さぁ、始まりました。
2019年度の高校入試問題を勝手に分析して感想を言うコーナー、最初の科目は「国語」です。
入試当日は、2番目に行われた科目ですね。
構成は、昨年と変わらない問5までで14ページ。配点もほとんど変わらず、問4の「2つ合わせて正解」記述問題の順番が変わったのみでした。
その中身は、実に僕好みだったのですが、その詳細は後ほど。
それでは早速概要や中身を見ていきましょう。
全体の傾向
まずは全体の傾向から。もう遠慮なく言ってしまいます。
難化
あくまで実感値ですが、おそらく合格者平均点は下がるんじゃないでしょうか。
神奈川県教委としては全科目の合格者平均点は大体50点を目指しているということですから、国語については狙い通りの難化かな。昨年の平均が65.6点でしたからね。
じゃあ一体どこが難化したのか、その中身を見る前に、参考までにうちの塾生たちの感想をどうぞ。あんまり参考にならないかもしれませんが。
塾生の感想
「文字多い」→毎年誰か言う
「漢字ビビった」→何にビビったかは後のお楽しみに。
「蕊っていう字が気持ち悪い」→俳句で出てきました。
「両頭の蛇、気持ち悪い」→蛇嫌いの子が想像してしまってテンションダウン。でも古文全問正解。偉い。
「フィンセントって格好いい」→例のあの人のことですよ。超有名人。
「時間が足りなくて焦った」→たしかに、時間との勝負だったかも。
「2択で迷った」→結果迷った問題は全問正解した強者でしたが、まだ鍛錬が必要ということだね。
「言葉が難しかった」→なんだか全体的にね。
まぁ、他にも色々と貰ったのですが、ここで挙げたかったのはざっとこんなところですかね。後ほど実際の問題を見ながら、彼らの感想を思い出していただけたら幸いです。
次に、配点です。ここは概ね昨年と同じ感じですね。上記でも述べた通り、問4の並びに変化がありました。
配点
問1 各2点 計20点
問2 各4点 計16点
問3 各4点 計24点
問4 (ア)2点 (オ)両方できて4点 他各4点 計30点
問5 (ア)4点 (イ)6点 計10点
それでは、お待ちかね(誰も待ってないとは筆者には言わないように)、大問ごとにチェックしていきましょう。
大問ごと要チェックや!
謎のテンションのタイトルは置いといて、先へ進みます。
まずは漢字やら文法やら俳句・短歌の問1。
なんと問1にして、受検生たちの前に最強の敵が現れます。
そうです、問1の(ア)の3!
出ました!おそらく今回の最難関問題「彫塑」!これを読む問題!
大人の皆さん、わかりますか?ちょっと一瞬考えてみましょう。
はい、終了です。
それでは正解の発表に参りますね。
そう、これは「ちょうそ」と読みます。
え?彫塑って何って?
ええ、ええ、大体みんなそう思いますよね。僕も「そう」とか言いましたが、意味わかりませんでした。
ちょっと辞書をひいてみましょう。意味を見れば彫塑がなんだか掴めるはずです。
彫塑 1 彫刻と塑造(そぞう)。また、その作品
うん、よくわからん。
でもね、スタッフは懸命に調べを続けました。すると、台東区にある朝倉彫塑館さんの説明ページにこんな記述があるのを見つけました。彫塑ね、ちゃんと説明がありましたよ。でも、ちょっと言いにくいことがあるみたいです。だけど、勇気を振り絞って、なんと今日、ここに来てくれています。
「彫塑」という言葉は、あまり身近ではないかもしれません。日本にも古くから「塑造」の技法はありましたが、明治時代はじめまで主な彫刻技法は彫り刻んでいく「彫刻」でした。sculptureの訳語として、彫り刻む技法「彫刻(carving)」とかたちづくる技法「塑造(modelling)」を合わせて「彫塑」という言葉が生まれたのです。提唱したのは大村西崖という朝倉の先生でした。朝倉は「彫塑」という言葉に拘りを持ち、朝倉彫塑館と命名したのです。しかし、「彫塑」という言葉は定着しませんでした。現在、日本では「塑造」を含んだ広い意味で「彫刻」と呼ぶことが一般的です。
うん、「定着しませんでした」と言われているこの言葉が入試で出るとは面白いものですね。
これは国語の平均点を下げたい県教委の「よし!最初に難しい問題出して動揺させたれ」という罠なのかもしれません。
(ウ)は接続助詞の問題。前後の接続が読み取れれば簡単です。
(エ)は、短歌・俳句ゾーン。俳句→短歌の隔年現象は、今年予想通りの俳句でしたね。予想が当たったから解けるというものでもありませんが。
「向日葵の蕊を見るとき海消えし」と詠んだ芝不器男先生は、26の若さで亡くなった愛媛県出身の俳人。写真のピント合わせのような、ズーミングが見事な句ですね。
続いての、問2は古典です。
昨年に比べて注釈が多い印象。そういえば一昨年も多かったなぁ。
ここでの注目は文中の時代。これは中国春秋時代のお話ですね。そう、あの炎のように熱い漫画『キングダム』の時代の少し前の時代のことです。※キングダムは春秋戦国時代のお話。
文中の晋が、韓(かん)・魏(ぎ)・趙(ちょう)の三国に分裂して、戦国時代が始まるんですよね。
そこからの熱い歴史物語。これはまさしく必見です。いや、ぜひ読んでもらいたい。
え?キングダムがいいのはわかるけど、今はどうでもいい?
大変失礼致しました。お詫びに前半部分のざっくりとした訳を載せておきます。
昔、孫叔傲という人がいて、幼少の時に、外に出て遊んでいたところ、二つ頭のある蛇を見た。その後、その子の母が、「おまえはどういうわけがあって、ものも食べずに泣いているのか?」と訊いたので、その子(叔傲)は言った。
「今日、私は両頭の蛇を見たので、明日まで生きながらえることはできないでしょう」
この母はもともと賢い人なので、ほかの事は聞こうともせず、まず「その蛇は、どこにいる?」と訊いた。
叔傲は言った。
「両頭の蛇を見た者は必ず死ぬと聞いているから、ほかの人が見ないように、蛇は殺して埋めました」
母はこれを聞いて言った。「悲しまなくてもよい。おまえはきっと死なないよ。そのわけは、人として陰徳(隠れて善行を積むこと)があれば陽報(あきらかな良い報い)がある、という事があるので、(ほかの被害者が出ないように処置した)お前は死なないばかりか、そのうえに楚国で出世するだろうよ」
叔傲は成人してのちに、偉い人の補佐をする役人になった。彼は他人のことを思いやれる人だと、その国の民の信望を集めた。
ちなみに、出典にある「実語教」や「童子教」とは、鎌倉時代から明治初期にかけて普及していた庶民のための教訓を中心とした初等教科書のこと。江戸時代には寺子屋で用いられていたそうです。作者は不明なのだとか。たしかに面白いお話でした。
選択肢に関しては、「あ、これは教訓モノ」と思って解ければ、割と選びやすかったのではないでしょうか。ただ、二択で間違えやすい印象。正答率はそこまで高くないかもしれません。
そして、これまた激アツの小説文である問3。
作者!原田マハ!
このブログでも、過去に読みやすい著作をいくつかご紹介しましたね。
そんな原田マハさんの真骨頂といえば、元キュレーターの知識を活かしたアート小説。
『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』に続く2017年に幻冬舎より出版された素敵な作品が『たゆたえども沈まず』です。あの天才画家ゴッホや林忠正さんという実在の美術商の方を題材とした物語です。
僕も冒頭で「ん、これどっかで読んだな」と気付いて、出典を見て「あ、やっぱり」となりました。おかげで問題は本文をほとんど読まずともなんとなく解けました。
ちなみに、文中にいっぱいい出てくる「フィンセント」がゴッホです。知ってた?
それにしても良き場面をチョイスしたなぁ。
それにしても、問1で向日葵を出しておいて、ここでゴッホなんて、演出が素敵ですね。
選択肢としては、傍線部の前後と選択肢をきちんと読めば正解に辿り着けるかなという印象。(イ)と(オ)は言葉自体が難しくて困った受験生も多いのではないでしょうか。
続いては、話題のAI話!の説明文、問4!
ここでの注目は、なんといっても冒頭に出てくる『天空の城ラピュタ』のキャッチコピーでしょう。
実際のラピュタの作品紹介に使われている文言はこちら。
ある日、少女が
空から降ってきた…
「ガリバー旅行記」の中で伝えられた空中の浮島ラピュタ帝国
そこに秘められた謎の飛行石をめぐってくり広げられる波瀾万丈の冒険活劇!
主人公は見習い機械工の少年パズーと帝国の血をひく少女シータ
機械がまだ機械のたのしさを持っていた時代
科学が必ずしも人を不幸にするとは決まっていないころ
そこではまだ世界の主人公は人間だった…
そう、ここで言われている「主人公」の移り変わりが、この文章の重要なテーマでもあります。「あたらしい技術」が、人間に変わる新しい主人公になる?そんな時代に我々人間はどうすればいいのか!?秘められし「本当の」自動運転とは!?そして、謎の飛行石の行方は!?
と、ちょっと時空が混ざってしまいましたが、問題の感想に移りましょう。
またまた長文、それに連投される慣れない言葉やカタカナに、滅びの呪文を唱えたくなった受検生も多いとは思いますが、注釈も駆使すれば割と解きやすい問題のように感じました。
ただ、レベル別で正答率が分かれそう。ある程度の語彙がないと意味が掴みにくいかもしれません。できる人はできる、壊滅する人は壊滅してしまう、そんな問題でしょうか。
ラストの問5は時間との勝負!?
さぁ、いよいよ最後の問題です。
ここまで好き勝手やってきましたが、ついてきてくれていますでしょうか。きっとこのブログのファンである3、4人くらいはまだ生き残ってくれていると思っています。
今、こちらは深夜二時半です。ついつい軽い気持ちで始めたら、いつの間にかこんなに時間が経ってしまっていました。そして、この時間に明日のゴミ出しの仕分けがまだ残っていることに気付いてしまいました。
「面倒臭い」
そんな風に思ってしまった僕を横目に、Aさん、Bさん、Cさん、Dさんによるゴミについての話し合いが始まりました。問5です。
少しでもそんな風に思ってしまった自分への戒めも込めて、真剣に解きました。
(ア)は、1の「半分近く」が☓。2と3も数値が合わないから☓。4はピッタリ。というわけで、4。落ち着いて解ければ大丈夫だと思うのですが、言葉が難しい上に、解く順番が最後だとしたら時間的に焦ってきっと間違えやすいですよね。
(イ)も、雑がみ=「紙製容器包装」の構図が読み解ければ、そこに具体的に触れながら書き進めることが容易かと思います。
ちょっと答えを確認してみましょうか。
問5の(イ)に関しては、別解もあります。
ん、そういや今日、雑がみの日だ。
分別、大切。というわけで、最初の国語の分析はここまでです。
また正答率など分かり次第、今回の実感値との違いも含めて、お伝えしますね。
何処かで誰かの参考や興味につながったら幸いです。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
非受験生は、今日もせっせと語彙増やしが入試高得点への近道だね!
よーし、やっと書き上げたと思ったら、すばる進学セミナーの中本先生がすごい記事をあげていたのでこちらもご紹介です。
0コメント