僕は、人の親になったことがありません。
でも、このお仕事柄、子育ての難しさや大変さは、何となく理解しているつもりです。もちろん、まだまだ想像が及ばないことや、知らないことが沢山あることも承知です。
ですから、世の中の親御さんや保護者の方々を尊敬しています。いつも、すごいなぁって、素敵だなぁって、そんな風に思いながら面談をしています。
子どもを育てるって、当たり前に大切で、当たり前じゃなくすごいこと。日々日々、大変なことや苦しいことや腹の立つことや落ち込むこともいっぱいあるでしょう。
だから、本日はそんな親御さん達の助けになればと、先日このブログでも紹介した良書『LEARN BETTER』の内容も参考にしながら、「親と子どものために大人がしたほうがいい16のこと」というタイトルで、子どもたちへのオススメの接し方を紹介していきたいと思います。
タイトルの通り、これを実践してほしい大人は、親や保護者の方だけではありません。この少子化の時代、子どもたちの周りにいるすべての大人たちが、なるべく実践できたらいいんじゃないかという内容となっております。また、たとえ使わずとも、「頭の中の引き出しに入れておこうかな」程度に参考になったりしたら幸いです。
そんな想いを込めて、僕も含めた大人たちに伝えたいことをまとめてみました。「子どものため」ってだけではなくて、「親のため」にもなる方法論になったらいいな。
子どもたちとはつまり、世界の未来のこと。子どもたちのためになるということは、ひいては世界の未来のためになるということです。さぁ、未来のより良き素晴らしい世界のために。
参りましょう。
1 愛情を伝える
まず初めにお伝えしたいのは、愛情を伝えるということです。
これは何も「毎日愛してるよって言ってあげて」ということではありません。
子どもが「なんだかんだ自分って愛されてるんだよな」と、いい気持ちで言える状態にしてあげてほしいということです。
線を引いたいい気持ちというのは、引きつった笑顔や無理して言うとかじゃないってことです。行き過ぎた愛情表現や子離れできない親を持つ子どもは、なかなかいい気持ちで「愛されている」が認められません。
「よく怒られるしガミガミうるさいし厳しいし、でも俺ってすげー愛されてると思う。感謝してる」なんて気持ちいい笑顔で言ってもらえたら最高じゃないでしょうか。
鍵を握るのは、「存在承認」だと思います。詳しくは、こちらで褒めることのプロフェッショナル「褒め忍」なる者が解説をしてくれています。
2 大人を楽しむ
一番の教育って、大人が格好良くて、大人がすごくて、大人が楽しそうで、それを見ている子どもに「早く大人になりたい」って思ってもらうことではないでしょうか。
そのためには、大人がなんだかんだ人生楽しんでなくちゃね。幸福でなくちゃ。
もちろんそれだけじゃなくて、色んなことにチャレンジする姿とか、失敗した時の笑い飛ばし方とか、苦しいときに踏ん張る姿勢を見せるってのも、大人の役目だと思うんですよね。
改めて、自分へも向けて言い放ってみます。
さぁ、カッコイイ大人でいようぜ!今がどうかというよりも、そういようと、努力しようぜ!
3 使ってほしい言葉を使う
子は親を映す鏡なんて言いますよね。
『親の背中を子どもは見ている』でも書きましたが、子はよく親を、周りの大人を見ています。
そして、真似します。
ですから、子どもにしてほしいことを大人はすればいいし、子どもに使ってほしい言葉を大人は使えばいいのです。
時には、子ども扱いせず話すことも大切。それが精神年齢の引上げにもつながります。
「見よう見まね」が子どもの武器です。その武器を思う存分使ってもらって、僕ら大人の中にある各々のいいところをいっぱい吸収してもらいましょう。
4 期待する
心理学に「ピグマリオン効果」という言葉があります。
これは端的に言えば「期待されることによって成績が向上する」効果のことです。
簡単でしょう、期待するだけで成績が上がるんですから。やらない手はありません。
子どもの成長をワクワクしながら見守りましょう。子どもの人生にハラハラドキドキはつきものですが、周りの大人がいくら焦っても多くのことは解決しません。
いざという時に、しっかり支援できるよう、子どもが頼りやすいようにドーンと構えながら、心の中で滅茶苦茶ソワソワしましょう。子どもの可能性を信じて、だけど裏切られることだって想定しながら、目一杯期待してあげましょう。
大人たちの期待が、僕らの信じる気持ちが、子どもたちが創る最高に素晴らしい世界へとつながります。
5 場をつくる
冒頭で紹介した名著「LEARN BETTER」にこんな事が書かれています。
子どもが勉強する際はなるべくうるさい環境は避けさせること。情報が多いと無意識にでもそれを受け取ってしまい、ワーキングメモリーがすぐに容量オーバーになってしまう。
こういった環境の整備も、親や周りの大人たちの役目でしょう。
何でも合った環境というものがあります。砂漠で水泳はできないし、海の中で卓球は不可能です。子どもたちに合った環境を提供するのも大人の役目。
僕の大好きな社会心理学者のレヴィンは「場の理論」というものを提唱しました。これは、人間は個人の特性だけでなく、その人が置かれた「場」に影響を受けて行動するものだという説です。
「場の理論」によれば、個人の特性を開発するだけでなく、環境の開発を行わなければ、期待するような行動や成果は生まれないということです。やっぱり場作りって大事。
子どもが安心して成長できる環境を。それなりの自信を持って前を向ける環境を。刺激と学びと適度な失敗と困難に出会える環境を。集中しやすい環境を。それを作るのが僕ら大人の役目です。
でも、それってきっと、大人にとってもいい環境だと思うんですよね。
6 情報を適度に与えて考えさせる
大人は、子どもの知らない先の世界のことを知っています。
経験や知識も豊富です。ですから、ついつい何でも言いたくなってしまいます。心配もあるでしょう。不安もあるでしょう。そんなモヤモヤした気持ちが、自分でもいけないなと思いながらも溢れ出てきてしまって、言い過ぎてしまうこともあるでしょう。
でも、ここで改めて確認しておきましょう。情報は、与えなさすぎと同様に、与え過ぎもよくありません。ここでいう与え過ぎとは、全部与えて決めてしまうことを指します。まるでそれがあたかも自分の人生のように。
これまた僕の大好きな、あのすばる進学セミナーのあの中本先生のブログ『受験を越えて』でも、親の「無関心」と「過干渉」はNG行為との紹介がありました。少しケースは違いますが、とっても勉強になりますのでリンクを貼らせていただきます。
大人がするべきは、子どもたちにとって、よき案内人になってあげることです。
その際、いくら楽だからといって、答えを与えてはいけません。もちろんどうしようもない時もありますが、子どもたちにはなるべく、ヒントを渡すことを意識しましょう。何でも決定権は大人ではなく、子どもにあります。だってそれは、子どもの人生なのですから。
良書「LEARN BETTER」の中には、「親の仕事の一つは、子どもを不安な状態、答えがわからない状態に慣れさせること」という名言もあります。
最大限の助け船は出すし、考えるのに必要な情報はすべて渡すし、先回りもするし、お膳立てはもうそりゃ完璧にして、行く可能性のある道全部に必要なだけのスポットライトもありったけ準備しますが、だからといって「こっちへ行きなさい」と決めるのはなしです。用意したものが全部無駄になることだってあります。予想外のアクシデントが多発することも。
それでも、
選択肢を与えて、選ばせるのです。
7 決断させる
勢い余って上記で語ってしまいました。
子どもに決断させることにより、主体性が生まれます。何でも、やらされるより、やるほうが楽しいものですからね。
それに、決断させることで、責任感を芽生えさせたり、負荷を与えることができます。これはどちらも成長に必要不可欠なもの。
さぁ、どんどん選択肢を与えて、選択をさせましょう。
8 失敗をサポートする
「失敗は素晴らしい」「失敗は大事」「失敗しない人は何もしない人」を合言葉にしましょう。
挑戦したことを褒め、奨励するのです。また、結果ではなく、プロセスを承認しましょう。
それにより、失敗を恐れてチャレンジしない大人になることを防げます。
無難な人生は面白くありません。困難があるから、有難いのです。これは何も漢字上だけの話ではありません。いざやりたいことを見つけた時に、失敗を恐れていたら、何にもできなくなってしまいます。
僕ら大人が周りにいるうちに、子どもたちの失敗をサポートしながら、彼らが自ら困難に立ち向かえる心の力を育てておきましょう。
また、失敗したときというのは、失敗した際のリカバリーの仕方やなぜ失敗したのか分析することを教えてあげる最大のチャンスです。活用したいですね。
9 成功体験を積ませる
失敗も大事ですが、もちろん成功も大事です。
成功体験を積めば積むだけ、自己効力感(セルフエフィカシー)は高まっていき、挑戦する心の力がついていきます。その効果は、何か始めるときに足を一歩踏み出しやすくすることです。
この成功体験は、ある程度狙って作ることも可能です。お膳立てしながら、いいところで引き継いで、成功を体感させてあげるのです。
それを積み重ねていけば、多くのことができるようになっていきます。遥か遠い場所に辿り着くために重要なことは、目の前への一歩を踏み出すこと。その一歩を踏み出す心の力を育てましょう。
10 分けてあげる
一度で食べきれないパンケーキも、分ければ残さず食べきることができます。
その「いつ食べるか」を決めることを、計画と呼びます。多くの子どもは計画を立てることが苦手です。手伝ってあげましょう。
それに、誰しもが忘れます。「LEARN BETTER」の中にも「忘却を計算に入れて、計画を立てること。一気にやるより、時間をかけて分散して取り組んだほうが効果が高い」というくだりがあります。忘れないためには、繰り返しが必要です。一度ですべて覚えようとせず、分けてやるのです。
さらに分けることは何かに挑戦する際の良き考え方にも繋がります。一つの事柄を、いくつものプロセスに分け、計画・実行・見直し・改善のようなプロセスを学ばせてあげましょう。とても敵いそうにない大きな困難も、永遠に叶いそうもない果てない夢も、分けてみれば、そこに向けて何をすべきかが明確になるかもしれません。これは経験値の高い大人だからこそ、アドバイスできることです。
また、喜びや楽しさは分けると倍に、悲しみや苦しみは分けると半分にという諺もありますね。その日あった色んなことを子どもたちともシェアする文化を持ちたいものです。
11 負荷を与える
いつか僕ら大人は、彼らの目の前から姿を消します。
その時に、一人で生きていく力を、彼らには身につけておいてもらわねばなりません。この準備は早いうちからしておくに越したことはないです。
新しい体験をさせましょう。新しい人と話させましょう。何か困ったことがあってもすぐには助け船を出さず、人としておかしなことをしたらしっかり注意しましょう。
人が成長するには、負荷が必要です。
人間は弱い生き物ですから、何も枷がなければ、どんどん楽な方に流れていきます。それはお互いのためになりません。
子どもにとって、今できないけれど努力次第で次の瞬間にはできるようになるような、ちょうどいい負荷を。
与えられすぎた負荷に限界を迎えそうになっているときは、大人の腕の見せ所です。「次はこうしたらいいよ」というのも学ばせながら、本気を見せてあげましょう。
12 コントロールする
子どもが人に迷惑をかけているとき、その恐れがあるとき、何か悪いことをしてしまったとき、過ちを犯したとき、僕ら大人がすべきこととは一体何でしょうか。
目一杯叱ること?嗜めること?細かく注意すること?優しく包むこと?それはケースバイケースであって、もちろん正解はないでしょう。
だけど、多くの小さな子どもにとって、身近な大人こそが、警察であり裁判官であり審判であり世界のすべてであることを忘れてはいけません。
子どもは、子どもです。何が良くて何が悪いのか、ちゃんと教えてあげる必要があります。ルールを知らせてあげる必要があります。そのことを忘れないようにしましょう。
そして、悪いことが起こらないように予防することも重要です。
子どもたちの目が、足が、悪い方向へ向かないように、大人たちは気を張らねばなりません。ムクムクと育つその暗黒の芽は、たしかに見つけづらいですが、あらゆる能力を総動員して向き合わなければなりません。
世にはその芽を成長させる誘惑や暗闇が沢山存在します。厳しい戦いになりますが、僕ら大人は決して一人で戦っているわけではないことを忘れないようにしましょう。
我ら大人連合軍。子どもたちを見守り、時には本人たちすら気づかないように導き、なるべく明るい道を歩いてもらえるように尽力していきましょうね。
子どもたちの命を、子どもたちが上手に使えるように、大人が手助けをしてあげましょう。
13 弱さを見せる
大人だって、人間です。
大人には、時に頼れる戦士であり、知恵を持つ賢者であり、冒険の支援をする王であることが求められますが、またある時には、仮面を外して弱き人に戻る権利も与えられています。
信頼する仲間には、心を許すものです。その仲間に、子どもたちが含まれることもあるでしょう。
楽しいだけじゃない大人を見て、苦しむ大人を見て、頑張る大人を見て、子どもは覚悟をしていきます。そして、無意識的にも安心をしていきます。
人生、いいことばかりじゃない。でも、大抵のことで死にはしない。大丈夫。大丈夫。
そのことを実感して、強くなっていきます。
大人がいつでもスーパースターである必要はありません。輝かない時があるからこそ、輝く瞬間が眩しく光って見えるのです。
14 多様性を伝える
いくら僕ら大人が先のことを知っていると言っても、世界には知らないことが星の数以上にあります。
何が正解で、何が間違いかなんて、たった場所が変わるだけでコロコロ変わります。そのことを子どもたちにも少しずつ伝えていきましょう。
グレーゾーンの中で、対立構造の中で、折り合いのつかない考えの中で、じゃあどう折衷案を作るのか、物事を良い方向へ持っていくのか、平和的に解決するのか、そんなことを可能にするには、様々な考え方を知り、認め、考えを深めておく必要があります。
その力を伸ばすには、新しいものにどんどん挑戦させるべきです。色んな場所へ行って、色んな人と話させて、色んなものを経験させて、色んなことを肌で感じさせるのです。
すると、だんだんと自分の中に色んな小さな自分が創られていって、肉体的にも精神的にも強くなっていきます。客観視ができるようになり、些細なアクシデントではビクともしないタフな子になっていきます。困った時には自分の内なる自分と相談し、適切な答えを選べるようになるでしょう。
また、広い世界の中で、あっちもいい、こっちもいい、そっちもオッケー、向こうも素晴らしい、のように世の中には様々な人や考えが同居していることを知れば、はみ出すことや逃げ出すことも怖くありません。
世界はいつだって変化し続け、多様です。それを知っていれば、変わることは苦ではありません。そして最後には、変化できる者が生き残るのです。
15 カスタマイズする
ここまで長々と述べてきましたが、台無しにするかもしれない一言をここで述べましょう。
子どもも大人も、結局一人一人違います。
ですから、誰もに共通する正攻法なんてありません。ここに挙げてきた内容も、合わない子どもややりたくない大人だってもちろんいるでしょう。それが当たり前です。だって、好き嫌いだって全員違うのですから。
だから、必要なのは、カスタマイズです。
渡すものや伝えることを、子どもやタイミングや状況や自分に合わせて変えていくのです。
そのために必要なのが、冒頭でも触れた「引き出し」です。大人側はこの引き出しを沢山持っておいて、その中から目の前の子どもに合った素敵なギフトを贈る必要があります。
リボンをつけたほうがいいかな、青色の包み紙がいいかな、もしかしたらこっちの方が喜ぶかな、サプライズよりも普通に渡した方がいいかな、そうやってギフトについて試行錯誤するのが、僕ら大人の使命ではないでしょうか。
16 一人の人として尊重する
最後にお伝えするのは、とても当たり前のことです。
僕も、今これを読んでくださっているきっと大人のあなたも、大人も、子どもも、皆同じ時代を生きる一人です。
時にはぶつかったり、意見が合わなかったり、嫌いになったり、無関心になったり、疎遠になったり、まぁ、色々あるでしょう。
でも、これは自分の人生です。他の人のものではありません。
同様に、誰かの人生は誰かのものです。誰かの時間は、誰かのものです。それはたとえ自分の子どもであっても。
ですから、自分ではない者の人生を尊重しましょう。その人にとっての幸福はあなたが決めるわけではないし、その人の物語ではいつだってあなたは脇役です。
何も誰かを責めているわけでも難しいことを言っているわけでもありません。
そのことを逆説的に言えばこうなります。
あなたは、あなたの人生を、尊重しましょう。
あなたがHAPPYに暮らしていれば、それだけで子どもだって嬉しいものですよ。
さて、だいぶ長くなってしまいましたが、この記事はここでおしまいです。
どちらかというと自分自身へ向けて書いた節もあるので、定期的に僕も読み返そうと思います。
お疲れ様でした。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
そしていつか子どもは大人になる。
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