神奈川県公立高校入試問題分析と解説2020(令和2年度) 世界の社会編


さぁ、今年も始まりました入試問題分析シリーズ。


最初の科目はパッと見で個人的に一番好みの問題だった社会です。じっくり一問ずつ見ていこうと思います。


第二弾は数学


第三弾は英語


第四弾は理科


それでは、まず全体の傾向から参りましょう。



全体の傾向



形式の変更はありましたが、


易化


理由は前回の記事でも述べています。平均点も上がるのではないでしょうか。割と「え、こんな簡単でいいの?」という問題が多かったような気がします。


だけれど、文字数といい、出題の仕方といい、紛らわしくさせるのが神奈川入試問題の特徴。簡単な内容でも大層な出し方をするこの方法が僕は割と好きです。「ちゃんと文章が読めないといけないよ」っていう警鐘が聞こえてくるようです。



生徒達の声



「基本的には簡単だった」


「最初の図の意味を理解するのに時間がかかった」


「安定の地形図さんこんにちは」


「と思ってたら時差さんもおかえりなさい」


「問7ビビった」→過去は地理二問、歴史二問、公民二問の問6までが基本。


「1日の終わりが気持ちよく終われた」




配点



問1 (ア)3点 (イ)5点 (ウ)4点 計12点

問2 (ア)2点 (イ)4点 (ウ)4点 (エ)4点 計14点

問3 (ア)3点 (イ)3点 (ウ)3点 (エ)3点 (オ)3点 計15点

問4 (ア)3点 (イ)3点 (ウ)2点 (エ)(i)3点 (ii)3点 計14点

問5 (ア)2点 (イ)2点 (ウ)4点 (エ)両方できて3点 (オ)3点 計14点

問6 (ア)2点 (イ)3点 (ウ)(i)両方できて3点 (ii)2点 (iii)4点 計14点

問7 (ア)4点 (イ)3点 (ウ)4点 (エ)両方できて6点 計17点


ここは大きく変わりました。地理歴史公民複合問題の問7新設の影響で、地理・歴史・公民各大問への配点も少なくなりました。ビックリした子も多いと思いますが、「予期せぬ事は起こる」ということに、もうそろそろ慣れてきた神奈川受験生たち。動揺せずに解けたかな。


ちなみに昨年の配点はこちら。

問1 各3点 計18点 問2 (ウ)の(ⅳ)2点 他3点 計17点 問3 (イ)あ、い両方できて3点 (ウ)3点 (カ)6点 他各2点 計18点 問4 (オ)(ⅰ)く、け両方できて3点 (ⅱ)2点 他各3点 計17点 問5 各3点 計18点 問6 (イ)え、お両方できて3点 他各3点 計12点



それでは一問ずつ見ていきましょう。



問1 世界地理



問1は世界地理の問題。最近アースボールを買った僕にとっては朝飯前でした。


(ア)は、この図が「地図の中心(北極点)からの距離と方位が正しく表されたもの」であることに注意。答えはの「いない」と「B(赤道だから一番長い)」。「いないならわざわざ書くなよというツッコミは野暮。


(イ)は、プロテスタントもカトリックもキリスト教ということを知っていれば、秒でaが削れます。というわけで選択肢から正解確定のbは、76(億)×0.071と13(億)×0.798で比べても後者の方が多いから、やっぱり正解。cは約18%ぐらいだからバツ。割合がわかっていれば計算せずとも10%を見極めて答えが出せます。dはcが削れたわけですから計算しなくても正しいことはわかりますが、工業製品(機械類)と鉱産物を足して総額と比べれば確かめができます。eは円グラフのほうが割合が分かりやすいからバツ。というわけでfが正解。よって、


(ウ)は、エの都市のお話。アメリカ西海岸。行った事ありますけど気候がいいんですよね。サンベルトやシリコンバレーと呼ばれる地域付近という事で、が答えになります。




問2 日本地理




実は僕、黒部も行ったことあるんです。黒部ダム。その近くにあるカルデラ博物館を訪れました。長野側には渡らなかったのですが、貴重な経験をした記憶があります。あと、中島みゆきも昔そこで地上の星を歌っていた記憶があります。問題に集中しましょう。


(ア)は、フォッサマグナ。ラテン語で「大きな溝」を意味します。東北日本と西南日本の境目ですね。興味がある方はこのまま検索してみよう。


(イ)は、近くの都市の雨温図の問題。北陸地方は、新潟県、富山県、石川県、福井県の4県、もしくは富山県、石川県、福井県の3県を指すので、答えは石川県の県庁所在地金沢市。雪が降るので、bが正解の雨温図。ちなみに、年間雷日数は日本で一番多いそうで、特に冬の雷が多く観測されるようです。ということで、答えは


(ウ)に参りましょう。1は明らかに嘘。2はこの図じゃ不明。3はそんなわけない(30%)。というわけで、が正解。計算してもそうなる。


(エ)は、安定の地形図問題。駅は、新黒部駅から2つ目だから荻生駅。新黒部駅に立ったていで、左手方向にある交差点だから、天池の交差点が正解。というわけで、



問3 大分県の歴史から派生して江戸時代までの歴史



問3は歴史。今回は大分県にクローズアップです。今回のテーマは地方活性化でしょうか。


(ア)は、西暦の表記の問題。少し前に、1世紀が1年から100年までのことで、21世紀が2001年から2100年までのことだよー、2001年になるときに「21世紀だー」ってはしゃいだでしょう?って説明したら、子どもたちはみんな2000年代生まれで驚愕した覚えがあります。ちなみに、大人に聞いても「別にはしゃいでない」という答えが返ってきました。僕だけのようです。601年から700年までが正解。


(イ)は、神奈川社会名物の並び替え。豊後の風土記は現存する5つのうちの1つで奈良時代のもの。奈良時代に天皇に献上した報告書のことを風土記と呼ぶんですね。IIは天領のお話。江戸時代のことです。IIIは、足利尊氏にピンときて欲しい。あのAKG48の初代センターです。

冗談はさておき、室町時代のことってことだね。よって、が答え。


(ウ)は、これまた並び替え。有名どころばかりなので、スラスラいきたいところ。大宝律令が701年ごろ。藤原道長が1016年ごろに摂政になりました。平清盛はいい胸毛の語呂で覚えた人も多い1167年に太政大臣。ですから、が答え。

(エ)は、屏風についてのお話。Xの選択肢の消去法でもいいですし、虎と十字架からヨーロッパからの来訪者と判断してもオッケー。十字軍は11世紀末、元寇は13世紀、宗教改革が16世紀だから、答えは


(オ)は、江戸時代のお話だから、が正解。上の年表の水色のところにいます。1は平安時代。2は、室町時代。3は、鎌倉時代のお話ね。



問4 日本と海外との歴史を絡めた近代の歴史



問4は国際色豊かに始まります。先程の屏風といい、なんだか全体的に国際的な感じがするのはオリンピックイヤーだからでしょうか。関係ないですかね。


(ア)は、はいはい、もはや慣れてきた並び替え。Iは1894年にイギリスと結ばれた日英通商航海条約でしょう。IIは岩倉使節団で1871年頃。IIIは、不平等条約による関税自主権についてのお話。この3つのストーリーは大事ですので抑えておきましょう。


そもそも、Iで話題になっている領事裁判権は、IIIと同じ1858年の日英修好通商条約という不平等条約で決定された仕組みです。ちなみに、他の不平等条約もこの年です(日米修好通商条約、日仏修好通商条約、日露修好通商条約etc)。ポイントは、文中にある領事裁判権と関税自主権でしたね。それがノルマントン号事件で風向きが変わり、日清戦争直前に撤廃されたわけです。ただ、関税自主権の方はなかなか回復せず、1911年まで延び延びになります。というわけで、不平等条約→撤廃のための行動→撤廃の流れのが答えです。ドラマですね。


(イ)は、人々の生活についての問題。1の家電三種の神器は戦後のお話だからバツ。3の太陽暦採用は1872年で明治前半のお話だからバツ。4の学童疎開は第二次世界大戦後半のお話だからバツ。よって、が正解となりますね。


(ウ)は、国家総動員法が制定されたのは、日中戦争中。そこから太平洋戦争に突入していく流れを掴んでおきましょう。議会の力が弱まり、軍部が力を持つようになりました。よって、が正解。


(エ)の(i)は、日中共同声明の内容。戦争状態の終結後の共同声明っていうぐらいだから、国交の正常化が発表されています。また、辛亥革命の孫文亡き後、中国国民党を引き継いだのが蒋介石、その後、中国共産党の指導者で、中国国民党との争いに打ち勝ち、中華人民共和国の初代国家主席になったのが毛沢東です。というわけで、が答え。


(エ)の(ii)は、グラフを読み取る問題。1985年は僕の生まれた年でもあるのでフォーカスされて嬉しい限り。読み取れることは簡単かな。見たまま。説明文の方は知識が必要ですが、aはエネルギー革命のお話で1950年代〜1960年代のことなので、bが正解。というわけで、



問5 経済



さぁ、ここまででだいぶ読んできたと思いますが、まだまだ続きます。大人の皆さんでも疲れてきたでしょう。これを4科目やってきて最後の最後に解く子ども達、大したものです。


(ア)は、インターネットのお話。デジタルネイティブ世代のみんなは余裕だったかな。楽天やアマゾンやZOZOを知ってれば余裕だね。が正解。


(イ)は、領収書を見ながら答える問題ですが、これぞほぼ半ページを使った壮大な目眩し。医療費負担で社会保障だなとわかればそれでOKというお話。ということで、


(ウ)は、適切でないものを選ぶから注意が必要です。それにしても割合よく出てくるなぁ。でも計算はしなくて大丈夫でしたね。1は人数を比べれば正しいことがすぐわかる。3も4もその通り。2は割合でなく人の数を聞いているので間違っています。よって


(エ)は、利子のお話。後半は、日本の中央銀行つまり日本銀行のお仕事について。日本銀行って名前が出てくれば正答率だいぶ上がったでしょうが、どうでしょうか。答えは「利子」とA


(オ)は、価格や景気変動のお話。aは逆ですよね。bはその通り。大変だもんね。cはこれまた逆。好景気の際に起こりやすいのはインフレです。dはまさしくその通り。よって、。みんながお金使わないと景気って良くならないんですよ。



問6 政治・国際社会



問6は、Kさんの振り返りレポートのお話。ちゃんとレポートを書くなんて、偉いですねー。ただちょっと抽象的だと思うんですが、文章を直す問題ではありません。


(ア)は、正誤判定。Xは補償を求めることができるので誤。刑事補償法といいます。一般的に勾留などでは1日当たり1,000円以上12,500円以下の範囲内で、裁判所が定める額が補償されるそうです。Yは保障されているので正です。いっぱい「ほしょう」があるので整理しておきましょう。


補償:損害などを補いつぐなうこと。

保障:責任をもって安全を請け合い、一定の地位や状態を保護すること。

保証:まちがいなく大丈夫であるとうけあうこと。


(イ)は適切でないものを選ぶ問題。1は問題ないですね。2はその通りです。4は、裏金とかじゃありません。ちゃんとあります。3は、1/50以上ではなくて1/3以上が正解。よって、


(ウ)の(i)。「他の国がおかすことができないそれぞれの国がもつ権利のこと」とは主権のこと。排他的経済水域では、沿岸国も資源を自国のものにできます。よってB


(ウ)の(ii)。こちらも正誤判定。急にこの形式にまたはまったな、教育委員会。これはどちらも正解。よってが答え。


(ウ)の(iii)。また出てきましたよ、割合が。ただ、最も適するものを選ぶだけですから、難易度はそこまで高くありません。1は見たままバツ。2は乳児死亡率が高いのは正解だが、家計などから支出された医療関連支出の割合が最も低くはない。3は、これまた違うのが見てわかる。は、言われた通り見てみたら正解。ここも計算ほぼなし。



問7 地理歴史公民横断問題



さぁ、新傾向の問7でラストです!「問題は、これで終わりです」の文言が眩しい。そして、12月28日にニューヨークに旅行に行くKさんはもっと眩しい。いいなぁ。それにしても、なんでもレポートに書くな、この子。素晴らしい。


さぁ、俄然盛り上がってまいりました。(ア)です。みんなが待ち望んでいた時差の問題が出ましたよ。図を書けば簡単でしたね。


よって、答えは


(イ)は、兵力とか陸軍とか言っちゃってますから「軍事的な措置」のお話ですね。「すべての人間は…」の文言は世界人権宣言のものです。よってが答え。


(ウ)は、まさかの感想文の中の間違いを見つける問題。それにしてもすごい間違い。アメリカ独立戦争は明治維新から影響を受けたわけじゃないですよね。Kさん!


さぁ、最終問題。


(エ)の(i)は、「雇用」を使った記述。これは簡単ですね。雇用をうみ出すとか雇用をうむとか書けていればOKでしょうか。


(エ)の(ii)は、ちょっと悩むかな。1929年に起こった世界恐慌で一気に失業率が上がって、1933年のニューディール政策の一環であるテネシー川流域開発公社等の政策で少し回復した流れのお話でした。よって答えはCです。




まとめ



いやー、終わりました。長かった…


一気に書いてきたので、(一応見直しもしましたが)もしも間違いなど見つけたら至急お知らせください。すぐ直します。


さて、最後に今までの分析と解説を踏まえて、これからの入試社会に対抗するために必要だと思うものを挙げていきましょう。厳選して4つに絞りました。4つって絞ってないじゃんなんて言わないで。


  1. 読むことに慣れること
  2. 割合の計算はできるようにしておくこと
  3. 世界に目を向けて!
  4. なぜを意識して学ぼう


一つずつ説明して終わりにします。


1 読むことに慣れること


まずは、文字数の暴力に対抗する力を持つこと。読書推奨です。ちゃんと読むだけで点数になる問題もいっぱいありましたよね。読む力をきちんとつけていきましょう。活字に慣れていきましょう。


また、余談ですが、僕はよく国語力を「相手の求めるものを返す力」と定義して伝えています。その力を鍛えるために、こういう頭の体操的なクイズを親子でやってみるのもいいですよね。



2 割合の考え方はちゃんと把握しとけ


もうそのまんまです。文言ちょっと強めに変わってますが、しっかり理解しておきましょう。



3 世界に目を向けて!


今回、問題を見てきて、国際色の豊かさを感じませんでしたか?オリンピックイヤーなのはもちろんですが、今どんどん人口が減少している日本では、これから外国の人たちとのつながりをもっと強化していかねばならない時代がやってきます。やってきますというか、もう既に来ています。


また、問7では地理歴史公民ごちゃ混ぜのボーダーフリーな問題が出題されました。これは、新しい時代の幕開けということです。


まずは世界のことをよく知り、世界中の人たちと共に手をとって、輝かしい未来を作っていきましょう。そこに壁はない。そこに国境はない。僕らは地球という名のワンチーム !どうでしょう、この問題たちには、そんなメッセージが込められていませんかね。いませんか。



4 なぜを意識して学ぼう


昨年も言いました。


「神奈川県の問題は、もうただの暗記じゃ太刀打ちできないレベルまで来ているよ」


今年は少し難易度が優しくなった印象ですが、その傾向は変わっていないように感じます。


知識を得ながら、その理由や背景にまで思いを馳せること。そのためには勉強の体力やそれ相応の思考力が必要です。焦らずじっくり、日々の勉強を通して磨いていきましょう。それは受験だけでなく、その先の道でも大いに役立つはずです。


こんな本もおすすめです。


本日もHOMEにお越しいただき誠にありがとうございます。

やりきりました。


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勉強犬

「第二の家」学習アドバイザー。
世界中に「第二の家」=「子どもたちの居場所であり未来を生きる力を育てる場所」を作ろうと画策中。元広告営業犬。学生時代は個別指導塾の講師。大手個別指導塾の教室長(神奈川No,1の教室に!)・エリアマネージャーを経て、2015年ネット上で「第二の家」HOME個別指導塾を開設。2019年藤沢にHOME個別指導塾リアル教室を開校。