原稿用紙と向き合う。
うーん、何も出てこない。
背もたれに寄りかかりながら、虚空を見つめる。
あー、やっぱり何も出てこない。
鉛筆を握り締めて、机にトントン。くるくる回してみて、たまに落っことす。
それをゆっくり拾ってみても、周りを見渡しても、目を瞑っても、一文字も、何も出てこない。
まるで僕の中から、文字が消えちゃったみたい。
でもね、焦る僕に、
それでもいいよ、って先生が笑顔で言ってくれると、
不思議。
書くことの楽しみを思い出す。書きたいって衝動が騒ぎ出す。ワクワクする。
瞬間、溢れるほどのアイデアがわっと湧き出てきて、
「えーい、とりあえずこれで書いちゃえ」って、僕は勇気を持って一歩を踏み出せる。
僕は、書き出す。
鎌倉の地で、新しい塾が誕生しようとしています。
その名も「かまくら国語塾」。
すばる進学セミナーの中本先生による、「書きたいこと、読みたいものを、どこまでも。」をコンセプトとした、書く喜び、 読む楽しみを追及できる塾です。塾というか、先生のお言葉を借りるならば、言葉を楽しく編む場、ですね。
その船出となる記念すべき第一回目のワークショップに、畏れ多くも伺わせていただきました。見学だけの予定だったのですが、中本先生に急遽「実際に参加してもいいよ」と仰っていただき、ワクワク緊張しながら参加させていただく運びとなりました。
「自由に書いていいよ」
はじめの説明で中本先生が話されていた、そんな言葉が印象的でした。
受験のためじゃない。将来のためじゃない。「出来る」よりも、「好き」を。「好き」よりも、「楽しい」を。書きたくなかったら書かなくてもいいし、誰かに見せる必要もない。自由に書いていいよ。
僕はその説明を聞きながら、一人教室の奥の方で感動していました。
だってね、その時の子どもたちのキラキラした目。ワクワクが溢れる笑顔。嬉しそうな動作。
「自由に書いていいよ」
その響きが、嫌がる人も多い「作文」に、素敵な魔法をかけた瞬間でした。
かまくら国語塾には、そんな自由を守るために、「書き手の権利10ヶ条」というものがあります。
うん、まずイラストが可愛い。
そして、ご覧いただいて分かる通り、なんだか新しい10ヶ条ですよね。
この10ヶ条を象徴するかのように、教室には原稿用紙をクシャクシャにして捨てるBOXなんかもありました。そこへ誰かが文豪にありがちな原稿用紙を捨てる動作をするのを、子どもたちはキャッキャしながら楽しみに待っていましたね。
自分が文章を書くのに夢中だった僕は、おかげで先生の子どもたちへの声掛けを全然聞けなかったのですが、まぁまぁ素敵な文章が書けたと思います。何より、ただただ自分の書きたいことを書くということ、心の底から楽しかったです。また、子どもたちの発想など大きな学びになりました。
この塾を開くにあたり、中本先生が参考にされていた「イン・ザ・ミドル」という本も、それはそれは大きな学びをくれました。自塾での作文指導に役立てたいと思います。ご紹介ありがとうございました。
そして何より、こんなにも素晴らしい会に参加させていただいたこと。本当にありがとうございました。僕はきっとこの日のことを忘れません。人間にとって書くことは娯楽の一つなんだと、改めて感じさせていただきました。
「楽しかった?」
先生の最後の問いかけに、みんなが一斉に手を上げたあの瞬間。僕も手を上げながら、なんだか泣きそうになっていました。楽しかったのに、泣きそうになるなんて、なんだか不思議だね。
教室にはイルム元町スクールの甲斐先生もカメラマンとしていらっしゃっており、以下のような素敵なお写真頂戴しました。僕の数多の言葉よりも、この写真から伝わるものの方が多いかと思います。
文章を書くということは、旅をすることと似ていると思います。
予定ありももちろん楽しい。予定なしもワクワクする。予定があっても変わることもあれば、予定なしで大失敗することもある。出会いや別れはつきものだし、文化の違いに戸惑うこともあるし、思いつきでゴールが伸びることも、人生を変えることもある。いいことばかりじゃない。辛く苦しい時だってきっとある。
でもね、そのすべてが、決して無駄にはならない。
経験になって、思い出になって、いつか笑える日もあれば、役に立つ日だってあるかも。わからないけれど、そのもの自体が楽しいんだから、それだけで宝物だ。
きっと今日参加していた子ども達も、いや大人達も、宝物をギュッと掴んで教室を出ていったことでしょう。
本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。
さぁ、旅に出よう。もう頭の中からでも、旅は始まる。
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