鬼気迫るものがありました。
最初の頃の授業にて講師たちのお陰で、「やればできる」を実感したのか、そこから一気に姿勢は変わった感じがしましたね。
受験前にかちっと黒髪になって、講師たちと「似合うじゃん」なんてみんなでいじったのはいい思い出です。
今でも当時講師だったMrサークルとよく話す、記憶に残っている生徒の一人です。
POINT:親に連れられて嫌々塾に来た→講師の楽しくわかりやすい授業で成功体験を積んだ→やっていく中で折角やってんだからいい結果出さなきゃ…と危機感が生まれた。
勉強して「わかる」「できる」っていうのは本来気持ちのいいものなんですよね。それが積み重なっていってその上の立つと、見える景色が広くなって、「あそこへ行きたい」「ここから降りたくない」と他のモチベーションが生まれてきます。
さぁ、ここまででちょっと長くなってしまったので、続きはまた次回にしましょう。今度は無気力な生徒や、何事からもめっちゃ逃げる生徒の事例をご紹介しようと思います。
「変わろう」と思った時の子どもたちのエネルギーってものすごいんですよね。その「変わろう」までどう持っていくかが、大人の腕の見せ所だったりします。そんな時の参考になる事例を載せられたら幸いです。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
家族以外の信頼できる大人に出会うって、子供時代にすごく大切な経験なんですよね。
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